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夫と限界集落に移住 新しい「幸せの物差し」の作り方

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NIKKEI STYLE

日経ARIA

「都会を卒業して、田舎でゆったり暮らしたい」――誰しも、一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。とはいえ、家族の説得、家や仕事探し、新たなご近所さんとのお付き合いなど、越えるべき数多のハードルを前に「移住は夢物語」とあきらめている人も多いはず。そこで、国内の自然あふれる地方に移り、新たな生活をスタートさせた「移住の先輩」に移住成功の極意を聞きます。

幸せになるための選択肢を、地方で耕す

―― JR中央線の石和温泉駅から、日に2本しかない路線バスに揺られて1時間の山梨県笛吹市芦川町。2013年、結婚を機にパートナーの山本真さんと、人口約400人の限界集落に移り住んだ渡辺亜紀さん。以来、土にまみれて野菜作りを楽しむ傍ら、江戸時代に建てられた古民家で農家民宿もオープンしました。「東京の真ん中で育った私が、地方で民宿まで開くまさかの展開。自分でもびっくりしてます」(亜紀さん)

大手通信会社のシンクタンクや通信系ベンチャーなどを経て、39歳で独立し、コンサルティング会社「アルマ」を設立。企業研修や組織開発コンサルティング、コーチング業などにまい進し、湾岸エリアのタワーマンションで独身生活を満喫していた亜紀さん。絵に描いたような都会派キャリア女性が「地方」に目を向けたきっかけは、先輩コンサルタントに誘われ、ある地方の地方創生事業に関わったことでした。

幸せの物差しは「東京でいい暮らし」の1本じゃない

亜紀さん 幼い頃、父の赴任先のスイスに数年住んだ以外、ずっと東京暮らし。地方に住む親戚もおらず、田舎というものがピンとこない。地方創生の仕事を通じて初めて、東京で働き、暮らす以外のライフスタイルがあることに気づきました。

当時、東京に住んでいた私が抱いていた思いは、「いい会社に勤め、お給料もいいはずなのに、不満を抱えていて幸せそうに見えない人が多いな」ということ。幸せの物差しが「東京でいい暮らしをすること」の1本きりだから、レールを外れまいと必死になる。一方で、地方は持っている魅力を発揮できず、人口流出が止まらない。私自身は、レールを外れて地方で暮らすほうが幸せになれると思いました。また、東京など都市部で暮らす人の多くが本質的には田舎暮らしに向いていて、一歩を踏み出すことさえできれば、持続可能でハッピーな地域と人が増えるんじゃないかと思いました。

―― 亜紀さんが着目したのは、富士山の北、標高700~1000メートルに広がる芦川でした。

亜紀さん 偶然読んだ山梨の地方紙で、芦川で地方創生事業に取り組む団体が発足したと知り、「コラボしませんか」と押しかけ女房よろしく申し出ました。それが2007年のことです。

住民になり、内側から村を活気づけたい

―― 芦川町は面積の9割が森林で、かつて養蚕と炭焼きが主産業だった山里。お年寄りたちは「なんにもないさよぉー」と口々に言いますが、芦川には美しい湧き水が流れる水路や、兜(かぶと)作りと呼ばれるこの地方独特の屋根の古民家が昔の姿のまま残っていました。

亜紀さん 開発の手が入らなかった分、自然が豊かで町並みも美しく、なにより人が優しい。芦川を訪れる人を増やそうと、田植えや稲刈りなどの農業体験を絡めた企業研修やワークショップを6年間続けました。ただ、年に10回ほど芦川を訪れ、コンサルタントとして外側から関わるだけではだんだん物足りなくなって。芦川に根を下ろし、私自身が田舎暮らしを楽しみながら、住民として内側から地域を活気づけたいと考えるようになりました。

―― 亜紀さんの夫・山本真さんは、山梨県清里の宿泊研修施設で、企業研修やイベントの企画運営を20年以上担当してきました。亜紀さん主宰のワークショップを真さんがサポートしたことを機に出会った2人は、3年の交際を経て、結婚を決意。新生活を芦川で送りたいとの亜紀さんの提案を、真さんも快諾しました。

