使ってみて分かった iPhone 11「好調」のワケ
大河原克行のデータで見るファクト
iPhone 11シリーズが、2019年9月20日に発売されて以降、順調な滑り出しをみせている。BCNの調べによると、2017年9月に発表されたiPhone 8、iPhone 8 Plus、iPhone X(以下、iPhone Xシリーズ)の初日の販売台数を100としたとき、iPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Max(以下、iPhone 11シリーズ)の販売開始から20日間の売れ行きは462となった。iPhone Xシリーズの20日間の販売指数572を下回るものの、2018年9月に発表されたiPhone XR、iPhone XS、iPhone XS Max(以下、iPhone XRシリーズ)の20日間の販売実績の407を上回る結果となった。
前年のiPhone XRシリーズの販売実績を上回る出足をみせた背景には、2019年10月1日からの消費増税と端末/通話料金の分割プランの義務化により、消費増税前の駆け込み需要や、プラン見直しによる買い得感を背景にした需要増なども追い風となっているようだ。
なお、iPhone XシリーズおよびiPhone XRシリーズは、一部機種の発売時期がずれていたため、全機種とも発売日から20日間の販売台数を合算して指数を算出している。
iPhone 11シリーズの機種別の集計をみると、iPhone 11の構成比が51.5%と約半分を占めている。iPhone XRと比べても価格を引き下げたことがプラスに影響しているといえそうだ。iPhone 11は、全世界規模で見ても好調な売れ行きをみせているようだ。
これに対して、iPhone 11 Proの構成比は36.4%と3分の1以上を占め、iPhone 11 Pro Maxは12.1%と1割強を占めた。この2機種をあわせた上位モデルの構成比は48.5%となっている。
上位モデルの構成比という点で比較すると、2018年のiPhone XSおよびiPhone XS Maxが70.4%であったことに比べると構成比は大きく下回っているが、2017年のiPhone Xの42.2%を上回る結果になっている。
一方で、6.5型のディスプレーを搭載したiPhone 11 Pro Maxの構成比は、2018年発売のiPhone XS Maxの23.0%から減少。大画面需要が減速していることが示された格好だ。
予想以上に役に立つ超広角カメラ
今回のiPhone 11シリーズでは、カメラ機能がクローズアップされている。
とくに、iPhone 11 ProおよびiPhone 11 Pro Maxで採用された新開発のトリプルカメラシステムは、超広角、広角、望遠の3つのカメラにより、撮影を楽しむことができるのが特徴だ。
実際、iPhone 11 Pro Maxを1カ月ほど使って、カメラ機能を試してみた。やはり直感的にわかるのは、超広角のメリットだ。これまでのスマホのカメラにはない写真を撮ることができる。
様々なシーンを撮影してみたが、東京ドームのように広さを表現したい場合に、超広角のメリットを感じやすい。
実は、サンフランシスコの有名なレストランで食事をしたときのことだったが、そのときの写真を店員に撮影したもらったところ、その店員が「なんだこのスマホは!」と驚いていたのが印象深い。iPhone 11 Pro Maxを使用したのは初めてだったようだ。
有名レストランだけに、店員は撮影を頼まれることが多い。当日もあちこちで店員は撮影役をしていた。筆者たちは、丸く囲むような座席で6人が座って撮影を依頼したが、超広角に設定して渡したところ、いつもより1.5歩ほど前に来て撮影したという。ただ、超広角で撮影すると両端の人の顔が広がってしまうので記念撮影の際には注意が必要だ。
また、3つのカメラを組み合わせて、様々なサイズの写真を撮影できる点も撮影の幅を広げてくれる。それは、縦方向の撮影でも、横方向の撮影でも感じることができる。
iPhone 11 Pro Maxを縦に持ち、サンフランシスコのケーブルカーを、同じ位置から3つのカメラを使って撮影してみたがまったく異なる写真が撮れる。
また、東京モーターショーの会場となった東京ビッグサイトを、iPhone 11 Pro Maxを横に持って撮影したみたが、同じ場所からでも驚くほど異なる構図の写真が撮影できた。
もうひとつ、今回追加された機能が、「ナイトモード」である。
屋内外の明るさが足りない場所で撮影した場合でも、自然な色と低ノイズのより明るい写真に仕上げることができる。
今回撮影してみた東京ドーム横の小石川後楽園は、東京公園協会が運営しており、午後5時には閉門する。基本的には公園内に照明設備が少なく、閉園している夜間は真っ暗になる。撮影した写真は、目視では真っ暗で木の様子はわからないが、これをiPhone 11 Pro Maxのナイトモードで撮影したところ、木の様子がくっきりと映し出された。目視では見えないものまで写し出してしまう実力には驚いた。
また、トリプルカメラシステムとオールスクリーンのディスプレーの組み合わせで、構図の外側の部分を表示して、その領域まで保存してくれる機能もこれまでにない使い方ができる。あとから構図から切れていた細かい部分を考慮した編集ができる。
そして、ビデオ機能も進化している。拡張ダイナミックレンジと、映画レベルの手ぶれ補正によって撮影できる4Kビデオは、ビデオ撮影をより身近で、楽しいものにしており、SNSへの投稿でも効果を発揮しそうだ。
電車のなかでビデオ撮影をし、ループ再生をしてみたところ、車窓が動き、ずっと走り続けているような映像が撮影できた。そんなユニークな映像も高画質で撮影できる。
ちなみに、シャッターボタンを長押しすると録画が始まるQuickTake機能によって、写真モードから切り替えることなく簡単にビデオ撮影ができる点は使い勝手を高めており、うれしい機能のひとつだ。
そのほかにも、iPhone 11 Pro Maxでは、「スマートフォン史上最速のチップ」と位置づけるA13 Bionicによる高いパフォーマンスや、バッテリー駆動時間の長時間化、臨場感のあるサラウンドサウンド体験、有機ELのオールスクリーン表示を実現したSuper Retina XDRディスプレーの搭載など、新たな機能が目白押しだ。
実際に使ってみると、想像以上に楽しさを感じられるスマホであることがわかる。使う人が増加し、そのメリットや楽しさが浸透すれば、販売に、もう一段弾みがつくかもしれない。
(ライター 大河原克行)
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