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クジラ1頭に2億円の経済効果 IMFの学者が試算

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ナショナルジオグラフィック日本版

クジラが人類に提供する「生態系サービス」の価値は、1頭当たり200万ドル(約2億1500万円)とする試算を、国際通貨基金(IMF)の経済学者らが同基金の季刊誌「Finance & Development」のオンライン版に発表した。

巨体でカリスマ性のあるクジラの保護は、自然を守りたい個人や政府がやっている慈善事業のようなものと考えられがちだ。IMF能力開発局の副局長ラルフ・チャミ氏が率いる経済学者のチームは、そうした人々の意識を変えたいと願い、クジラがもたらす恩恵を金銭的価値に換算するという初めての試みに取り組んだ。

この分析は、まだ査読付きの科学誌には掲載されておらず、クジラが取り込める炭素の量をめぐっては科学的な知見に重要なずれがある。だがこれまでの研究から、クジラの保護が地球に大きな見返りをもたらすことは、経済学者の目から見ても明らかだ。

チャミ氏は、この結果が「動物のための動物保護に興味がない政策決定者との対話のきっかけになればと思います」と語る。「クジラは国際的な公益資産であると、全世界が認識すべきです」

炭素を海底へ運ぶクジラ

ヒゲクジラやマッコウクジラを含む「大型クジラ」が、大気中から炭素を回収して隔離する方法はひとつだけではない。まず、脂肪やタンパク質の多い体内に何トンもの炭素をため込む。泳ぐ大樹と言ってもいい。死んだあとは、クジラの死骸は炭素もろとも海の底へ沈む。そして数百年かそれ以上の間、炭素を海底に隔離する。

2010年の研究では、ヒゲクジラ類のうちシロナガスクジラ、ミンククジラ、ザトウクジラなど8種が、死んで海底に沈む際、合わせて毎年3万トン近い炭素を深海へ運んでいると推定された。もし、商業捕鯨が始まる前の水準までクジラの個体数を回復できれば、この炭素吸収量は年間16万トンまで増加すると、報告書の著者たちは推測している。

クジラが出す巨大な糞も、CO2吸収に貢献している。深い海で採餌するクジラは、海面近くで排せつし、同時に窒素、リン、鉄など大量の栄養物を放出する。これが植物プランクトンの成長を促し、ひいては光合成によるCO2吸収を促すことになるのだ。

プランクトンが死ぬと、吸収された炭素の大半は海洋表面で再利用されるが、一部の炭素は死骸とともにやはり海の底へ沈んで行く。2010年の研究では、南極海のマッコウクジラ1万2000頭が年間20万トンの炭素を大気から海中へ取り込んでいるという報告が出された。

ただし、クジラの排せつ物によって世界中で植物プランクトンがどれだけ増えているのかはわからないと、この現象を長年研究している米バーモント大学の保全生物学者ジョー・ローマン氏は話す。そこでIMFのチャミ氏は、現在生息する世界中のクジラが海洋植物プランクトンを1%増加させると仮定し、取り込む炭素の量を計算した。さらに、クジラが死んだときに隔離される炭素量を、文献に基づいて1体あたりCO2換算で平均33トンとしてこれに加えた。

そして、CO2排出量取引の現在の市場価格を用いて、クジラが回収する炭素の金銭的価値の合計を出し、エコツーリズムなどを通してクジラがもたらすその他の経済効果を追加した。

すべて合わせてみると、クジラ1頭の生涯の価値は約200万ドルになると結論付けられた。全世界のクジラで計算すれば、1兆ドル(約215兆円)にのぼる可能性がある。

野生生物の経済的価値という考え方

現在、地球の海には約130万頭のクジラが生息している。これを、商業捕鯨が始まる前の推定400万~500万頭まで回復させられれば、クジラだけで年間約17億トンのCO2を回収できる計算になる。ブラジルの1年間のCO2排出量を上回る量だ。

だが、それも全人類の年間排出量である400億トンのなかでは数パーセントにすぎず、世界中がこれまで以上に厳しく保全努力に取り組んだとしても、商業捕鯨が始まる前の数まで回復させるには数十年がかかる。人間の手で海がひどく汚染されてしまった今となっては、それが実現可能かどうかもわからない。

「あまり誇大宣伝するつもりはありません。クジラを保護しさえすれば気候変動を食い止められるというわけでもありませんから」と語るのは、国連の環境プログラムと協力するノルウェーの財団GRIDアレンダールのブルー・カーボン・プログラムでリーダーを務めるスティーブン・ラッツ氏だ。

ラッツ氏が、この分析結果が提示する数字よりも重要とみるのは、野生生物を生かしておくことでもたらされる経済的価値に着目した点だ。この手のアプローチは他の海洋生物にも適用できるだろうと、ラッツ氏は期待する。

「海洋炭素ということであれば、クジラは氷山の一角であると考えています」

さらに、陸生動物にまでこれを拡大できないだろうか。例えば、2019年7月15日付けの科学誌「Nature Geoscience」には、コンゴ盆地のゾウが、すみかである雨林に数十億トンの炭素を隔離する手助けをしているという論文が掲載された。

この論文の筆頭著者で、フランス気候環境科学研究所の研究員ファビオ・ベルザギ氏は、IMFの分析は大型動物に関する「極めて重要な」点を浮き彫りにしていると話す。つまり、大型動物が人類にもたらす生態系サービスは、「すべての生き物に恩恵がある」ということだ。

「大型動物がサービスを提供し、そのサービスには価値があるということを認識する良いきっかけになると思います。それは、金額にして絶大な価値です」

(文 Madeleine Stone、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年9月27日付]

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