「白金や」の「六歌仙姿彩」は6種類の焼きいなりが楽しめる。中央の手前は紅ショウガ、奥は季節限定のクリ

続いて紹介するのは、東銀座の歌舞伎座近くにあるいなりずし専門店「白金(ぷらちな)や」。13年に和食の食事どころ&土産物店としてオープンした。食事どころの一メニューとしてテークアウトも行っていたいなりずしが評判になり、それだけを買い求める客が増えたため、現在はテークアウトのみのいなりずし専門店として営業している。歌舞伎役者や芸能人御用達の店として、メディアでもたびたび取り上げられている有名店だ。

同店の名物となっているのは、油揚げの表面に焼き色を付けた「焼きいなり」。焼くことで香ばしい香りが立つだけでなく、油揚げの表面の油が内側に移り、中の酢飯や具材に油のうま味が染み込みやすくなるという。厨房で油揚げに焼き目を付けるときは、香ばしい香りが店内に漂う。

また、具材の味やコメの食感を引き立てるために、非常に薄い油揚げを使っているのも特徴だ。同店を運営する銀座瑞泉広報担当の八木宏之さんは「包んでいるときに油揚げが破れてしまうことも珍しくありません。それほど繊細な薄さに油揚げを袋に切り開けるところから取り組んでいます」と話す。

コメにも強いこだわりがあるという同店のいなりずし。「冷めてもおいしく、味が染み込みやすいおコメ」を目指し、「お米マイスター」の資格を持つ専門家から指導を受けて、いくつかの品種を独自にブレンドした「白金ブレンド」を開発。炊きたてのふっくらとした状態から少し寝かせ、具材と合わせる前にいったんコメを冷ますことで具材やだしのうま味をより吸収しやすいように工夫している。コメの主張が前面に出すぎず、日本人が懐かしさを感じるような素朴な味わいになっているのはそのためだ。

紅白の箱にプラチナゴールド。高級感があるパッケージはお土産としても喜ばれる

商品は定番人気の「山椒(さんしょ)の実」と「胡麻(ごま)」の2種類の具材が入った「連獅子(れんじし)」と、「紫蘇(しそ)」「五目(ごもく)」「生姜(しょうが)」「栗(くり)」のほか季節限定も含む6種類が入った「六歌仙姿彩(ろっかせんすがたのいろどり)」の2つ。どちらも歌舞伎の演目になぞらえて名付けられた。それぞれ8個入り(1500円・税込み)と24個入り(4500円・税込み)があり、8の倍数にしているのは「末広がりで縁起が良いから」(八木さん)とのこと。

焼きいなりは歌舞伎鑑賞の幕あいの食事として購入する客や、熱心なファンが役者の楽屋に差し入れとして配達を依頼することが多い。一口サイズなので舞台化粧を落とさずに手軽に食べることができ、焼き目をつけることで「焼くが旨(うま)い=役が上手(うま)い」というゲン担ぎの意味も込められていることから、特に歌舞伎関係者から評判がいいという。歌舞伎座で公演が始まる前や終演直後は人がひっきりなしに訪れ、何人分もまとめて購入する光景も珍しくないそうだ。

メールマガジン登録
大人のレストランガイド