ラジオドラマに挑戦 声の演技は奥が深い(井上芳雄)第54回

日経エンタテインメント!

井上芳雄です。10月21日からNHK-FMで放送されるラジオドラマ「青春アドベンチャー『紺碧のアルカディア』」に出演します。先日収録があったのですが、ふだんミュージカルでご一緒している花總まりさんや坂本真綾さんと、セリフだけのお芝居をするのが新鮮な一方、言葉で演技する難しさも感じました。

ラジオドラマ「青春アドベンチャー『紺碧のアルカディア』」10月21日~25日、10月28日~11月1日、21時15分~21時30分(15分、全10回)NHK-FM ※radikoとNHKネットラジオ「らじる☆らじる」同時配信&「聴き逃し」配信(1週間)あり

「青春アドベンチャー」はNHK-FMで毎週月曜から金曜の夜に15分間放送している連続ラジオドラマで、1992年から続いている長寿番組です。僕が出るのは2017年の『また、桜の国で』以来2回目。それは原作ものだったのですが、今回の『紺碧のアルカディア』は並木陽さんによるオリジナル脚本です。

物語の舞台は13世紀初頭、「最悪の十字軍」と呼ばれた第4回十字軍による、東ローマ帝国の古都コンスタンティノポリス攻撃という史実をベースにした全10回の歴史ロマンです。僕は東ローマ帝国皇子の役。叔父がクーデターで帝位を簒奪したため、国を追われるのですが、祖国復興の理想を抱いて戦いに身を投じるという設定です。

主役は花總まりさんで、ヴェネツィア共和国元首の孫娘にして辣腕の女船長という役どころ。彼女が助ける東ローマ帝国皇女を演じるのが坂本真綾さん。その皇女の弟が、僕が演じた皇子です。ほかにも舞台でご一緒する俳優の方も多く、「このままミュージカルになりそうだね」と収録の合間に話したりしました。でも歌は全くなく、セリフだけです。

僕は、6月から8月までミュージカル『エリザベート』に出ていて、夏の間は歌の仕事も多く、たくさんのセリフを言う機会があまりなかったので、どちらかというと歌のほうに気持ちがいっていました。今は逆に、役者の期間というか、言葉で演技をする機会が多い時期。10月からは井上ひさしさんの最期の戯曲による舞台『組曲虐殺』でプロレタリア作家の小林多喜二を演じています。今回のラジオドラマも言葉の演技です。

僕はもともと歌から俳優の道に入ったので、歌の方が得意で、セリフはまだ分からないことも多いのです。しばらくやってないと、さじ加減をちょっと忘れてたりもします。『組曲虐殺』のけいこでは、久しぶりにセリフの練習をしていたら、演出の栗山民也さんから、「滑舌がよすぎるな」と言われました。滑舌って、いいにこしたことはないんじゃないかと思っていたので、何がよすぎるんだろうか。それで思ったのが、歌は詞を届けるのが大事だけど、お芝居はなによりもその人に見えないといけない。なので、あまり日常と切り離されたしゃべり方をすると、逆に違和感があったりするのかもしれない。自分でも気づかないうちに、歌の発声になっていたのかなと。といって、あえて滑舌を悪くするのも難しいのですが、しゃべりのスピードは変えられるし、井上ひさしさんの戯曲のしゃべり方というのもあるんだろう。やっぱりセリフを言うって難しいな、と感じました。

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