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イタリア自然派ワインの本命フリウリ 先駆者の信念

エンジョイ・ワイン(18)

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世界的に人気が高まっている「ナチュラルワイン」。日本でも東京を中心に専門店が次々とオープンするなど、ワイン全体の消費が停滞気味のなか注目を集めている。今や多くの国や地域で造られているが、中でも北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州は有名で、日本にも熱烈な愛好家が多い。現地から2回に分けてリポートする。

ナチュラルワインは一般に、無農薬・無化学肥料の有機栽培ブドウを使い、市販の培養酵母でなく、ブドウの皮や醸造所内に常在している天然酵母で発酵させたワインを指す。また、雑菌の繁殖や酸化を防ぐための亜硫酸の添加は全くしないか、しても極少量にとどめ、ワインをきれいに見せるための澱(おり)引きをしないものも多い。有機ワインと混同されることも多いが、有機ワインは天然酵母の使用や亜硫酸の添加量には必ずしもこだわらない。

保存の際の温度管理が難しく、濁った外観や個性的な風味が「異物混入」や「異臭」と誤解される恐れもあるため、日本でもナチュラルワインを置いている店は多くはない。それでも、今年5月に出版された「ナチュラルワイン」(誠文堂新光社)には、全国48軒のワインショップと126軒のレストラン・バーが、ナチュラルワインを置いている店として紹介されている。11月には、ナチュラルワインを題材にした海外のドキュメンタリー映画が2本同時に公開予定で、人気はさらに広がる兆しを見せている。

ナチュラルワイン人気でひときわ注目されている産地の一つが、北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州だ。同州のナチュラルワインは、やはりここ数年、愛好家が増えている「オレンジワイン」と呼ばれるものが主流。色がオレンジだからそう呼ばれているオレンジワインは人気上昇に伴い、培養酵母や亜硫酸を使用して造ったものも増えているが、本来はナチュラルワインの手法で造られている。

最初に、同州オスラヴィア地区のワイナリー「ラディコン」を訪ねた。後述の「グラヴネル」と共に、イタリアにおけるナチュラルワインの第一人者とも言える存在だ。

訪れたのは10月中旬。収穫を終えたばかりの畑はブドウの葉が赤や黄に色づき始めていたが、びっしりと生えた雑草はまだ青々と茂る。周辺では小さなハチが回遊し、バッタが飛び跳ねていた。除草剤や殺虫剤をまいた畑では、見られない光景だ。

農薬を使わない理由は消費者や自然環境への配慮だけではない。農薬はブドウの皮に付いている酵母をも死滅させるため、天然酵母に頼る発酵には向かない。また、有用な微生物が活性化するため、ブドウの質、ひいてはワインの味わいが向上するとも言われている。ラディコンでは、こうした自然に近い環境でブドウを育て、実が十分に熟してから収穫する。「これがワイン造りで一番重要」と、当主のサシャ・ラディコンさんは強調する。

畑に隣接する醸造施設では、収穫したブドウの発酵が大きな木樽(たる)の中ですでに始まっていた。この地方では主に白ワインが造られているが、その醸造過程には、他の産地ではめったに見られない大きな特徴がある。

白ワインは通常、ブドウを絞って果汁だけを発酵させて造るが、この地域では、果皮や種ごと発酵させ、発酵後もしばらくワインと果皮や種を接触させておくマセレーションと呼ぶ手法を取り入れている。そうすることで果皮の色素がワインに移りオレンジ色になる。また、果皮や種から溶け出したタンニン(渋み)をはじめとする様々な成分の影響で、味わいに複雑さが加わる。マセレーションの期間はワイナリーによって違う。ラディコンでは2カ月から4カ月という。

マセレーションをする理由は味わいのためだけではない。果皮にはブドウが外敵から身を守るための天然の殺菌成分、抗酸化成分が含まれている。それを利用すれば、亜硫酸を添加せずに雑菌の繁殖や酸化をかなり防ぐことができる。

「亜硫酸はワイン造りに不可欠」というのが、研究者を含めたワイン関係者の圧倒的多数意見だ。しかし、毒性が強いため、ほぼどの国でも使用量の上限が定められており、添加した場合は表示義務がある。ラディコンでは、マセレーション期間の比較的短い一部のワインを除き、亜硫酸無添加。ラディコンさんは「亜硫酸は体に悪い」ときっぱり言う。

ラディコンと同地区にあるグラヴネルは、同じ第一人者でも独自の哲学を持ち、異彩を放っている。その象徴が、つぼの形をした陶器「アンフォラ」による発酵だ。一番大きなものだと2400リットルも入る巨大なアンフォラをいくつも地中に埋め、そこに圧搾したブドウを皮や種ごと入れて、ゆっくりと発酵させている。

実は、陶器による発酵はワイン発祥の地とされ、やはりオレンジワインで有名なジョージアの伝統的醸造法だ。グラヴネルのアンフォラもジョージアから取り寄せているという。

イタリアのナチュラルワインをけん引してきた当主のヨスコ・グラヴネルさんに代わり、ワイナリーを案内してくれた長女のマテイアさんは、アンフォラを使う理由を「ブドウの色素が沈着しないなど木樽より使い勝手がよく、また、まったく酸素を通さないステンレスやガラス繊維のタンクと違い、少しだけ酸素を通すから」と説明する。

マテイアさんによると、ワインは少しずつ酸素に触れさせながら醸造したほうが酸素に対する抵抗力がつき、結局は、抜栓した時などに起きる急激な酸化による劣化を防ぐことができるという。逆に、主流のステンレスタンクで醸造されたワインは酸素に対する抵抗力がないため、「亜硫酸の助けが必要になる」と解説する。

ただ、実際には、亜硫酸の使用に関しては、グラヴネルはラディコンより柔軟だ。マテイアさんは「亜硫酸は体によいものではない」と認めつつも、瓶詰め後の品質劣化のリスクを減らすため、どのワインにも「必要最低限の量の亜硫酸を添加している」と明かす。

ナチュラルワインの味わいの特徴はワインの中の多様な微生物に由来する「うま味」にあると言われる。また、本来は刺激物である亜硫酸を控えることで、味わいがまろやかになり、のど越しもスムーズになると評価する専門家も多い。現地で試飲したラディコンやグラヴネルからも、そうした特徴を十分に感じることができた。

そのラディコンは日本が最大の輸出相手国。グラヴネルにとっても米国と並ぶ一番のお得意様だ。日本では、ラディコンは安くても1本約5000円、グラヴネルは同1万円前後するにもかかわらず、両者のワインが絶大な人気を誇るのも、同じくうま味を特徴とする和食で育ってきた日本人の舌にぴったり合うからと考えれば、合点がいく。

(ライター 猪瀬聖)

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