真さん 現在のヒト、モノ、カネの東京への一極集中は、自然災害などのリスクマネジメント上も解消されるべき。それには地域単位で経済が循環し、人々が生活していける仕組みが必要です。以前の仕事もやりがいはありましたが、それ以上に、亜紀さんと地方創生に取り組みたいとの思いが強まりました。

結婚を決めたのは、ちょうど前職を辞めたタイミングで、正直、住むのはどこでもよかった(笑)。高齢者率65%の芦川は日本中にある限界集落の縮図。地方創生の実践を積み、ロールモデル作りを行うには適した場所だと思いました。

「空き家だらけ」なのに、口コミ頼りの物件探しは四苦八苦

―― 一見すると、集落は空き家だらけ。ところが家探しは難航しました。

亜紀さん 町に不動産屋はなく、空き家の所有者の多くが芦川を離れているため、誰に連絡すれば借りられるのか分からない。「孫が甲府に住んでいて、貸したいらしい」などの口コミが唯一の情報源で、月に1軒、内覧にこぎ着けられればいい方でした。「築70年の平屋を家賃2万円で貸してもいいという人がいる」と、聞いたのは家探し開始から半年後。「心変わりされないうちに」と、判子を持って東京から飛んでいき、3日後には賃貸契約を済ませました。

新居は土間の奥に並んだ4つの和室を縁側が取り囲む、昔ながらの田の字型の間取り。土間に竈(かまど)があるだけで、水道設備もキッチンもなく、浴室とトイレは母屋の外。下水道を敷設し、キッチン、トイレを新設する改修工事を300万円かけて行いました。

真さん 地方の人手不足は深刻で、予想外に工事に時間がかかり、入居できたのは着工から半年後の2013年12月。和室の畳をフローリングに変えるなどの工事は、住みながら自分たちで行いました。

亜紀さん もともとDIY好きな真さんは、プロ仕様の電動工具まで持っていて(笑)。工具の扱いも手慣れていて、すごいなあと感心しました。

仕事のクライアントには、時間をかけて根回し

―― 移住開始からおよそ1年間、亜紀さんは真さんが暮らす芦川の新居と、東京のマンションとを行き来する2拠点生活を送りました。

亜紀さん その間に、東京の企業研修やコンサルタント仕事のクライアントと、移住後も仕事を続けるための環境を整えました。顔を合わせずに行える打ち合わせやコーチングはビデオ通話で行い、詳細を詰める必要がある会議は、上京して行いたいと伝えて了承を得ました。また東京のマンションは賃貸に回し、家賃収入を得られるようになりました。

―― 真さんは、地方創生に携わる人材を育成する、新たな仕事を獲得。山梨県や東京など複数の大学でコミュニティデザインの授業を受け持つほか、笛吹市の職員を対象とした、地方創生や市民協働のワークショップも担当することになりました。

「土地のルール」を守ることで、人間関係もスムーズに

―― 近所の畑を借り、念願だった無農薬の野菜作りもスタート。野菜や手料理をお裾分けしたり、互いの家を気軽に行き来したりするご近所さんが増え、「スムーズに集落に溶け込めた」という2人。心掛けていたことはあったのでしょうか?

真さん その土地のルールを知り、それに合わせて行動してみることですね。例えば都会なら誰でも指定のごみ収集所にごみを捨てられますが、地方では、捨てていいのは自治会員だけということも。財源が少ない地方では、収集費用の一部が自治会費で賄われているケースも多いんです。

一見理不尽に思えるルールにも、それなりの理由があったりする。そこに目を向けず、都会の当たり前を持ち込むと、あつれきの原因になりかねません。

亜紀さん 「地方ルール」に詳しい真さんのアドバイスで、移住当初は私が東京に行くとき、車でごみを持ち帰るようにしていました。後日、仲良くなった近所のお年寄りに「勝手に捨てず、偉かったね」と言われ、ルールを知っていてよかったと思いました。

(取材・文 籏智優子、写真 佐藤正純)

[日経ARIA 2019年7月30日付の掲載記事を基に再構成]

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