加藤和樹、ミュージカルで怪物役 魂を削られる思い

日経エンタテインメント!

加藤和樹が2020年1月から東京・日生劇場で上演されるミュージカル『フランケンシュタイン』の再演に出演する。メインキャスト全員が一人二役を演じる本作で加藤は、初演に続いて科学者フランケンシュタインの友人であるアンリと怪物の2役を演じる。再演にかける意気込みや、マルチに活躍する最近の活動について語ってくれた。

ミュージカル『フランケンシュタイン』は2020年1月8日~30日、東京・日生劇場にて上演(撮影:松川忍)

加藤は、歌手・声優・舞台と、多彩に活躍するアーティストだ。05年、ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、翌年、CDデビューして以来、テレビドラマ・映画の『仮面ライダー』などの映像作品、さらに、芝居・ミュージカルに出演。アニメの主題歌も歌ったりと、マルチな才能を発揮している。日本武道館や日比谷野外音楽堂などで毎年単独ライブを開催するなど音楽活動にも精力的だ。最近では女性誌で料理に関する連載を持ったり、化粧品のプロデュースも。まずは、加藤に経歴を振り返ってもらった。

デビューのきっかけは、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストだった。「デビューして、2時間ドラマなどにちょこちょこ出たりしていたのですが、当時は具体的な目標がなかったんです。やりたいことがわからず、半年くらいで芸能界を離れ、1年半ほど、バイトをしながら生活していました。そんなとき、音楽に出合い、歌を歌いたいという目標ができたんです。ちょうどその頃、今のマネジャーに出会い、ミュージカル『テニスの王子様』のオーディションを受けました。音楽がやりたくて、まずは人前で歌う経験をしようという気持ちでした。出演させていただき、人の前で歌うことの楽しさ……までは当時はわかりませんでしたが、心地よさは体感し、歌をやっていきたいという思いを強くしました。同時に、役を背負わずに歌ったらどんな気持ちになるんだろうなという興味も覚えました」

翌年にはCDデビューを飾る。以来、さまざまなフィールドで活躍しているのは前述のとおりで、ここ4、5年はミュージカル俳優としても注目を集めている。「ライブで歌うのと、ミュージカルで歌うのとでは、歌への向き合い方はまったく異なります。でもどちらも僕にとってなくてはならないものです。舞台で自分以外の人生を生きることで体験した感情が、歌詞を書くときに生きてくるんです。もちろん、自分をさらけ出してお客様とともに空間を作り上げていくライブも大好きです」

『フランケンシュタイン』初演の舞台(写真提供/東宝演劇部)

この秋から20年初めにかけては舞台の仕事が続く。10月上旬までは、森雪之丞が作・作詞・楽曲プロデュースを手がけたミュージカル『怪人と探偵』に出演。11、12月に東京と大阪で上演されるミュージカル『ファントム』では、城田優とダブルキャストでファントム役を務める。そして、20年1、2月には韓国発のミュージカル『フランケンシュタイン』に出演する。

『フランケンシュタイン』を生み出した韓国のクリエーターは、「韓国発のミュージカルを世界に」の合言葉のもと、“生命創造”への飽くなき探求と愛と友情をテーマに、ドラマチックで流麗な楽曲、大胆な演出を組み合わせ、フランケンシュタイン博士と怪物の物語に新たな命を与えた。

日本では17年に初演され、今回が3年ぶりの再演となる。加藤の言葉を借りれば、「愛、憎しみなど人の持つ、さまざまな感情が混ざり合った、もうひとつのフランケンシュタイン」だ。加藤は、「作品は重いし、複雑ですが、世界観はとてもわかりやすいんです。楽曲が作品の色を表していて、心に届きやすいし、説得力もあります。でもだからこそ、歌い手としては音楽に言葉が負けてしまう怖さもあるんです」と、演じ、歌う立場からの同作の魅力を語る。

初演時の印象をたずねると、「いやあ本当に疲れました!」と端正な顔をゆがませた。「ほかの作品でそんなことはないのですが、この作品に関しては公演後、シャワーを浴びても現実の世界に戻ってこられなかったんですよ。魂を削られる思いでした。通常、ダブルキャストだと、マチネ(昼公演)のあとにほかの仕事を入れることもできるのですが、この作品の公演中は無理でした(笑)。肉体的にではなく、精神的にきついんです」。なぜそれほど消耗するのかは、ネタバレになるので子細な説明は割愛するが、作品を見ればその理由がわかるはずだ。

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