銀行の持ち株規制緩和、もろ刃の剣(安東泰志)ニューホライズンキャピタル取締役会長

金融機関の経営環境は厳しさを増している(写真はイメージ)
金融機関の経営環境は厳しさを増している(写真はイメージ)

金融庁は2019年8月、銀行の業務範囲を緩和する銀行法施行規則などの改正案を公表した。この案には事業再生中の中小企業への出資について銀行の議決権保有制限(いわゆる5%ルール)を見直すという項目が含まれている。日本ではこれまで銀行法と独占禁止法によって、銀行は原則として一般事業会社の5%を超える議決権を保有することを禁止されてきた。戦後に財閥解体の必要性があったためだけでなく、その後も日本経済は間接金融が主体だったこともあって銀行は企業に対して支配的な地位を持っていた。銀行が企業の経営権を握ることによる優越的地位の乱用を防止する必要がある一方で、銀行の経営上も預金者保護の観点から銀行が金融業以外の事業リスクを取ることは不適切と考えられてきたためだ。

しかしバブル経済の崩壊を経て不良債権の増大に見舞われた1990年代後半から2000年代にかけ、銀行の株式保有制限は一部緩和された。背景としては経営不振企業の事業再生の局面で担保権の実行や貸付債権の株式化などによって銀行がやむを得ず5%超の議決権を保有することまで否定されるのは不合理だったという事情がある。ただし現行法では銀行が5%超の議決権を保持できるのは原則3年、中小企業については5年とされている。

地域活性へ大幅な規制緩和

これに対し改正案では広範な規制緩和が提言されている。まず経営不振企業の事業再生について5%超の議決権保有が認められるのは、これまでは裁判所などが関与する事業再生に限定されていたが、今後は会計士や弁護士など銀行以外の第三者が関与した場合に広く認めることになっている。中小企業の株式を保持できる期間も現行の5年から10年に延長される。

次に、銀行が設立する投資専門子会社を通して5%超の議決権を取得できる企業の範囲も拡大される。まず事業承継への支援が必要な会社には5年間、100%出資が認められる。さらに「地域の活性化に資すると認められる事業を行う会社」(地域活性化事業会社)に対しても5%超の議決権を保有できるが、その認定基準を大幅に緩和した。

加えて17年の銀行法改正で金融機関が5%超の議決権を保有できることになった「銀行業高度化等会社」の定義を見直し、中小・地域金融機関は「地域商社」を加えることになった。銀行業高度化等会社はもともと、フィンテックや電子商取引など金融に関係が深い分野について、他業種が決済など銀行業の範囲に進出してくる中、銀行にも業務分野を広げることを容認するという趣旨で定められた。しかし今回の改正案では地元産品のマーケティング、観光、街づくりなど地域の産業振興に取り組む会社を地域商社と定義している。こうした分野はフィンテックなどと比べて金融に関係が深いとは言いがたく、一般事業の色合いが濃い。その意味で、相当に思い切った緩和案だと筆者は考えている。

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