恐れのない職場がトヨタの強み ハーバードが見る組織ハーバードビジネススクール教授 エイミー・エドモンドソン氏(上)

イノベーション部門においては、さらに重要です。この部門のリーダーにとって大切なのは、チームメンバーが、クレイジーなアイデアや非常識なアイデアを提案しても、それを歓迎するような雰囲気をつくること。「このチームでは、リスクをとって挑戦してもいいし、失敗してもいい」と信じられるような文化がなくては、イノベーションは生まれません。

佐藤 著書では、組織のリーダーが心理的安全性を創出するには、「謙虚さ」と「好奇心」を持つことが必要だと書いています。

エドモンドソン リーダーは「謙虚さ」と「好奇心」の両方をあわせ持つことが大切だと思います。

リーダーが「謙虚さ」をもつことは意外に難しいことです。「謙虚に振るまえば、自信がないリーダーに見えないだろうか」と心配するのも無理のないことです。私は何も「謙虚なふりをしなさい」とか、「リーダーとしての強さを見せるのは少し控えめにしておきなさい」などと言っているわけではありません。

どんな状況にも謙虚に向き合え

私が提言しているのは、「どんな状況にも謙虚に向き合いなさい」ということです。私たちの生きる現代社会は複雑で、不確実で、予測もできません。新製品を市場に出すときでも、サプライチェーンを管理するときでも、リーダーは「自分の周りの状況はすべて理解できないものだ」という前提で、柔軟に対応しなくてはならないのです。そうでなければ、想定外のことが起こるたびに動揺してしまい、チーム全体がリスクにさらされてしまうでしょう。つまり、「不確実性に対して謙虚に向き合う」ということは、「どんな状況にも賢く対応する」ということなのです。

リーダーが「好奇心」を持ち続けることもとても重要です。人間は「私は現実を正しくとらえている」と過剰な自信を持ってしまうものです。特に大人になればその傾向が強まります。「私の見方こそ正しい」と無意識のうちに思い込み、あえて他の視点から学ぼうとしないのです。会社の経営者や管理職は「リーダーたるもの、確固たる答えを部下に示さねば」と考えがちですが、むしろリーダーの役割は好奇心を持って部下や周りの人に質問することなのです。

リーダーがどんな状況にも謙虚に、好奇心を持って向き合えば、メンバーは自然と心理的安全性を感じることができます。

佐藤 それはまさに禅の教えに通じるところがありますね。スティーブ・ジョブズにも影響を与えた禅師、鈴木俊隆は「初心者の心には多くの可能性があります。しかし専門家といわれる人の心にはそれはほとんどありません」と言い、初心を持ち続けることの大切さを唱えました。

エドモンドソン それはまさに私が伝えたかったことと同じです。「どんな状況に対しても謙虚さと好奇心を持って向き合う」とは、すなわち初心を持ち続けることです。

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エイミー・エドモンドソン Amy Edmondson
ハーバードビジネススクール教授。専門はリーダーシップと経営管理。同校および世界各国にて、リーダーシップ、チームワーク、イノベーションなどを教えている。Thinkers50が選出する「世界で最も影響力のあるビジネス思想家50人」の一人。多数の受賞歴があり、2006年にはカミングス賞(米国経営学会)、04年にはアクセンチュア賞を受賞。著書に『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)、「The Fearless Organization : Creating Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation, and Growth」(Wiley, 2019、2020年日本語版刊行予定)

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