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アジアで大人気 ライブストリーマー、その熱狂と孤独

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ナショナルジオグラフィック日本版

「ライバー」(正式にはライブストリーマー)という言葉をご存じだろうか。ライバーとは、自分自身を撮影した動画をライブ配信する人々のこと。人気のライバーは有名人で、彼らを追いかけるファンも中韓台に多数いる。アジアのネット界で活動する彼らとファンを写真家らが追った。

◇  ◇  ◇

日が沈むと、台北の夜空を「ララ」という女性の写真が照らし出す。高さ約30メートルの屋外広告に載ったララの顔が台北の街を見下ろしているのだ。ララは台湾で一二を争う有名なライブストリーマーだ。

アジアには多くのライバーがいて、彼らがジョークを言う姿、食べる姿、眠る姿を、スマートフォンやコンピューターを通じて見る。人気が出れば報酬も青天井だ。中には、島を購入できるほどの富を築いたライバーもいる。ただ、私生活をさらけ出すこの仕事は、スターとなったライバーだけでなく、彼らのファンの双方の孤独を浮き上がらせる。

台北の織物工場で働くジュンジ・チェンさん(42歳)は、工場での長い一日を終えた後、お気に入りのライバー、ユートンを画面越しに見る時間を楽しみにしている。台北で働くため、故郷の村を離れたチェンさんに、社会生活はほとんど存在しない。人間関係の相手といえば、直接会ったことのないフェイスブックの友人かライバーなのだ。

ライバーのユートンからはチェンさんを見ることも、声を聞くこともできない。それでも、チェンさんにとっては本物の純粋なつながりであり、互いにやり取りしているとすら感じているようだ。人さし指で画面をタップしたり、スワイプしたりするだけで、チェンさんはこの感覚を長引かせることができる。コメント欄にライバーへの賛辞を書き込んだり、「バーチャルステッカー」を購入することでライバーに「投げ銭」して応援できたりする。

ステッカーは1枚数千ドルすることもある。最低賃金が1時間5ドルに満たない国の工場労働者にとっては法外な高値だが、チェンさんは収入の3分の1をステッカーにつぎ込む。チェンさんのような孤独な視聴者にとっては、ステッカーを購入してでも、ライバーとの交流はそれだけの価値があるからだ。

ライブストリーミングアプリは、2006年、インターネットセレブリティーがカメラの前で話したり、食べたり、踊ったり、眠ったりするためのプラットフォームとして韓国で誕生した。現在、韓国、日本、中国、台湾で特に人気だ。2015年に台湾で生まれた「17 Live(イチナナライブ)」をはじめ、たくさんのプラットフォームが存在する。全世界で合わせて3000万人以上のユーザーを獲得し、毎日1万時間分のコンテンツが作られているという。17 Liveは250日足らずで1000万ダウンロードに到達。立ち上げ当初、インスタグラムやフェイスブックをしのぐ成長率を記録した。

年中無休のエンターテインメント

台湾育ちのチーフイ・リン氏はライブストリーミングの台頭をじかに見てきた。大都市に広告が現れ、プラットフォームの名前は日常会話の一部になった。

ライブストリーミングの世界は主に、女性のライバーが男性のファンに見られることで成立している。リン氏は好奇心をかき立てられた。

リン氏の旅仲間である写真家のジェローム・ジェンス氏も興味をそそられた。リン氏とジェローム氏はアジアを回り、ライバーとそのファンを撮影することにした。

2人は7カ月をかけて、ライブストリーミング界のスターたちと会った。大食漢のずんぐりした男性、アプリのフィルターで顔を変幻自在に変える若い女性、小さな車に乗る犬などなど。2人は同時に、ライバーたちの背景にあるフワフワの椅子や色鮮やかな壁紙が現実を映し出していないことに気付く。「背景は豪華でカラフルですが、目の前には窓すらないのです」とジェンス氏は語る。

