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杉咲花 映画『楽園』で初めて経験した無の演技

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衝撃作『楽園』は、映画『悪人』『怒り』の原作者、吉田修一さんの短編集『犯罪小説集』(KADOKAWA)から、『青田Y字路』と『万屋善次郎』を組み合わせて作られた映画。田舎のY字路で起こった未解決の少女失踪事件、そして12年後に同じY字路に続く集落で再び起こった少女失踪事件と新たな殺人事件を軸に、村人の人生模様や心理描写を時間の経過とともに描き出す。

Y字路で起きた事件の容疑者・中村豪士(たけし)役を綾野剛さん、Y字路で消息を絶った少女の親友で原作にはない湯川紡(つむぎ)役を杉咲花さん、村八分になり、孤立を深めていく田中善次郎役を佐藤浩市さんが演じる。すべての出来事の「観察者」となる重要な役を担う杉咲花さんに、どんな気持ちで湯川紡を演じたのか、この映画に参加したからこそ得られた経験などを聞いた。

――映画『楽園』の出演依頼がきたとき、どのように思われましたか。

吉田修一さんの作品を実写化したものはすべて見ていました。憧れがあったので、作品に関わることができて素直にうれしかったです。

『楽園』は、犯罪の背景となる人間の奥深くに沈む感情を描いた重い作品ですが、うまく演じられるかという緊張感はあったものの、演じることに全く抵抗はありませんでした。そうした重くて難しい役ほど、苦しいけれど、それ以上に終わった後の達成感ややりがいを得られることを過去の作品から感じていたので、チャレンジできる機会をいただいて光栄でした。

――Y字路で愛華ちゃんという少女が消息を絶つのですが、事件直前まで一緒だった親友・湯川紡は、原作にはない役です。どのように役づくりをされましたか。

原作のないオリジナル作品で演じることもあるので、そこに対する不安はありませんでした。今回、特別な役づくりはしませんでしたが、撮影場所となるY字路の写真を事前に頂いて、毎日見るようにしました。写真を見るだけで、不思議と紡というフィルターを通している感覚になるのです。

彼女にとってのトラウマの場所だと思いながら写真を何度も見ているうちに、「行きたくないな、ここには」という感情が湧いてきました。そして、愛華ちゃんに対する「ごめんなさい」という気持ちが自然と湧いてきて、それを自分の中で大切にすることを心がけました。

実際、撮影でY字路に立ってみると、写真で見るよりずっと重たい空気感というか、逃げ出したくなるような感覚がありました。その一方で、紡にとっての故郷であり、居心地の良さも感じたりして、「居たくないのに、居たい」みたいな、すごく不思議な感覚に陥りました。

――実際に演じてみていかがでしたか。

台本を読んだとき、とても難しい役だなと思いましたが、実際に演じてみて、やっぱり今までで一番難しかったです。内容自体も漠然とした抽象的なシーンも多く、解釈を見る人に委ねる部分もあります。

今までは、事前に役を理解しようと努めて演じていたことが多かったのですが、今回は頭で理解できても、現場に出向いていざ俳優さんと向き合って本番を迎えると、頭が真っ白になるんです。感情が消えてしまったのかと思うぐらい、悔しくなるとか、悲しくなるとか、怒りがこみ上げてくるとか、そんな感情レベルをさらに超えてしまって「無」になってしまったという瞬間がすごく多くて。そんな自分が怖かったし、不安でした。毎日撮影が終わる度に「これでよかったのかな」と思っていました。

家で考えても考えても分からないのでどうしようと思った時、紡がつぶやく「分からなくたっていい」というセリフを思い出しました。「ああ、全然分からないけど、1回このまま現場に行ってみよう」と思いました。分からないまま演技することに挑戦してみようと。

――挑戦してみてどうでしたか?

こんな風にできるんだと思いました。今まではちゃんと理解しないとダメだという意識がありましたが、分からないことはダメじゃないんだと。分からないからこそ見えてくるものがあったり、逆に自信になったりするものなんだなと。その点は、すごく勉強になりましたし、『楽園』の撮影が終わってから、他の撮影現場にも行くことが少しラクになりました。

――映画『64-ロクヨン-』などの作品を撮られた瀬々敬久監督とは初のお仕事でしたが、監督とのコミュニケーションで印象に残っていることは?

