組織と共に個人潤すディスコ ハーバードが注目の哲学ハーバードビジネススクール准教授 イーサン・バーンスタイン氏(上)

業務プロセスの改善提案を対戦形式にした「PIM対戦」に参加する関家一馬社長 =ディスコ提供
業務プロセスの改善提案を対戦形式にした「PIM対戦」に参加する関家一馬社長 =ディスコ提供

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。4人目は、リーダーシップと組織行動を研究するイーサン・バーンスタイン准教授だ。

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佐藤 バーンスタイン准教授は2018年に教材「ディスコの『個人WILL』(P-WILL at DISCO)」を出版されました。なぜ半導体製造装置メーカー、ディスコの社内改革事例に興味を持ったのですか。

ハーバードビジネススクール准教授 イーサン・バーンスタイン氏

バーンスタイン 私がディスコの事例を知ったとき、次の3つの点ですぐに興味を持ちました。まず1つめは、最高経営責任者(CEO)の関家一馬氏が「独自の経営哲学を持ったリーダー」であること。これは過去の偉大な日本人CEOと共通する特性です。2つめは、競争が激しく、景気に左右されやすい業界であるにもかかわらず、ディスコは高い市場シェアと収益率を達成し、超優良企業の地位を保ち続けていること。3つめが、優秀な人材の獲得に成功していること。ディスコは、半導体製造装置の世界では有名な会社ですが、一般的にはそれほど知られている会社ではありません。ところが優れた若者がどんどん入社し、中には大企業の内定を辞退してディスコに入る人もいます。

佐藤 まず1つめの「関家氏が独自の経営哲学を持ったリーダーである」とはどういう意味でしょうか。

先進的な仕組みつくって実験繰り返す

バーンスタイン 関家氏は、「現代の会社組織におけるマネジメントやリーダーシップはどうあるべきか」について、どこまでも深く追求してきたリーダーです。「未来の働き方」について社員に向けて語るだけではなく、実際に様々な先進的な仕組みをつくって、実験してきました。関家氏には「優秀な人々が集い、個々の能力を発揮し、他の同僚とともに成長していく。こういう会社をつくれば、必ず業績も上がる」という信念があります。彼の考え方が正しかったことは、近年のディスコの業績が証明しています。

私は、これまで数多くのグローバル企業の経営者や企業文化について研究してきましたが、いつも感銘を受けるのは、日本企業の経営者には確固たる「哲学」があることです。パナソニックの創業者、松下幸之助、オムロンの創業者、立石一真など、偉大な経営者は皆、「哲学者」でもありました。現在の日本企業には、独自の経営哲学を前面に出したリーダーはあまり見られなくなりましたが、関家氏には、かつての日本企業のカリスマ経営者を彷彿(ほうふつ)させるようなビジョンとリーダーシップがあると感じました。

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