渋野日向子や高梨沙羅… 飛躍支えるマネジメント事情
8月開催のAIG全英女子オープンゴルフに初出場し、日本勢では42年ぶり2人目のメジャー優勝という快挙を成し遂げた20歳の渋野日向子選手。笑顔を絶やさないプレースタイルでも大勢の人の心を虜にしたが、所属先が地元・岡山のテレビ局、RSK山陽放送というのも話題に。アスリートのマネジメント事情について注目が集まった。
同局のゴルフ番組に出演していた縁で所属契約し、スケジュール管理などを支援していたが、マネジメント業務については専門の事務所に移管することになったという。
エンタテインメント界では、マネジメントで関わるケースが急速に広がっている。IMGなどは老舗のスポーツ専門事務所だが、アミューズが2017年からスポーツビジネスに参入するなど、芸能事務所もこの分野に積極的だ。以前は野球やサッカーが中心だったが、モーグルやサーフィンなど五輪種目の選手との契約例も増えている。
博報堂DYスポーツマーケティングのように「マネジメント」と「所属」の両方に取り組む企業もある。イベントの運営など、スポーツに特化したビジネスを展開する同社は、07年からアスリートのマネジメントを手掛けてきた。現在、スキージャンプの高梨沙羅選手らとマネジメント契約をしている。マーケティング面でのサポートを中心に、一部スケジュール管理や、問い合わせの窓口となって取材対応するなど、競技を第一優先にできる支援をするのが主な業務だ。
近年は新たな試みも開始。レスリングの中村倫也選手と宮原優選手の2人を、17年に社員として採用したのだ。代表取締役社長の岩佐克俊氏はこう話す。「所属するだけでなく、雇用することで経済的な安心感ができ、競技に専念できるのではと考えました。試合の際の労務管理もします。博報堂DYグループ所属ということで、研修では同世代の社員と交流したり、大会にみんなで応援に行ったりと、グループに一体感が生まれて、双方にいい効果が出ていると感じています」
スポーツ界では、19年から21年を"ゴールデン・スポーツイヤーズ"と呼ぶ。開催中のラグビーワールドカップ、来年の東京五輪・パラリンピック、21年の関西ワールドマスターズゲームと、3年連続で大きな国際大会が日本で行われる。
岩佐氏は、今後はセカンドキャリアも含めてサポートできる体制にしたいと語る。「将来の不安がなくなれば、アスリートを目指しやすくなり、結果、スポーツ界全体の底上げになる」
様々な条件が重なって、アスリートへの興味が高まる機運にある。マネジメントする側としては、スター候補の人材であり、選手にとっては競技に集中できる環境作りにつながる。この動きは今後も加速しそうだ。
(「日経エンタテインメント!」10月号の記事を再構成 文/内藤悦子 写真:Matthew Harris/アフロスポーツ)
[日経MJ2019年10月25日付]
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