ファストフードから「永遠の化学物質」 人体に蓄積?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/10/28

「食品は、PFASに接触する源の1つにすぎません」と、PFASが塗料やカーペット、衣類にも一般に含まれていることを、同氏は指摘した。「暴露量を減らそうとすることには意味があると思いますが、現段階では、ファストフードを食べる頻度と健康への悪影響を関連づけることはできません」

PFASは分解されないことで非常に有名で、「永遠に残る化学物質」と呼ばれることも多い。また、ビスフェノールA(BPA)のような他の化学物質は数時間で体内から検出されなくなるのに対し、PFASの場合、最速のものでも数カ月も体内に残留することがある。)

動物実験では肝臓や腎臓、免疫系に障害

PFASで汚染されたチーズバーガーを週に5個食べた場合と1個食べた場合の、健康への影響度合いを測定するのは難しい。PFASは、いたる所に存在するからだ。

ある化学物質の影響を確認するために科学者がまず行う研究は、ラットやマウスなどの実験動物をさまざまな条件で暴露させることだ。こうした動物実験の結果、PFASへ暴露すると、一貫して肝臓や腎臓、免疫系に障害が出るということが示された。腫瘍の発生も広く見られ、中には、がんや甲状腺異常を引き起こす兆候を示すこともあった。

ただし、PFASの規制には、大規模な集団レベルで疾患の傾向を調べる必要がある。

実際、乳幼児期の鉛への暴露が、後の認知能力に影響を及ぼしうることを示すのに、数十もの集団調査を要した。この結果を受け、鉛の使用許容量に関して、より厳しく規制されるようになった。

一方、食品容器などに用いられる化学物質ビスフェノールA(BPA)も、健康に影響を及ぼす可能性が研究で指摘されているが、いまだに科学者の意見は一致しておらず、米国食品医薬品局(FDA)はビスフェノールAについて「直ちに健康リスクを生じるものではない」としている。

水道水にも含まれている?

今回の論文について、米アリゾナ州立大学環境健康工学センター所長のロルフ・ハルデン氏は、ファストフードとPFAS摂取に明確な関連があることを示している、と述べる。だが、消費財全般においてPFAS含有量が非常に多いことの方が心配だと語る。

「ポップコーンやファストフードにはさほど興味はありません。憂慮しているのは、米国民の70%が、分解されることのない化学物質にさらされているということです」と同氏は話す。

PFASにさらされた食品を摂取することの影響もさることながら、PFASが捨てられた場合の環境への影響について消費者は懸念すべきだ、とシャイダー氏は言う。

たとえば、ごみの埋立処分場ではPFASが地下水に浸出する恐れがある。9月25日付けで環境NPO「Environmental Working Group」が発表した報告によると、カリフォルニア州の住民750万人が利用する水道水から、PFASが検出されたという。

前述のワシントン州とサンフランシスコ市に加え、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ロードアイランド州では、それぞれPFASの規制が提案されている。9月には、デンマークが世界で初めて、食品包装へのPFASの使用を禁止した。

論文の結論に、ハルデン氏はこう付け加えた。「この論文に記載の内容が、PFAS暴露のすべてだと考えるようでは、認識が甘いと言わざるを得ません。その実態は、はるかに広く、より複雑化している最中なのです」

(文 SARAH GIBBENS、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年9月26日付]

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