進化続く安全運転機能 「サポカー」の装備を知ろう
特集 クルマの安全システム最前線(1)
運転ミスによる痛ましい事故が毎日のようにニュースで報じられている。こういった事故を防ぐために、新型車にはさまざまな安全システムが導入されているが、具体的にどんな機能なのかをよく分かっていないという人も多いのではないか。最新の安全システムについて知っておきたい情報を、自動車ライターの大音安弘氏が解説する。
◇ ◇ ◇
「サポカー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「聞いたことがある」「カタログで見た覚えがある」という人でも、その具体的な定義は知らない、という人が多いのではないか。
サポカーの正式名称は「安全運転サポート車」。高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、政府が安全運転支援機能を搭載した車の普及啓発のために名付けた愛称だ。コンセプトがまとめられたのは2017年3月。ここで具体的な装備内容も定められた。
ここでいう安全運転支援機能とは、テレビCMなどで自動車メーカーがアピールしている「衝突被害軽減ブレーキ」や「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」などのことだ。特別な機能に思えるかもしれないが、現在の新型車の多くは、なんらかの安全運転支援機能を搭載している。たとえば衝突被害軽減ブレーキの新車装着率は、2017年の時点で77.8%にものぼる。
こういった機能に対する認知度も高まっている。自動車公正取引協議会が2018年実施した「運転支援機能に関する消費者・ディーラー向けアンケート」によると、「自動ブレーキ」という用語の認知度は、消費者の9割を超えている。
その一方で、「どのような状況で作動する機能か」については約5割の消費者が「機能を過信している」という結果になったという。具体的な機能はわかっていない人も多いのだ。
そこで自動車の安全運転機能を知る第一歩として、サポカーの定義から、それぞれの機能を解説していこう。
サポカーは大きく2つに分けられる
まず知っておきたいのは、サポカーは1種類ではないことだ。
サポカーは「セーフティ・サポートカー(サポカー)」と「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の大きく2つに分けられる。
サポカーは衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる「自動ブレーキ」)の搭載車全てが該当する。一方で、サポカーSは衝突被害軽減ブレーキに加えて、ペダル踏み間違い時加速抑制装置など複数の機能を搭載する車両を示す。
両者の違いは、それぞれが推奨する対象ドライバーを見るとわかりやすい。サポカーの対象となるのは、自動車を運転するすべてのドライバー。それに対してサポカーSは特に高齢ドライバーの使用が推奨されている。高齢の親に安全機能がついたクルマを薦めたい場合は、サポカーSの対象になっているかどうかが目安になるというわけだ。
サポカーSにも3種類
さらにサポカーSは、搭載される安全運転機能によって、「ベーシック」「ベーシック+」「ワイド」という3つに分けられる。
「サポカーSベーシック」は「低速衝突被害軽減ブレーキ(対車両)」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の2つを備えた車が対象となる。
一方、「サポカーS ベーシック+」の条件は「衝突被害軽減ブレーキ(対車両)」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の2つ。サポカーSベーシックとは衝突被害軽減ブレーキの性能が異なるわけだ。
そして「サポカーS ワイド」は「衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」「車線逸脱警報」「先進ライト」の4つを備えた車が対象となる。
こうしてみると、サポカーの定義に出てくる安全運転支援機能は「衝突被害軽減ブレーキ」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」「車線逸脱警報」「先進ライト」の4つだということがわかる。
「衝突被害軽減ブレーキ」は前にも書いたように以前は自動ブレーキと呼ばれていたものだ(最近はこの名称はあまり使われない。その事情は後編で説明する)。「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」はアクセルとブレーキの踏み間違いによる急加速などを防ぐ機能。「車線逸脱警報」は気付かないうちに走行車線からはみ出す事態を防ぐ機能で、「先進ライト」は前方の状態をしっかり把握できるための機能を持つヘッドライトのことだ。
●ペダル踏み間違い時加速抑制装置
●車線逸脱警報
●先進ライト
この4つが、代表的な安全運転支援機能だと考えていいだろう。
ただ、それぞれの機能の中にもバリエーションがある。後編「あなたに必要な自動ブレーキは? 車の安全機能を確認」では、この4つの機能について詳しく見ていこう。
進化続く安全運転機能 「サポカー」の装備を知ろう
あなたに必要な自動ブレーキは? 車の安全機能を確認
大音安弘
1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。