日本酒やお茶とも合う コクを楽しむ国産チーズ10選
食後のだんらんに、チーズをつまんではいかが。ワインだけでなく、日本酒やほうじ茶も合う。海外で評価が高まっている国産ハード&セミハードチーズを、専門家が選んだ。
1位 森のチーズ(長熟)
濃厚で深いコク お酒との相性も良く
2008年からチーズを作る工房が手掛ける。食品添加物や発酵調整剤などは使わず、たんぱく質など乳成分が高く、チーズ生産に適するという薄茶の毛色の乳牛「ブラウンスイス」の生乳だけで作る。温度と湿度を調整し、塩水で拭いたり、から拭きしたりして7~8カ月熟成させた。濃厚で深いコクがあり、風味が香ばしい。
「焼きたてのクッキーのような香り。丁寧に熟成させたことを思わせる」(中谷瞳さん)。「ミルクの甘みと熟成のうまみが抜群に心地よい」(村瀬美幸さん)。ワインやビールなど酒との相性のよさを挙げる人が多かった。
(1)取り寄せの量と価格 1パック(約100グラム)880円のほか、量り売りも(2)工房の所在地 栃木県那須塩原市(3)注文方法 FAX0287・73・5419
2位 鶴居シルバーラベル
ミルクと塩味が調和 トーストでも
タンチョウが舞う自然豊かな北海道鶴居村の農畜産物づくりの体験施設が、2007年にチーズの製造・販売を始めた。納豆菌に似た、リネンス菌を用いて熟成させており、なじみのある味わい。パンにのせてトーストしたり、冷凍ピザにのせたり、加熱して食すのもおすすめだ。
「しみじみとしたコクが広がる。溶かしてジャガイモやサツマイモにかけてもおいしい」(今藤亜記子さん)。「濃厚なミルクのコクと、塩味のバランスがとてもよい。華やかなブルゴーニュの赤ワインと一緒に楽しみたい」(新田恭子さん)。
(1)1パック(約100グラム)600円(税別)(2)北海道鶴居村(3)通販サイト https://raku2tsurui.jp/
3位 二世古 椛[momiji]
食卓彩る鮮やかな色
2005年、北海道のニセコで始めた工房。近隣の牧場から届く生乳を原料に、日本人の味覚に合ったチーズ作りを目指す。色素を加えた鮮やかなオレンジ色が特徴のミモレットタイプのチーズだ。熟成は12カ月以上に及ぶ。「秋らしい色味で、食卓に映えるのでパーティーにもおすすめ」(今藤さん)
「酸味や塩味はバランスがよく、長いうまみの余韻がある」(冨永純子さん)。ミモレットはからすみの味わいに例えられることも。合わせたい飲み物は「とっておきの日本酒」(村瀬さん)。
(1)1パック(約100グラム)950円(税別)(2)北海道ニセコ町(3)FAX0136・44・2188
4位 ASOYAMA
口の中で砕ける食感 お茶と合わせて
ジャージーやガンジー、ブラウンスイスなど、5種類の乳牛を飼育している牧場。その混合で作っており、「強いコクが感じられる。口の中で砕けるような食感もよい」(小泉詔一さん)。ワインやウイスキーなどのお酒だけでなく、お茶と相性が良いとみる専門家が相次いだ。「日本茶によく合う」(金子敏春さん)。
(1)100グラムから、1100円(税別)~(2)熊本県西原村(3)https://alpage.co.jp/
5位 シマフクロウ
ナッツのような香ばしさ
東京から移住した夫婦による工房でチカプはアイヌ語で「鳥」の意味。酪農を営む姉夫婦の手掛ける生乳を用いる。「ナッツのような香ばしさ。少しずつゆっくり、しみじみ味わいたい」(今藤さん)。食感も特徴的で「ふかしたサツマイモや栗のよう。甘納豆と一緒に、食後にほうじ茶でほっこりしたい」(丹下慶子さん)。
(1)100グラムから、640円~(税別)(2)北海道根室市(3)FAX0153・27・1186、メール info@chikap.jp
6位 硬質チーズ
やさしい味 苦手な人にもおすすめ
フランス仕込みの技術をベースにする、1982年創業の工房。「穏やかでやさしい味」(今藤さん)。「口当たりの軽さが魅力」(宇多聡子さん)と、チーズ独特の香りやクセが弱く、チーズが苦手という人にもおすすめ。スライスして野菜にのせたり、パンに挟んでサンドイッチにしたり。「加熱調理でもおいしさが引き立つ」(小泉さん)。
(1)1パック(160グラム) 1512円(2)長野県東御市(3)https://www.a-fromage.co.jp/shop/
