娘たちが「汗臭い」と苦言 男も香水をつけるべき?
著述家、湯山玲子さん
娘たちから汗臭いとか加齢臭とか言われます。肉を食べるのが好きなせいか、気づかないうちににおってしまっているようです。地元にはブラジル人が多く暮らしているのですが、彼らは男性でも香水をつけているようで、自分も試してみるべきか思案しています。(静岡県・60代・男性)
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娘さんから指摘された「お父さん、クサーイ」という体臭問題ですが、きちんと着る物を洗濯していますか? シャツは毎日変えても背広に無頓着な男性は少なくない。たばこ、焼き肉などの臭いが汗のそれと混ざって異臭を発しているのに本人は気づかない、というケースは、私も満員電車の中でよく経験します。
相談者氏はまずは、服の洗濯と手入れ、そして毎日の入浴を心がけましょう。それでほぼ問題は解決しそうなのですが、今回の質問には相談者氏の隠れたモチベーションが見え隠れするのですよ。それは何か?といえば、今まで男の自分とは無関係だった香水の魅力、というもの。
相談者氏は、ひょんなことから地元のブラジル人男性たちの身体から漂ってくる何とも言えない良い香りに心をつかまれている。外国人男性は常にオーデコロンを嗜(たしな)む文化があるのですが、相談者氏はそのことに拒否感を抱くどころか、心を動かされてしまったように受け取れるのです。
ようこそ!と声をかけたくなるのは、私自身、香水マニアだから。せわしなく単調な日常に疲れを感じる心を、香水はリフレッシュ&リラックスさせる効果もあるので、取り入れない手はありません。
「香水をプンプンさせて迷惑」という世間のイメージがありますが、それは濃度が濃い製品が主流だった時代のこと。現在は軽めのオードトワレが主流で、付け方も直接付けるのではなく、シュッと空中に吹きかけ、香りの霧を下で浴びるという方法だと、付けすぎの心配はありません。
以前、坂本龍一さんとお食事したときに、身ぶり手ぶりからかすかな伽羅(きゃら)の香りが漂ってきて思わず香りを尋ねたら、その正体は読経や写経の時にお坊さんが手に塗り込む「塗香(ずこう)」でした。アーティストはその香りの中で自ら安らぎを得、外の人間にもそのムードが漏れ伝わった、という現場でしたが、そういう香りとの関係が男性と香水の間に生まれれば最高ですよね。
香水の選び方は、店でサンプルを手の脈に吹きかけ、その後の時間の節々にそれを嗅ぎ、「一日、イイ感じ」のものを選ぶことをオススメします。香りを手に入れた人生は、そうでない人生よりも、数倍豊かに「香る」はずだと、私は確信します。
[NIKKEIプラス1 2019年10月26日付]
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