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ご近所や会社にうかがいます 楽しい落語会の作り方

立川談笑

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NIKKEI STYLE

落語はいまや手軽にいつでも楽しめる娯楽になりました。CDやDVD、テレビ、ラジオにインターネット。それでも、大勢が同じ場所に身を置いて体感する生の高座は格別です。寄席やホールの落語会に足を運ぶのはもちろん、落語家を招いて落語会を開催して楽しもうという積極的な人もいらっしゃいます。しかもこのところ増えているように感じています。今回は、そんな手作り落語会のひとつを例に、落語界の舞台裏を披露します。

先日は、大手の通販会社での落語会に出演してきました。お客様は、参加を希望する社員限定。つまり、一般には告知されない内輪向けの会です。

開演1時間前、私が到着したのは都内にある近代的なオフィスビルでした。高層階の一室に通されると、広い会議室の奥に大きな高座が目に入りました。この手の会でこれほどの高座は珍しい。3年前にこの会を始めて、徐々に質が向上していったんだそうです。うんうん、分かる分かる。手作り落語会の「あるあるネタ」です。座布団もしっかり落語対応のサイズでした。念のためにと我が家から抱えてきたマイ座布団に、出番はありません。別フロアからもかき集めたパイプ椅子がずらりと100席並んでいて、これはもう立派な落語会の会場です。

本来だとここから照明とマイクのチェックをするところですが、照明機材は特にないので通常の蛍光灯のまま。マイクとアンプもありましたが、この広さなら地声でいく方がよいでしょう。持参した出囃子(でばやし)のCDの音量と操作のタイミングを簡単に打ち合わせして、事前準備終了。すぐに私は楽屋(同じフロアの小さな会議室)に移動し、着替えを始めました。お、姿見の大きな鏡と、着替え用の敷物が用意してある。うれしいなあ。

出演料は業界の相場で

ここから一旦わきにそれて、手作り落語会を開催するためのもっと深い話をしてみます。

今回の主催者から出演依頼のメールをいただいたのは半年以上まえのこと。会の趣旨やこれまでの活動経緯などが熱心かつ丁寧に書かれていました。「ここまで続けて来た会の、節目としてぜひ」というのと、弟子がお世話になっていたりなどなど、事情がいくつかあり、特別にお引き受けすることにしました。

「特別に」と言うと、もったいつけて偉そうですね。それでも私の認識としては「一席あたり二ツ目5万円、真打ち10万円以上が業界の基準」なのです。「それ以下で仕事を受けると、落語家全体の相場がおかしくなるから」とは、弟子にも申し伝えているところです。が、もっと言うと、その金額自体も実際は流動的なのです。普段の都内での落語会でも、その額に満たない仕事は多々あるわけで……。

落語家側がディスカウントに応じる口実はいくつかあります。

・いつも自分や周囲の者がお世話になってるから。

・地域落語に尽力されている姿勢などをリスペクトして。

・目先の生活費がわずかでも欲しい。

ま、ま……、そこは交渉のしどころということになりますが、私としてはなるべく買いたたかないでいただきたいなあ、と思うところです。

ハードルが高そうに思われるのが、高座の作り方。意外なくらいに「高さ」が必要です。目安は「お客の目の高さと落語家の膝の高さが同じになる程度」。客席に勾配がない平らなところで、椅子席なら高さ120センチメートル。座布団に座って鑑賞する場合でも高さ80センチメートル以上は必要です。広さは、最低で座布団よりちょっと広いくらい。できればたたみ1畳。

最初に作るのが基礎。ダイニングテーブルか長テーブル(×2)を使うのが最も簡便ですが、強度に不安が残ります。簡易で丈夫なのは、ビールケースを使う方法です。多数を積み並べて、粘着テープで補強します。1ケースが横45センチメートル、奥行き35センチメートル、高さ30センチメートルとして必要な数を計算してみます。

客席が座布団席なら→広さ4ケース分×3段=12ケース

客席が椅子席なら→広さ4ケース分×4段=16ケース

と、こうなります。高座に上がるためのステップも忘れずに。これは目立たない場所に、ダイニングチェアや折り畳み椅子などを置けばOK。さらに、高座の見栄え。特別なルールはありません。あえて手を加えるなら、基礎部分を赤い布(紺でもいいのですが)で覆い隠すのが一般的です。「緋毛氈(ひもうせん)」だと大歓迎ですが高価です。安くあげるなら、寝具用のシーツだとか、ただの赤い布でも十分です。

ここまでが高座設営のお話。さらに高座の横に「メクリ」というものを置きます。落語家の名前が書いてあるあの大きい紙のことです。落語会らしさがあって、見栄えのするものです。落語家は、たいてい何枚か自分で持っています。

でも、そのメクリ台(メクリを掲示する道具)は、ほとんどの落語家は持ってないのです。私も持っていません。代用品として縦長のホワイトボードにカラフルな磁石で……ということもありますが、風情としては良くありませんなあ。メクリの「江戸文字」の風情と、その魅力を損なう「ホワイトボードなど」との兼ね合いですかね。しっかりしたものをレンタルすることもできますが、適当な代替品があれば活用したいところです。ただ実際のところ、メクリを使わないことの方が多いですね。

落語家が意気に感じる高座

さて、高層階での落語会に話を戻します。

いざ、開演。出囃子に乗って会場に入ると、ぎっちり満席でした。やや長めのマクラで客席を温めながら様子を探ります。「落語を聴く機会がない社員たちに、魅力を感じてもらいたい」との主催者の思いが分かりました。目の前のお客さんたちは、落語は初めてか、あるいは初めてではないけれど、さほど聴き込んでもいない感じ。この感触で落語家はネタ選びをするんです。

マクラと得意ネタ『金明竹』で大いに笑って、お中入り。

休憩時間に楽屋でひとり、何だかしみじみしてしまいました。会の運営から設営まで汗を流すスタッフの熱意と、前のめりに落語を聴こうとする社員の皆さん。それに、そもそもこの会はチャリティーで、今回の収益の一部は台風被害の方面に充てられるのだとか。人間味を感じるというか。人と人とが関わる姿は、まさに落語の世界じゃないか。

休憩が終わって、後半開始。高座に上がるなり客席に向かって「終了予定時間を15分くらいオーバーしていいですか?」と尋ねると、大きな拍手が返ってきました。この日の『芝浜』は、いい出来。いい夜になりました。

さあ、皆さんいかがですか。手作り落語会、ちょっとやれそうな気がしませんか。「ウチは地方なんだけど、どこかで落語会をやりたいなあ」とか、「我が社の社員たちに生の落語を見せたいのだが」なんてお考えの方に、最後にひとつだけ。

落語を聴くお客様を集める時は必ず「希望者」だけにしてください。強制や半強制的に集められた客席ほど落語がウケない場所はありませんのでね。いや、ホントに。

立川談笑
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。

これまでの記事は、立川談笑、らくご「虎の穴」からご覧ください。

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