女性ホルモンが歯周病招く 気になる口臭、男性の2倍
口臭の強い女性は男性の2倍――。こんな結果をまとめた民間調査が注目を集めている。女性ホルモンの分泌が口臭の原因となる歯周病を引き起こしやすいためだという。
調査は歯科医療機器商社のモリタや歯科医師などが参加する研究グループがまとめた。5月に首都圏男女214人の口臭を機器で測定。周りが臭いに気づく基準値50を上回る人の割合が男性の8.3%に対して、女性は2倍の17.9%にのぼった。
■女性ホルモン好む歯周病菌
なぜ女性の方が多いのか。大きな要因が女性ホルモンだ。日本歯科大学付属病院の小川智久准教授は「歯周病の原因となる歯周病菌は女性ホルモンを好む」と話す。通常、女性ホルモンは血液中に分泌されるが、口のなかには例外的に歯と歯茎の間から体液と一緒にしみ出てくる。そのため女性は男性に比べて歯周病リスクが高くなる。
小川准教授は「ホルモンの分泌が盛んな思春期や妊娠中はもちろんだが、更年期の女性は特に注意すべき」と指摘する。骨密度の減少で歯茎を支えるあごの骨がもろくなり、歯茎と歯の隙間が広がって女性ホルモンがよりしみ出やすくなる。また更年期障害の症状のひとつである「ドライマウス」になると、口内をきれいに保つ働きを持つ唾液が減って臭いのもととなる細菌も増殖しやすくなる。
口臭を防ぐにはどうすればいいか。大手町デンタルクリニック(東京・千代田)の島倉洋造院長は「歯ブラシ以外のセルフケアも習慣化すべき」と勧める。歯間ブラシやフロスなどの器具を使うと、歯ブラシの届かない場所まできれいにできる。
「歯磨き粉は殺菌成分が入っているものがおすすめ」と話すのはライオンのオーラルケア事業部開発担当部長、大古勝朗さん。同社のオーラルケアマイスター、太田博崇さんは「口臭の原因は歯周病菌などの細菌だとの認識が広がり、臭いを隠すだけでなく、菌を取り除くケアへの関心も高まってきた」と指摘する。
■気になる臭い 言葉で伝える
一緒に働く人の口臭が気になる場合もあるだろう。日本産業カウンセラー協会(東京・港)の伊藤とく美執行理事は「伝えにくい話題ほどきちんと言葉にするべきだ」と話す。単刀直入には指摘しづらいため、仕事の成果や謝意など別の話題から始めるといい。「くさい」は相手を傷つけやすいので、より客観的に「口臭がする」と伝える。「歯周病など病気の可能性を心配する言葉を添えると相手は受け入れやすい」(伊藤さん)。
NGなのは単にジェスチャーや態度だけで伝えることだ。気になるからといって顔を背けたり、鼻をいじったりすると、別の意味に捉えられることも。職場内でトラブルにならないために、相手の気持ちを配慮しながら言葉にすることが重要だ。
(田中早紀)
〔日本経済新聞電子版10月19日付を再構成〕
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