未知の地震を発見 震源は巨大な嵐、大陸揺らす

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/11/4
ナショナルジオグラフィック日本版

ストームクエイクを生み出すには、条件に合う海底地形がある場所を巨大な嵐が襲う必要がある。例えば、この2009年の衛星画像に映るハリケーン「ビル」は、ニューイングランド沖のジョージズ・バンクを通過する際にストームクエイクを引き起こした(PHOTOGRAPH BY NOAA VIA GETTY IMAGES)

未知の地震現象「ストームクエイク(stormquake)」が発見された。直訳すれば「嵐地震」だ。2019年10月14日付けで地球物理学の専門誌「Geophysical Research Letters」に掲載された論文によると、巨大な嵐の猛烈なエネルギーから地震波のパルスが生じ、それが数千キロにわたって大陸中に伝わる可能性があるという。

「彼らの発見には驚きました」と、今回の研究に関わっていない米コロンビア大学の地震学者ヨーラン・エクストローム氏は言う。今回、研究チームは個々のストームクエイクが発する「爆発的な揺れ」を個別に特定したほか、それらを遡って沖合の発生源を突き止めることにも成功した。

世界の地震計ネットワークは成長を続けており、近年は、新しい手法でとらえられた振動を分類する研究が進められている。今回の研究も、そうした試みの1つである。得られた情報は、地球の内部構造の解明から海洋や氷の変動、ひいては気候変動の監視まで、科学者たちが地球の理解を深めるのに役立つはずだ。

米フロリダ州立大学の地震学者で今回の研究チームを率いたウェンユァン・ファン氏は、従来、この情報の多くは地震記録のノイズとして捨てられていたが、科学者たちは今、こうした「ノイズ」が役立つのではないかと考えている。

「これまでは、どこで何を探せばよいのか、わかっていなかったのです」と彼は言う。

異常な振動が現れてきた

ストームクエイクが発見されたのは偶然だった。2018年の夏、ファン氏らは超低周波地震を研究する手法を開発していた。超低周波地震は、ふつう地震と聞いて想像するような、地球の表面を引き裂く突然の激しい揺れとは違う、揺れの周期が非常に長い地震である。人間は超低周波地震の揺れには気づかないが、地震学者は高感度の地震計を使って、その地震波を特定できる。

「地震計は地面にくっつけた小さな耳のようなものです」と、米国の大学間地震学研究連合の地震地質学者ウェンディー・ボーホン氏は説明する。同氏は今回の研究には関与していない。地震計は、熱狂したスポーツファンがスタジアムで飛び跳ねたときの揺れや、頭上を通過する航空機が引き起こす振動から、遠くの地震の揺れまで、あらゆる振動を記録できる。

しかし、超低周波地震は長距離にわたって追跡するのが難しいため、ファン氏のチームは、狭い地域からのシグナルをパズルのように繋ぎ合わせて、こうした地震を追跡する手法を開発した。ところがこの作業中に、彼らが追跡している地震に似ているが厳密には異なる、異常な振動が現れてきた。

驚いたことに、この振動には季節性があり、5月から8月にかけては一度も発生していなかった。しかし、地殻変動で発生する地震は、通常は季節の移り変わりとは無関係だ。さらに、奇妙な振動は北米大陸の東西の海岸線から広がっていた。通常の地震は、西海岸にクモの巣状に走る断層に沿って発生するが、東海岸には震源になるような断層はほとんどない。

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