定年夫が家でゴロゴロ それでも妻に嫌われない理由経済コラムニスト 大江英樹

写真はイメージ=123RF
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「主人在宅ストレス症候群」という言葉があります。夫が定年になって、一日中家に居るようになると妻のメンタルヘルスや体調が悪化するという現象です。これを名付けたのは医師の黒川順夫氏で、1991年1月に日本心身医学会近畿地方会で発表したといいますからずいぶん前からこのネーミングはあったようです。

別の呼び方で「夫源病」というのもあり、言葉は違っても同じように夫の言動から妻にストレスがたまって体調が悪くなるという状態を指します。程度の軽いものであれば笑い話で済ませられるかもしれませんが、中には熟年離婚に至るケースもあるようですから、決して軽く考えないほうがいいかもしれません。

世の中の定年対策本にもこの手の話はよく出てきます。多くの場合、結論は「家にゴロゴロしていると奥さんに嫌われるし、奥さんもストレスがたまるのだから、外に出て行きなさい」とか「会社を引退したのだから外に自分の居場所をつくりなさい」ということが書かれ、家に居るのはまるで悪いことであるかのように取り上げられることが多いようです。私も最初はそう思っていたのですが、定年退職した人に取材をしたり話をしたりしているうちに少し考えが変わってきました。今では家でゴロゴロしていることは必ずしも悪くないのではないかと思っています。

「僕のご飯は?」が妻のストレスに

問題なのは家でゴロゴロしていることではなく、「夫が自立していないこと」なのです。妻にしてみれば、今までなら昼間は会社に行って家に居なかった夫が毎日居るようになり、「昼飯はまだか」と催促する。出かけるとなると「どこへ行くの」「いつ頃帰ってくるの」、そして「僕のご飯はどうなるの」と聞いてくる。これでは妻も正直言ってうっとうしい気持ちになるでしょう。子供ではないのですから「僕のご飯はどうなるの」などと聞かないでほしいと妻が言いたくなるのはよくわかります。

妻が居ないのであれば、自分で作れば良いし(今では電子レンジで簡単に調理できるものがたくさんあります)、面倒ならコンビニでも外食でもいくらでも手段はあります。何でもかんでも妻に頼りきりで自分は何もしない、ということがストレスを与える原因になっているのです。つまり家に居るのが悪いのではなく、何もしないで家に居るのが良くないのです。

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