「データ」で変わる次の社会 学生が創る新ビジネス

「Data Science Fes 2019」のDSFes学生コンペティション(9日、東京ビッグサイトで)
「Data Science Fes 2019」のDSFes学生コンペティション(9日、東京ビッグサイトで)

「データ」を軸に社会が変わる――。データサイエンスをテーマに9月から11月にかけセミナーやシンポジウムを行う「Data Science Fes 2019」(主催:日本経済新聞社)の中で、学生を対象にしたイベントとしてDSFes学生コンペティションが開催された。実際の企業データを活用して「分析」「ビジネス提案」の2部門で競う。参加条件は大学生、大学院生、高専生を対象に1チーム3~6人で構成すること。さらにチーム内に「R」または「Python」などのプログラミング言語を用いたデータ分析経験者が最低1人いることだ。

実際の企業データを課題に分析

実際に企業が保有するデータ(不動産の物件情報、モバイルアプリの利用データ、ビジネスチャットツールのデータ)を課題に設定。8月20日の締め切りまでにエントリーしたのは、大学生・大学院生の13チームだった。

8月の「ミートアップ」には50人の学生が集まった(東京・港)

エントリーした学生たちがまず集まったのが、8月26~27日に東京・六本木で開かれた「ミートアップ」で、約50人の学生が参加。データ分析手法やデータからビジネス提案につなげるノウハウについての講義を聞いたり、データサイエンスの現場で働く社会人から実際にアドバイスを受けた。講義の質疑応答では次々と手が挙がり、「これからできそうな新しい市場規模の予測が難しい。まだ起きていない事象をどう加味して予測したらいいか」など、実践的な質問が寄せられた。

講義以外の時間は、それぞれのチームで作業。あるときはパソコン画面のデータとにらめっこ、あるときは付箋を使ってビジネスアイデアのブレスト。「今の仮説だと、このグラフは何の意味だったっけ?」と、データとアイデアを行ったり来たりしながら、悩む姿がみられた。

本選に進んだ「分析」「ビジネス」の各3チーム

「分析」部門では監修にあたった鹿内氏(左端)上位3チームとのディスカッションが行われた

ミートアップ後に提出された資料を受けて本選に進む6チームが選ばれ、10月9日、東京ビッグサイト(東京・江東)で「学生データコンベティション本選」が行われた。「分析」部門を勝ち上がってきたのは「ちかっぱ」、「わをん」、「802」の3チーム。課題は不動産の物件情報から賃料(家賃+元金)、モバイルアプリの利用データからアプリの利用者数、ビジネスチャットツールのデータから次の1週間のメッセージ量を予測するというもので、実際の計測値に一番近い値を出したチームが優勝する。

3チームの代表者とのディスカッションを司会したのは、学生データコンペティションの監修に当たった株式会社シンギュレイト(東京・渋谷)の鹿内学社長。鹿内社長によれば「データ分析では企業内の人材よりも修士以上の学生の方が即戦力になる」という。研究経験を持ち論文を読めるレベルに達していれば、最先端のことをずっと学び続けられる学習スキルを身につけていると考えられるためだ。

データ分析で関心を呼んだのは「ちかっぱ」チームの変数前処理。不動産の物件情報の分析に際し、各駅の乗降客数を独自に調べて新たな変数とした。他方、「わをん」チームは、なるべくシンプルなモデルを構築。「802」チームは複数のアルゴリズムを試そうとしたという。鹿内社長は、計量社会科学といった文系の知識もデータ分析に必要になっていると指摘した。

社会課題の解決を目指す新ビジネス提案も

続く「ビジネス提案」部門では3チームがプレゼンテーションから競った。データビジネスであることに加え、インパクトや新規性なども採点対象で、3チームとも不動産のデータを利用した。

1番手が成城大学の「Team Seijo」。空き家は必ずしも地方だけの問題ではなく、都内でも人口の多い地域には空き家が多いこと。総務省のデータから高齢者が所有する空き家が多いと推測されることから、空き家を若い世代に譲渡する「ステップホーム」というビジネスモデルを企画した。

