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「プチ富裕層」とも呼ばれる若者たちは日本のどこに足を運んでいるのか

「プチ富裕層」とも呼ばれる若者たちは日本のどこに足を運んでいるのか

日本を訪れる中国人観光客は、年間1000万人の規模に膨らんでいる。その半分以上を占めるのは20~30代の若者たちだ。「プチ富裕層」とも呼ばれる若者たちは、日本のどこに足を運び、何にお金を使っているのか――。旅行ビジネスと日本文化に精通している中国人経営者が、中国の若者の消費意識と行動を丁寧に分析した。『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』からは、日本のインバウンド戦略を考えるためのヒントが幾つも浮かび上がってくる。

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袁静氏

袁静氏

著者の袁静(えん・せい)氏は上海市生まれです。北京第二外国語大学を卒業したあと早稲田大学アジア太平洋研究科に留学します。修了後は日本の出版社で約10年間働きました。母国に戻ってから中国人富裕層向けに日本の魅力を伝える雑誌『行楽』を創刊しました。現在は日本に関する旅行やライフスタイル情報などを発信している行楽ジャパンの社長として、上海と東京を往復する生活です。

中国のデジタルネーティブの動き方

多くの中国人の若者たちが「日本旅行好き」である理由を分析するために、著者は「80後」と「90後」に注目します。それぞれ「1980年代生まれ」と「1990年代生まれ」の中国での呼び方です。彼らの特徴は、デジタルネーティブだったり、上昇志向が弱かったり、海外旅行慣れしていたり、借金してまで消費したり…といった傾向が見られると言います。いずれも上の世代には全く見られない特徴です。

それでは、韓国でも、米国でも、欧州でもなく、なぜ日本なのでしょう。著者は「仏系」というキーワードに注目します。これは「草食系」の中国語版です。ただし、日本と違うのは「仏系」は男女ともに見られる傾向だという点です。経済的に豊かで、他人と競争することを好みません。そんな気質が、日本の(特に地方都市の)たたずまいに良いイメージを持つ一因になっているようです。日本旅行のファンを増やした典型的なケースとして著者はゲームアプリ「旅かえる」を取り上げます。日本製ですが、2018年に中国で大ブームとなりました。ニュースになったのを覚えている読者も多いのではないですか?

このゲームは派手なところがいっさいありません。絵はとても牧歌的で、主人公のカエルは淡々と毎日を暮らしています。そこが、「仏系」の心に刺さったのです。

 あとはカエルが旅先から絵葉書を送ってきたり、たまに帰ってきてお土産をくれたりする。それをひたすら待つだけです。最長で3日間も待つそうです。だから、何か便りは来ていないかと、平均で1日3回くらいは起動する。
 ユーザー同士でお土産を見せ合ったりはしますが、他者との競争がいっさい存在しない。そんなおだやかな世界観が、仏系の若者たちの心をつかんだわけです。小さなころから「一番になれ!」と過酷な競争を強いられてきた反動なのでしょう。
(第2章 ホトケになった若者たち 82ページ)

ゲームを続けていると日本各地の観光地がいくつも出てきます。このゲームを通じて「善光寺の五平餅」「有馬温泉の温泉まんじゅう」「天橋立の五色豆」などが中国で知られるようになったそうです。

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