増えるLGBT 無意識のバイアスなくす教育を探そうダイバーシティ進化論(村上由美子)

2019/10/26
画像はイメージ=PIXTA
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先月、米国の大学の同窓会に出席した。晩婚組が多く、同級生と育児の話で盛り上がった。多く挙がった話題は、子供の性的指向だ。同級生の一人は、中学生の娘が性転換を経て“息子”になった話をした。別の友人は、息子が婚約したとうれしそうだったが、相手は同性だという。その週末に新聞の結婚報告欄を見ると、同性婚が三分の一以上を占めていた。

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)を自認する米国人は増えている。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、LGBTの自認率は1945年以前に生まれた人は1.4%だが、80年~99年生まれのミレニアル世代は8.2%に急増している。若い年齢層ほどLGBTであることを開示する人が多いため、この傾向は今後も続くだろう。

同様の情報は日本では入手できないが、米国と同比率のLGBT人口が潜在的に存在していると推測することに無理はないだろう。性的マイノリティーと位置づけられる人たちだが、ほぼ10人に1人の割合になる可能性がある。彼らが平等な権利を確保することが、日本の社会経済にとって重要課題だ。

LGBTの社会受容性を測るOECD指標は、大幅な改善が日本に必要であることを示している。履歴書にLGBT関連組織でのボランティア活動歴を記載すると、同性愛の求職者は異性愛の求職者の1.5倍、面接に呼ばれにくいという実証実験がある。だが日本では雇用で性的指向に基づく差別を明示的に禁じていない。同性婚も法制化されていない。米国では同性婚の政策により、性的マイノリティーを自認している思春期の若者の自殺未遂が15%近く減少した。

LGBTの人々の社会的包摂は、人権という観点から重要だ。同時に、LGBTを受け入れる環境づくりが、多様性を受容し個性を尊重する文化を日本全体に広めていく。多様性がイノベーションを生む必要条件であることを勘案すれば、LGBTの人々が十分活躍できる社会環境こそが日本経済の活性化を促すと言っても過言ではない。

そんな社会を実現するのに最も重要なのは、無意識のバイアスをなくす教育だ。たとえ短期間であっても教育が効果的であることは証明されている。教育現場や家庭で、私たち一人一人が果たす役割は大きい。

村上由美子
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2019年10月21日付]