空き家を譲り受ける代わりに10年から30年かけて代金を支払うことで、若い世代はローンを組まずともマイホームを獲得でき、リフォームなども自由に行える。高齢者が亡くなっても所有者不明で空き家になる心配もないのが利点だ。

ビジネス提案部門は学生チームから斬新な提案が次々と発表された

津田塾大学の「TOS」チームは「NeoAdress」を発表した。都心部のマンションに0~2部屋タイプの空き室が多いデータに注目。家具メーカー、消費財メーカーなどと連携して室内にベッドやドライヤーを設置して1泊ワンコイン(500円)で提供しようとするもので、「この新商品を試したい」というユーザーなどがターゲットだ。

「ベッド売り場でちょっと横になっただけでは良しあしは分からない」という女子大生の肌感覚をビジネス企画につなげた。消費財メーカーは新商品のユーザーの意見を取り込むことができ、他社製品との相乗効果も期待できると予測する。

3番手は分析部門でも予選を突破した東洋、中央、駒沢各大の文系・理数系の連合チーム「わをん」が提案した、案内者の要らない内見を可能にする「Smartview」。アプリを通じたやり取りで、空きマンションの下見をしたいユーザーにスマートロックを一時的に貸与し、補完的に物件情報を伝えるためにスマートスピーカーも用意する。ユーザーにはECサイトのレビューのように、内装や周辺施設、清潔性などを採点してもらう。ユーザーは、少し興味が湧けば気軽に空き室を見に行くことができ、不動産業者は案内者の人的コストを削減できるのがメリットという。

シンプルなモデルでの分析が正解を導くケースも

分析部門で最優秀賞を獲得した「わをん」は3大学の混合チーム

分析部門で最優秀賞(1位)を獲得したのは「わをん」チーム。優秀賞(2位)が「ちかっぱ」チームだった※。「わをん」チームの松浦峻さんは「実はビジネス提案の方に時間を使っていました」と思わぬ受賞に驚いた様子。鹿内学社長は「わおんチームの分析は実は平均値を求めたものに近い」と、彼らが簡単な手法を使ったことを指摘したうえで、「データサイエンティストは高度なスキルを持っているから色々な要素を入れがちだが、分析対象によってはあえてシンプルにした方が良い場合もある」と講評した。

「わをん」チームは全員が学部2年生。松浦さんは「どんな職業でもデータ分析に携わっていたいです」と話す。ほかのメンバーもウェブ系の企業や情報エンジニアなどが希望だ。

※本選当日に発表した審査結果に誤りがありました。最終確定順位につきましては、こちらをご確認ください。

審査員全員が「使ってみたい」ビジネス提案

ビジネス提案部門は最優秀賞を「TOS」チームが、優秀賞を「わをん」が受賞した。TOSチームのNeoAdresには「実現性が高いのでぜひチームで起業を」との声も

ビジネス提案部門は最優秀賞を「TOS」チームが、優秀賞を「わをん」が受賞した。「TOS」チームの「NeoAdress」は、講評で審査員全員が「使ってみたいと思った」と言うほど高い評価を受け「実現性が高いのでぜひチームで起業を。何かあれば相談して下さい」との声も聞かれた。

チームの増野晶子さんは「個人が普段感じている困ったことを起点に提案しました。もっと面白いビジネスにできる可能性を感じました」と話す。「TOS」チームの3人は全員、将来データ分析の仕事を希望する。

データビジネスの最前線に立つ企業の講演も

「あの頃はCHOCOLATE」の開発にはデータサイエンティストのスキルが欠かせなかったという
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社は「デジタルテクノロジー・コンサルタント」を採用している

「学生データコンベティション本選」ではデータビジネスの最前線に立つ企業の講演も行われた。NECは入社2年目のデータサイエンティストが登壇した。

講演では、NECがチョコレートメーカーと共同で開発した「あの頃はCHOCOLATE」の開発秘話を披露。約60年分の新聞記事から頻出単語約600語を抽出し、単語から人がイメージする味(甘味、苦味、酸味、 フローラル等)を割り当て、その時代ならではの風味を作り出したという。

一昨年からデジタルテクノロジー・コンサルタントの採用を開始したというデロイト トーマツ コンサルティング合同会社は、より企業に寄り添った仕事に興味がある学生を求めていると話した。

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