『孤独のグルメ』 原作者が五郎さんに語らせたい言葉

「孤独のグルメ」の原作者で、音楽も手掛ける久住昌之氏
「孤独のグルメ」の原作者で、音楽も手掛ける久住昌之氏
Paravi

「ああ、腹が減った……」。松重豊演じる輸入雑貨商を営む井之頭五郎が、仕事で訪れた街々で"自分勝手に""自由に"幸福に空腹を満たす人気ドラマシリーズ『孤独のグルメ』。2012年にテレビ東京系で放送開始となり、年末の恒例SP版も好評を博しながら、2019年10月4日からSeason8がスタート。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも見逃し配信されている。

『孤独のグルメ』は今や一大ジャンルとなった「食ドラマ」のパイオニア的存在。腹ペコの深夜にシズル感たっぷりの映像と、五郎独特の食描写をお届けし、視聴者を悶絶(もんぜつ)させている。今回、原作者であり、「The Screen Tones」の一員として音楽を手掛ける久住昌之氏を直撃。『孤独のグルメ』が愛される理由や、撮影裏話などをたっぷりと語ってもらった。

――『孤独のグルメ』が長く愛される理由は、どこにあると思いますか。

「今までやってきて本当に思うんだけど、時間をかけて、丁寧に作っているっていうこと。ワンパターンでストーリーのほとんどない話で、だけど、毎回とても工夫して撮っている。下見して、照明やカメラもしっかり決めて、シーンにあった撮り方を考えて。自分の仕事でいうと、五郎の台詞(せりふ)は、脚本にある『肉が軟らかい』『肉汁が』『ジューシーだ』みたいなものは、ボクがチェックして全部消しています。そういうのはいわゆるグルメ番組で聞き飽きてる」

「脚本家が頑張って書いてくれたものを(修正で)真っ赤にしてしまうのは申し訳ないんだけど、でもスタッフもそれを望んでいるんです。毎回『五郎の頭の中で、今までにない変なことを言わせよう』と思ってやっているんです」

「音楽も毎シーズン40~50曲を作っています。『そんなに作る必要があるのか』と思いつつ(笑)、毎回、食べ物に合わせた新曲を作っています。五郎が中華街に行くなら、中華街風の音楽を作る。BGMだから、明確に分からないだろうけど、そういうところが実は毎回更新されているところですね。視聴者にとって無意識な部分で変化をつけている。パッと行って、パッと食べて、おきまりの音楽を流す、というだけを毎回やっていたら1シーズンで終わっていると思います(笑)」

――音楽はお店やメニューを知った上で制作されているんでしょうか。

「脚本が上がり次第、着手します。まだ映像を撮ってなくても楽曲は作り始めます」

――「新しい」にこだわるからこそ、毎回視聴者も新鮮な気持ちで見られるのですね。

「そうですね。シーズンごとにテーマ曲も、タイトルバックも変えています。さらに、その曲を激しくしたりゆるくしたり、バリエーションをみんなで作って。シンセサイザーの打ち込みより、生楽器を大切にしてます。ボクはウクレレとギター。木魚なんかもよく使います」

――台本へのこだわりを教えてください。

「台詞はできるだけ説明的にならないよう、少なくしたいです。台詞の内容も五郎らしい言葉だけ残して、そうじゃない台詞は削る。『この肉は何だろう?』『大腸かな? 小腸かな?』みたいなことが書いてあったら、うるさくて、全然ダメ。五郎は、毎回ものすごくおなかが空いて店に入っているんです。『何だろう?』と思っているうち、もう飲み込んじゃってるというくらいでいい。食事の写メを全部撮ろうと思っていたら、1皿目は撮ったけど2皿目以降撮り忘れちゃった、みたいなことありますよね」

「『こんなにやわらかくて、おいしい肉初めて食べた』なんてことは、五郎さんの表情が全部表すから、いらないんです。タレントさんの食リポなら、『何か』を言わなきゃいけない状況があるけど、『孤独のグルメ』にその必要はない。むしろ、グルメ評論や食リポから、一番遠いものでないといけない。頭の中に浮かぶ言葉だから自由なんです。普通の人が言わないことを言わせたい。『ウシなのにウマい』というモノローグが、松重さんが大真面目な顔して食べている顔に重なると『孤独のグルメ』になる」

――『孤独のグルメ』を愛する視聴者に向けてメッセージをお願いします。

「Season8は、本当に新たな気持ちで頑張っております。番組が始まっても、まだ並行して音楽を作り、台本も直していますので、よろしくお願いします。『ふらっとQUSUMI』(ドラマ本編終了後に久住氏が登場するコーナー)のボクはどうでもいいのですが……(笑)」

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