
ファストフードが健康に良くない理由はこれまで数々挙げられてきたが、また新たな問題が加わった。「PFAS」と呼ばれる化学物質が、人体に蓄積されている可能性があるというのだ。
PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)とは、耐水性や耐火性を高めるため、一般的な家庭用品に大量に使用されているフッ素化合物の総称。「永遠に残る化学物質」として、近年、欧米で大きな問題になっている。
ファストフードを食べた人と手作りの料理を食べた人の血中PFAS濃度について調べた新たな論文が、2019年10月9日付けで学術誌「Environmental Health Perspectives」に発表された。
2003~2014年に1万人以上から採取した血液サンプル中のPFASを調べたところ、約70%の血液から広く使われている5種類のPFASが検出されたという。研究には、米国疾病予防管理センター(CDC)が定期的に更新する全国健康栄養調査(NHNES)のデータを用いた。
この調査データでは、過去24時間、1週間、1カ月の間に、どれくらいの頻度でファストフードを食べたかについても聞いているが、それらとPFAS濃度の関係を調べたところ、24時間以内にファストフードを食べた人は血中PFAS濃度が高い傾向にあることがわかった。
人体から速やかに排出される他の化学物質とは異なり、PFASは何年も残留するおそれがある。このため、定期的にファストフードを食べると、体内にPFASが蓄積されることになる。
あちこちに含まれる物質
どの程度の量で人の健康に悪影響が出始めるかは、まだ明らかになっていない。だが、PFASががんや甲状腺疾患、ホルモンの変化、体重増加に関連があることは、多くの研究によりわかっている。
米国のワシントン州とカリフォルニア州サンフランシスコ市では、食品容器へのPFASの使用を制限する法令が可決された。
ファストフードの包み紙と容器400種類を調べた2017年の調査では、パンとデザートの包み紙の半分以上にPFASが含まれていることが判明した。また、サンドイッチとハンバーガーの包み紙の40%近く、フライドポテトを入れる容器の板紙の20%にも含まれていた。PFASは耐水性・耐油性に優れ、食品の携帯が容易になるため、包装の保護剤として広く添加されている。
研究者が心配しているのは、まさにその丈夫さだ。
「PFASへの暴露(化学物質に生体がさらされること)のレベルをどんどん低くしながら、健康にどんな影響が起こるかを検討しているところです」と、今回の論文の共著者で、米研究機関「Silent Spring Institute(沈黙の春研究所)」の環境工学者で化学者でもあるローレル・シャイダー氏は話す。