「変えようよ」 マンデラ氏に学んだ多様性のつくり方京都精華大学 学長 ウスビ・サコ氏(下)

「留学生の比率は急上昇して、18年度は12%でしたが、現在は30%ほどになっています。こうした制度変更も、私が率先して『変えてみようよ』と素早く動けるようにしてきました」

真の多様性はマジョリティーの意識改革から始まる

――大学で多様性が必要なのはなぜですか。

「これからは、結局どこに就職しても、嫌でも異なる文化や宗教のバックグラウンドを持つ人と一緒に働かなくてはならない時代です。その多様性、グローバルな世界を大学時代に大学の中で経験しているか否かは、社会に出た後で大きな違いになってくると思うのです。マジョリティーである日本人の学生にこそ、そういった社会的経験をしておいてほしい。真の多様性はマジョリティーの意識改革から始まるというのが私の持論なのです」

――マジョリティーの意識改革はなぜ必要なのでしょうか。

「差別や格差がある社会で、なんとか差別を無くそうとするとき、まずはマイノリティーをなんらかの形で優遇する施策を考えることが多いんです。例えば、米国の大学で黒人の学生比率を何%にする、といったやり方がそれです。留学生向けの入試を別枠で設けるのも同じ発想です。でも、マイノリティーを優遇すると結局その人たちを孤立させるのです。優遇しながら同時に『あの人たちは違う人たちだ』と強調してしまう」

サコ氏の専門は空間人類学。「マリのコミュニティーの中庭や日本の昔ながらの家屋は空間の用途があいまいで、建築学上あり得ないほど狭い空間に大人数が快適に暮らしている。そこに空間の使い方のヒントがある」(中国での大学生時代)

「本当に多様性のある社会にするなら、お互いの違うところを認め合ったうえで混ざり合うことが重要ですよね。そのためには、マジョリティーの人たちの意識を変える必要がある。そうしないと、いつまでたっても溝は埋まらないのです。だから最近では米国でも、収入が違う層の人たちがあえて同じコミュニティーに住むといった取り組みが注目されています」

「学内でも留学生をお客様扱いせず日本人学生と対等にさせたところ、自然と協働し始めました。こういう体験をして社会に出た日本人学生は、社会に出てもマジョリティーの意識を変える人材になってくれるのではないかと思うのです」

自分を「お客様」とは思っていない

――自身も混ざることを意識してきましたか。

「私自身は日本に来て20年たちますが、どこにいても自分のことを『お客様』だとは思っていません。私もこの大学の一員だと思っています。この大学が発展するかどうか、自分にも責任があり、同時にそれを楽しまなければとも思っています」

――学部長から学長へと順調な歩みに見受けられますが。

「いや、すべてが順当にきたわけじゃないんですよ。でも失敗をどうポジティブに捉えるかが大事だと思っています。そのために、手痛い失敗があっても、『自分の限界はここじゃない』と自分に言い聞かせてきました」

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「留学生だから」という甘えや弱みは絶対に見せない
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