7位 蔵王
お気に入りのウイスキーと
1980年にチーズ作りを始め、多くのナチュラルチーズ製造技術者を育成してきた酪農センターの一品。オランダ生まれのゴーダチーズを桜チップで薫製しており、香り豊かだ。「鼻から抜けるスモークの香りが後を引く」(中谷さん)。お酒との相性のよさを挙げる人が多く、「お気に入りのウイスキーとゆっくりと味わいたい」(冨永さん)。
(1)1パック(70グラム)454円(2)宮城県蔵王町(3)https://www.zao-cheese.or.jp/
8位 バッカス
季節で変わる味わい
北アルプスの1500メートル以上の高地でたくましく育つブラウンスイスの生乳を用いており、「良質で濃厚なミルクの風味とコクを感じる」(村瀬さん)。現在販売中なのは、昨年12月から作り始めた「雪のバッカス」。5月から10月までの放牧期間の生乳で作る「バッカスダルパージュ」は2020年3~4月から販売する予定。季節によって味わいが変わる。
(1)200グラムから、1650円~(2)長野県松本市(3)電話0263・79・2800
9位 モンヴィーゾ
パスタやリゾットに使っても
イタリアのチーズ作りをベースに製造する工房。脂肪を抜いた生乳を使っており、凝縮されたうまみを感じる。「ミルキーな甘い香り」(丹下さん)。キノコとの相性がよく、調理してパスタやリゾットに使うのもおすすめ。ほくほくとした食感も特徴的で「薄く切ってクラッカーにのせたり、サラダにトッピングしても」(さわけんさん)。
(1)1パック(100グラム)734円(2)北海道白糠町(3)http://rakukeisya.jp/shop/web_shopping/
10位 五町田ゴーダ
子どもにも食べやすい
佐賀県嬉野市の田園地帯にある3代続く酪農家。7年前にチーズ作りを始めた。自社栽培する稲を食べて育った、ホルスタインの生乳から作る。「やさしい香りに、やさしい口溶けで心地よい」(金子さん)。「食べやすく、子どももぱくっといける。おねだりしやすい価格で、家族みんなで楽しめる」(中谷さん)。
(1)1パック(100グラム)670円(2)佐賀県嬉野市(3)https://www.nakashima-farm.com/
欧州では食後の一品
フランスなどヨーロッパでは食事の後、デザートの前にチーズを食べる習慣がある。「日本でいうと、漬物のような感覚」(村瀬美幸さん)。チーズは生乳に乳酸菌や酵素などを加え、固めて作る。中でもハードとセミハードチーズは固めた生乳から水分を抜き、熟成させる。1年以上熟成させるものもあり、コクやうまみが楽しめる。口当たりがまろやかでクセが少なく、毎日でも食べられるとして「普段着のチーズ」ともいわれる。
カットした面をアルミホイルで覆い、全体をラップで包んで冷蔵する。少量生産で台風の影響もあり、届くのに時間がかかる。余裕を持って注文しよう。
ランキングの見方 商品名と工房。数字は専門家の評価を点数化。(1)取り寄せる際の容量、価格の目安(2)工房の所在地(3)注文方法。写真は山田麻那美撮影、スタイリングは田口竜基。
調査の方法 国内にある工房が製造し、取り寄せ購入ができるハードとセミハードチーズを、専門家への取材をもとに26商品選出。専門家が商品名を伏せて試食し、「味と価格のバランス」「食事後の一服にふさわしいか」などの観点で順位づけした。編集部で集計した。(井土聡子)
今週の専門家 ▽宇多聡子(「エル・グルメ」エディター)▽金子敏春(日本チーズアートフロマジェ協会理事長)▽小泉詔一(雪印メグミルク チーズ研究所所長)▽今藤亜記子(日本マイセラ チーズ・オンザテーブル事業部)▽坂上あき(チーズプロフェッショナル協会常務理事)▽さわけん(科学する料理研究家)▽丹下慶子(レコール・デュ・ヴァン チーズ講師)▽冨永純子(キャプランワインアカデミー・チーズ講師)▽中谷瞳(「チーズ王国」販売課長)▽新田恭子(エノテカ レ・カーヴ・ド・タイユヴァン東京店長)▽村瀬美幸(チーズルームアカデミー副校長)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2019年10月19日付]
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