5Gが起こす大変革 日本株の主役は通信株(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

5Gは時価総額の大きい通信株にメリットを与える。日本の時価総額上位10社のうちNTT、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIが通信株である。そしてソフトバンクグループ(SBG)の18年度の事業別利益をみると、28.9%がソフトバンク(SBGが議決権の66.5%を保有)であるため、時価総額上位10社のうち5社が広義の通信株であると言える。

熱帯びるM&A戦線

通信企業は高収益であるため、財務体質が強い。このためソフトバンク、KDDIは積極的にM&Aを仕掛けてくるだろう。通信料金引き下げの恩恵を受けるオンライン事業者を買収し、垂直統合を進める戦略を取る可能性が高いとみている。

通信料金の引き下げは政府主導で進んでいる。菅義偉官房長官が引き下げに熱意を燃やし、楽天の携帯事業参入を認めた。参入企業が4社であれば競争がさらに働き、料金が下がるという戦略である。楽天は基地局の整備が進んでいないことから本格参入が当初予定の19年10月から大幅に遅れている。これは料金引き下げ競争への懸念で18年秋以降に株価が低迷した通信大手3社にとってひとまずポジティブな材料である。ただし政府の方針を踏まえると長期的には通信料金の引き下げは不可避と思われる。業績拡大のためにM&Aは重要であり、すでにその動きは活発になっている。

最も注目されるのが、18年12月に上場を果たしたソフトバンクである。同社は19年6月、SBGの子会社であったZHDを第三者割り当てによる新株発行を通じて連結子会社化した(議決権の44.6%を保有)。そしてZHDはZOZOに対しTOB(株式公開買い付け)を実施し、50.1%の獲得を目指す。

KDDIは決済・金融事業の強化を目的に、中間金融持ち株会社であるauフィナンシャルホールディングスを設立している。じぶん銀行を連結子会社化し、カブドットコム証券に出資した。NTTドコモはNTTの子会社であるため財務戦略の自由度が低い。しかし過去に大型買収を手掛けたことがあり、M&A戦線に今後加わってくるのではないだろうか。

米中貿易摩擦、イランの核開発、英国の欧州連合(EU)離脱など世界的に地政学リスクが高まっている。米国の利下げにリスクオフが加わり、為替相場は緩やかな円高傾向が続いている。金利低下と円高というマクロ環境では通信株など高配当利回りの内需ディフェンシブ株が上昇しやすい。さらに楽天やLINEなど通信サービス向上の恩恵を受ける企業も多い。こうしたことから、20年以降の日本株市場は時価総額上位を占める通信セクターがけん引する展開になると予想している。

藤田勉
一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、シティグループ証券顧問、一橋大学大学院フィンテック研究フォーラム代表。経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、慶応義塾大学講師、シティグループ証券取締役副会長などを歴任。2010年まで日経ヴェリタスアナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。一橋大学大学院修了、博士(経営法)。1960年生まれ。
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