9.11描く海外ドラマ『倒壊する巨塔』 レンタル好調
2019年9月 海外ドラマ月間レンタルランキング
海外ドラマで近年、存在感を増しているジャンルが実録ドラマだ。TSUTAYA海外ドラマ月間レンタルランキング9月度では、『倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道』が6位に初登場した。2001年9月11日に起きた米同時テロ事件(9.11)を題材に、テロに至るまでの過程やFBIとCIAの間にある確執を描いた社会派サスペンスだ。
『倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道』は、07年のピュリツァー賞をはじめ数々の賞を受賞した、ローレンス・ライトのノンフィクション小説を初映像化した全10話のドラマシリーズ。実際のニュース映像などを交えながら、9.11が引き起こされるまでの過程をスリリングに描く。米国では18年2月にHuluで公開された。
ストーリーはこうだ。1998年、CIAは東欧でアルカイダの共同創設者アイマン・ザワヒリの側近であるアハマド・マブルクのアジトを襲撃し、ハードディスクドライブから工作員と50人以上の標的候補の名前を入手する。だが、CIAのマーティン・シュミットはFBIへの情報提供を拒否する。FBIで同じくアルカイダを追うジョン・オニールは、これに激怒し、ビンラディンを起訴するために独自ルートでの捜査を決意する。一方、マブルクがCIAによって拉致されたと知ったザワヒリは、部下たちに行動を開始するよう指示を出し、やがて東アフリカで事件が起こる……。
本作がこれまでの9.11を題材にした作品群と異なるのは、テロに至る過程をFBIとCIAの確執に重点を置いて描いている点だ。さらに、クリントン政権からブッシュ政権の間に実施された失策や、調査委員会で嘘をつく権力者にフォーカスするなど、米国側の暗部を掘り下げて真実に迫ろうとするアプローチが新しく、評価を高めている。
実在のFBI捜査官ジョン・オニールを演じるのは、米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞を『ニュースルーム』などで2度受賞した名優ジェフ・ダニエルズ。フランスの映画賞セザール賞で主演男優賞を受賞したフランス人俳優タハール・ラヒムら、賞レースの常連ともいえる演技派のキャストが脇を固め、リアリティーを生み出している。
チェルノブイリ原発事故の実録ドラマも
米国テレビ業界では近年、実際の事件を題材にした実録ドラマが存在感を増している。
代表的なシリーズが16年からFXで全米放送が始まった『アメリカン・クライム・ストーリー』だ。シーズン1では元フットボール選手で俳優のスター、O・J・シンプソンの殺人容疑事件、シーズン2では世界的デザイナー、ジャンニ・ヴェルサーチの暗殺事件を描き、それぞれエミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞している。日本でも今夏DVDがリリースされた。
それに続く大型実録ドラマのリリースとなった『倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道』は、新作でトップ10入りとランキングも好発進となった。世界的に広く知られた事件が題材であることに加え、TSUTAYAマーケティングカンパニー UX・MD部 映像レンタルの後藤信之氏によると、1巻目のレンタル無料キャンペーンも功を奏したという。「キャンペーン未実施の想定対比で200%の実績です。関心が大きなテーマだけに、1巻目を見て、そのまま続けて全シリーズを見られる方が多いですね。男女比は7対3。50~60代がメインで、30代よりも70代のほうが多いのが特徴。高い年齢層に支えられています」(後藤氏)
9月からは、86年に起こったチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故を描く『チェルノブイリ』の日本初放送がスターチャンネルで始まり、話題を呼んでいる。今後DVDがリリースされれば、こちらも注目を集めそうだ。
アメコミや犯罪ドラマが主流の海外ドラマ市場だが、大人のファンを引きつけて実録ドラマの人気もじわじわと広がっている。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
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