ライバーの舞台裏

ライブストリーミング界のルールは国によって異なる。

ジェンス氏とリン氏が最初に立ち寄ったのは、中国の西安と北京にオフィスを持つライブストリーミングエージェンシー「レードゥー・メディア」だ。中国では、すべてのライバーが監視下に置かれ、政治の話題を配信することは禁止されている。2人が会ったライバーたちも例外ではなく、厳格な規則を課され狭い空間に暮らしていた。対照的に、台湾で出会ったライバーたちは自宅でライブストリーミングを行っていた。最後に2人は、韓国最大のライブストリーミング企業「アフリカTV」のライバーたちを訪ねた。中国とは違って、台湾、日本、韓国のライバーは政治的な議論も許されており、エージェンシーに所属する必要はない。

ライバーの仕事は心身に害を及ぼすことがある。まず、深夜がピーク時間にあたるため、睡眠は不規則で、疲れもたまる。韓国には、カメラの前で大量の食べ物を食べる「モクバン」と呼ばれるジャンルがある。このジャンルで活躍するライバーは肥満になりやすい。一部のライバーは食べた後に下剤を飲むなどしており、健康への影響もある。実際、心不全になったライバーもいる。

台湾の有名ライバー、ララは仕事に出掛けるとき、5歳の娘モンモンちゃんをアパートに置いていく。ララの母親はジェンス氏とリン氏に、娘には「本物の人間関係がないのではないか」と話していた。17メディアのアプリ「ライブAF」で、ララが7万5000人ものフォロワーを獲得しているにもかかわらずだ。

ライバーの成功はデジタル世界での人気とイコールだ。ファンを喜ばせたい一心で、不健全な行動を続けるライバーもいる。視聴者が離れることは、ライバーにとっては収入源が失われることを意味する。

「ライバーたちは常に不安を感じています。ファンたちがいつまで好きでいてくれるかわからないためです」とリン氏は語る。「ファンたちは指をスワイプするだけで、次のライバーのセッションに、簡単に切り替えることができますからね」

ライバーの仕事だけで生計を立てている人はほとんどいない。中国のソーシャルメディアアプリ「ウィーチャット」が2016年に公表したデータによれば、90%以上のライバーが仕事を持ち、2年以上活躍し続けるライバーはわずか17%だ。

もちろん、17メディアのような企業は利益を得ている。「最終的な勝者はプラットフォームですよ」とリン氏は言う。

彼女は私を愛していない

ライブストリーミングのファンは「パラソーシャルな関係」の表れと言うことができる。お気に入りのライバーと一方的な友情を育み、報われているように感じているためだ。ソーシャルスキルがなく、現実世界では、他者からほとんどあるいはまったく見返りを得られない人にとって、パラソーシャルな関係はあたかも交友しているような錯覚を生み出してくれる。

米ジョージタウン大学で心理学の助教授を務めるコスタディン・クシュレフ氏は、画面を見る時間と幸福感について研究している。研究の結果、携帯電話などのハイテク機器で交流をいくらしたところで、現実世界の人間関係と同等の恩恵を得られないことがわかった、という。

「理論的には、これらの機器は私たちをつなぐことができます」とクシュレフ氏は前置きし、「でも、直接的な交流をデジタル世界での交流に置き換えるうちに、つながりたくてもつながることができないという悪循環に陥ってしまうのです」と説明した。

ジェンス氏によれば、ファンたちは大切にされていると信じているが、「結局、(ライバーは)お金を稼いでいるだけで、ファンは以前よりさらに大きな孤独を感じることになります」。それでも、動画が友情、さらには愛情を育む助けになっていると考えるファンも多い。「一部のファンは言います。『ライバーを追いかけるのは、自分の名前を知っている唯一の人だからだ』」

ジェンス氏とリン氏はプロジェクト終了後、取材した台湾のチェンさんが、彼の最愛のライバーのユートンを見ることをやめたと知った。彼はリン氏に、「ライバーへの愛が報われることは決してないと気付いたため、これからは自分を大切にしたい」と語ったという。

次ページでも、写真家がとらえた、アジアのライバーたちと、彼らを追いかけるファンたちの姿を紹介しよう。

(文 CLAIRE WOLTERS、写真 JEROME GENCE、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年10月14日付記事を再構成]

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