政府は人生100年時代にむけた政策を話し合う「人生100年時代構想会議」で、幼児教育・高等教育の無償化や大学改革、リカレント教育(社会人の学び直し)の強化などを取り上げました。これを受け、2019年10月、教育訓練給付制度が拡充されました。どのような点が変更になったのか、人事労務コンサルタントで社会保険労務士の佐佐木由美子氏が解説します。
キャリアアップ効果の高い講座の給付率が4割へ
「教育訓練給付」について、聞いたことがある、という人は多いのではないでしょうか。もともとは、1998年に教育訓練給付制度が誕生しました。その後、2014年に大きな改正があり、「一般教育訓練給付」と「専門実践教育訓練給付」の2種類に分かれました。さらに2019年10月1日から、前者の内容が拡充されることとなりました(改正の公布が3月、適用開始が10月1日)。
一般教育訓練給付は、雇用の安定・就職促進のためのもので、訓練を通じて習得する能力について客観的目標が設定された講座を幅広く対象としています。たとえば、情報処理技術者資格、簿記検定、CGクリエイター検定、DTP検定など、公的職業や民間資格の取得を目標とした講座がそろっています。そして、一定の要件を満たすと、教育訓練にかかった経費の2割(上限10万円)が給付される仕組みになっています。
「人づくり革命基本構想」では、リカレント教育の受講が職業能力の向上を通じ、キャリアアップやキャリアチェンジにつながる社会をつくっていかなければならない、としています。そのため、教養を高めるというよりは、ITスキルの向上や、社会的ニーズが高く即効性のあるキャリア形成ができるものを重点的に広げていきたい考えがあります。そこで、就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できる教育訓練を対象に、厚生労働相が指定する講座(特定一般教育訓練)を受けた場合に、本人が支払った入学金および受講料の4割(上限20万円)を「特定一般教育訓練給付金」として支給することとなりました。簡単にいえば、一般教育訓練の対象を拡大し、キャリアアップ効果の高い特定の講座について、「特定一般教育訓練」という新たな指定基準を設け、2割から4割に給付率を高めた、ということです。
特定一般教育訓練の講座内容を大別すると、次の4つとなります。
(2)IT資格取得目標講座(ITSSLレベル2以上)
(3)新ITパスポート試験合格目標講座
(4)文部科学相が認定する大学などの短時間プログラム(60時間以上120時間未満)
公的職業資格でいうと、たとえば「社会保険労務士」「税理士」「行政書士」「宅地建物取引士」「介護支援専門員」「介護福祉士」「保育士」など、様々なものがあります。2019年10月1日現在では、150の講座が指定を受けていますが、そのうち146講座が公的職業資格などのものとなっています。