転職の理想的タイミング 5歳刻みの「常識」は本当?経営者JP社長 井上和幸

採用側が意外に重視する「年齢の節目」

この「年齢刻み問題」については、ここで話を終えてもよいのですが、しかし、採用する側も同じ人間というところに、この年齢刻み問題の妙があります。転職する側が40歳、45歳、50歳、55歳と、5刻みで節目を考えるように、採用する側の経営者や部門責任者、人事もまた同じように考えるわけです。

 繰り返しますが、5刻み自体には本質的意味はありません。しかし、採用する側の意識、イメージの「年齢節目」としては、「同じ職務レベルの方なら45歳を超えているよりも、手前のほうが良いなぁ」「うーん、50歳を超えていると、ちょっとねぇ。48歳くらいの人がいいですね」というような採用意向を、私たちも日々、クライアント企業から聞いています。選考に際しても面接結果のフィードバックコメントでよく登場します。

ミドルやシニア世代の採用時に、採用側の経営者や企業と我々エージェントがよく話をするのが、そのポジションで任に就いた際に、着任後どれくらいの期間でその人が全体を掌握して自らのテーマ設定、課題設定をし、次のステージの実行に移ってくれそうか、というようなことです。ラーニングに2~3年を要するケースは、より上位の職責になればなるほどありますので、「定年年齢マイナス現年齢」が何年あるのか。それもこの年齢刻みと相関することがあります。「このポジションなら最低10年はやってほしい」などの理由から、採用年齢を50歳未満にしたい、45歳前後のほうが望ましい、などとするわけです。

また、大手企業になりますと、多くが役職定年制を導入していますから、実際問題、55歳以上を新規で役職者に配置するわけにはいかないのです。プロパー社員を役職定年、早期退職勧奨などしているのに、いくら力がある人でも外部から同世代を採用するのははばかられるというような事情があるケースも少なくありません。

このように、実は採用する側の事情、そこから発生する心情によって「年齢刻み問題」は存在することを、ぜひ転職する側の読者の皆さんは心に留めて、応募先企業の情報や状況をしっかり確認しつつ応募や面接を進めてほしいと思います。

「意に沿わない異動があった」の妥当性

「長らく人事畑で仕事をしてきたのですが、半年前に営業部に異動になったんです。僕としては、人事マンとして今後もキャリアを積んでいきたいので転職を考えています」。意に沿わない異動があったという読者も少なくないかもしれませんね。

ミドルやシニア世代の皆さんにとっては、キャリアの専門性、連続性を確保しにいくことは悪くない筋です。日本もようやく従来の「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」を前提とするように変化してきたと、HR(ヒューマンリソース)関連のニュースや書籍でいわれるようになりました。

「メンバーシップ型」とは、特定の職種を前提としない総合職採用とその後のジョブローテーションをしていく、日本の典型的な雇用パターンだといわれてきました。対する「ジョブ型」とは、学卒時点から職種専門領域を特定し、採用時からどの職種で採用するのか、入社後キャリアパスを積むのか、ルートが決まっている雇用パターンで、欧米は以前からこのスタイルです。

私は個人的意見としては、若手から中堅~30すぎくらいまでは、よほど特定のハマりどころが自他共に見えている人以外は、いろいろな職務を経験してみたほうがよいと考えています。ただ、それ以降はおおむね「ジョブ型」に近く、その人の職務の本筋や当人にとってのライフワークテーマが定まっての配属・異動がされることが望ましいと思います。よって私は、この「自分の専門畑、本筋に戻したい」転職は全力で応援しますというスタンスです。

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