ウーバーイーツが生む中食ヒット カギは「自分好み」
ホットペッパーグルメ外食総研の調査では、2018年度の中食市場の規模は1兆2188億円と前年度比4.9%の伸びを記録した。成長著しい中食業界において、「ヒットの震源地」となっているのがウーバーイーツだ。ニッチだが確実に需要のある個店などが販路拡大を果たし、多くの客の心をつかんだ。
人気なのは機能的な食事をうたう店。「筋肉食堂」や、ウーバーイーツ上では「ジム飯」の名前で登録されている「BROS TOKYO」は、トレーニングやダイエットに励む人のため、低カロリー・低糖質・高タンパクのメニューに特化している。ジムとカフェを併設する同店では、ウーバーイーツ導入によって認知度が急上昇。食事目当ての客が、ジムに入会する「逆流入」パターンもあるという。
食分野にもパーソナライズの波が到来。カスタム性を高めて様々なニーズに対応する店もある。カスタムサラダ専門店の「CRISP SALAD WORKS」は、野菜だけでなく肉も組み合わせられ、男女を問わず人気。テークアウトはもちろん、ウーバーイーツやオリジナルアプリでの事前注文にも対応している。
行列のできる人気店がテークアウト専門店を出すのも、トレンドの一つだ。「ミート矢澤」の「最高級黒毛和牛100%ハンバーグ弁当」は、店を構える大丸東京のデパ地下全体で、7年連続最も売上金額が高いという。さらなる拡大を見込み、今年2店舗目を出店した。
食のバリエーションを増やし、ランチ難民を救ったのはフードトラックだ。フードトラックとビルの空きスペースなどをマッチングするMellowの共同代表・石澤正芳氏は、「店を構えるには挑戦的と思えるメニューにも臆せずチャレンジしやすい」と語る。実際に、エジプトの伝統料理コシャリを販売する「エジプトめしコシャリ屋さん」など個性豊かな店が勢ぞろい。毎日利用しても飽きが来ず、都内のオフィスワーカーたちの心をつかんだ。
●低カロリー、低糖質、高タンパクの「筋トレ飯」
「筋肉食堂」ではトレーニングやダイエットにまい進する人のため、低カロリー、低糖質、高タンパクに特化したメニューを提供する。牛リブロースステーキや鶏ささ身と卵白のホワイトオムレツなどメニューが豊富。特定の層にとっては毎日食べたい日常食のため、ウーバーイーツによって近隣のリピーター需要を掘り起こした。
●低糖質の切り売りピザ
「SONOBON」はビール小麦を使用した生地で、低糖質を実現したピザの専門店。切り売りのためテークアウトしやすいのが特徴。顧客の利便性を高めるべく、店舗はキャッシュレスにのみ対応し、ウーバーイーツも導入している。
●認知度アップでジム入会も
「BROS TOKYO」はジムとカフェが合体したフィットネスラウンジ。ウーバーイーツ導入で売り上げ、認知度が急上昇。食事目当てだったところから、ジムに入会する客もいるという。一番人気は「海南鶏飯 シンガポールチキンライス」。
●ミシュラン一ツ星店の幻の味
ミシュラン一ツ星の店の味がテークアウトで体験できると話題に。予約が取れない店として有名な焼鳥店「鳥しき」は、数は限定しつつもテークアウトで弁当を提供し、人気を集めている。
●人気店の味を弁当で体験
ミート矢澤が、自宅などでその味を楽しめるテークアウト専業店を新設。大丸東京の店ではデパ地下全体で「最高級黒毛和牛100%ハンバーグ弁当」が売り上げ1位。今年、恵比寿に2店舗目を出店。
●肉と野菜を組み合わせるサラダ
「CRISP SALAD WORKS」は30種類以上から具材を選べるカスタムチョップドサラダの専門店。健康志向が高まるなか、肉も組み合わせることができ、満足感を得られる。店ではメニューのサラダに対して、約7割が追加や変更などのカスタムするという。六本木ヒルズの店舗では、1日350食以上売れることも。
●米国発の新業態「ファストカジュアル」
「CHRONIC TACOS JAPAN」は米国で流行中のファストフードとカジュアルレストランを掛け合わせた新業態「ファストカジュアル」の店。低価格と質の高さを両立するのが特徴だ。
タコスはフルカスタマイズでオーダーでき、具材やトッピングだけでなく、生地も3種類から選べる。一番人気は鶏肉のタコス、「ポロアサドタコス」。現在は東京、大阪で3店舗を展開する。
●フードトラック発の個性派グルメ
オーナーが店を構える必要の無いフードトラックでは、とがったメニューに挑戦する店も多い。フードトラックを支援するMellowの登録店舗では、エジプトの伝統料理コシャリが人気。食の選択肢が広がっている。
右:Mellowのアプリでは、現在地付近のフードトラックや出店スケジュールを確認できる。10月からは大阪でも展開している
●2分で焼き立てのカスタムピザ
カスタムサラダ専門店を手掛けてきたクリスプが今年4月にカスタムピザの専門店もオープン。4種のソースと30種類以上のトッピングから自分好みのオーダーができる。約2分で焼き上がり、テークアウトも可能。専用箱を用意している。
●1人前の格安ミールキットが登場
ありそうで無かった1人前ミールキットを発売したベイシア。「レバニラ炒め」が298円とミールキットとしては驚異的に安いのが特徴だ。5月から神奈川県の三浦店で実験販売をスタートし、一番人気のある鮮魚のミールキットは全店で販売。1日で約1100食売れている。
(注)ホットペッパーグルメ外食総研の中食市場規模は、首都圏、関西圏、東海圏で調査。
[日経トレンディ2019年11月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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