打ち上げで監督に「私、どうでしたか?」と聞いてみたんです。大丈夫だったかなという不安と、素直に気になってしまって。そしたら監督は「どうだったかではなく、もう撮ってしまったものは仕方ないんですよ」とおっしゃって。私、すごく落ち込んで「ああ、ダメだったんだな」と思ったのですが、後でよくよく考えた時に、確かにもう元には戻れないなと。

そして、私はそうやって人に自分の評価を確認することで、安心感を覚えていた部分が多かったなと気づきました。お仕事をご一緒した方と、また一緒に仕事したいという気持ちがあるからこそ、嫌われたくないという思いがどこかにあったんだなと思いましたし、そう思う自分もずっと嫌だったんです。

「確かに仕方がない」と思えるようになったので、今は自分の評価を人に聞くことはやめるようにしました。たとえ監督や共演者にどう見られようとも、どの現場でも最初で最後の演技だから自分が納得できることを精いっぱいしなきゃという風に思うようになりました。そう思うことでちょっとラクになったんです。それは瀬々監督のおかげだと思います。

――重くて難しい役ほどやりがいがあるとおっしゃっていましたが、役に入り込んでしまうと、私生活にも役を引きずることがあるのでは?

今まではすごく引きずってしまって、自分自身が苦しくなることがありました。私生活でも現場での気持ちを持ち続けることができるからこそ、より役に近づけると思っていましたし、オンとオフの切り替えがないから現場に入った時に、すっと役に入り込めるとも思ったりしました。

でも私生活に役を引きずってしまうとやはり肉体的・精神的な負担は大きく、「これでいいのかな?」と疑問に思うことが多くなってきたのも確かです。そこで今回はオンとオフを切り替えることを意識しました。撮影がない日は日常を楽しむことを心がけて、東京に戻って友達と遊んだりしました。でもふと、「こんなに苦しい役を演じているのに、こんなに楽しくていいのかな」と思うこともあったりして……。「これでいいんだ」と自分に言い聞かせていました。

――葛藤していた。

そうですね。役を演じるということは、自分自身の体を通して体験することになる。だから思い出すだけでも苦しくなるんです、今でも。できれば思い出したくないくらいの、自分の中でのトラウマになってしまったような気がします。

撮影が終わった後、記憶が飛んだというと大げさですが、撮影していたときのことを全然思い出せなくなって……。試写を見た時に、撮影中の情景や紡の感情が一気によみがえってきて、ものすごく落ち込みました。でもそれは、役に没頭していたあの撮影期間が、自分がきちんと生きていた嘘のない時間になっていたからなのだと思います。

――「楽園」という、原作にはないタイトルについてどう思われましたか。

あまり意味は考えませんでしたが、純粋にとてもいいタイトルだなと思いました。映画はすごく重たい話ですが、そんな中での紡にとっての「楽園」を、映画が終わるまでずっと探していた気がします。

それを探せる気力があるからこそ、明日が来ることをちゃんと受け入れられているのかなという思いも湧いて。だからすごくいいタイトルだなと思いました。

――共演者のみなさんの印象に残っていることは?

綾野剛さんが2回ほどご飯に連れていってくださったり、誕生日にサプライズで祝ってくださったりしました。2個もプレゼントを用意してくださって、「どっちが好きか選んでほしいんだよね」と。どちらもすてきで選べないでいたら、「どっちも似合うと思って選べなかったから買ったけど、両方ともすてきだと言ってくれるならどっちもプレゼントする」といってくださってとてもすてきだと思いましたし、うれしかったです。

佐藤浩市さんとは映画『愛を積むひと』でご一緒させていただいて、今回は多くはお話しできなかったのですが、すごく優しい大先輩で共演できてうれしかったです。試写を見たときに、一つのきっかけで、人はここまで変わってしまうのかというリアルに変貌する演技を目にして怖かったですし、それを演じきられたのはさすがだと思いました。

私自身、紡目線で見てしまっていたので、善次郎さんをものすごく近い存在として感じ、こうなる前に誰かが救ってあげることはできなかったのかなと思ってしまいました。

村上虹郎くんとご一緒させていただいた時は、なんだか体が楽でした。紡にとっての唯一の希望というか、光みたいな存在なので。この人と一緒にいれば大丈夫な気がするという思いが湧いていました。

黒沢あすかさんもずっと大好きな女優さんだったのでご一緒できてうれしかったです。異国の人を感じさせる雰囲気や、触れたらどうなるか分からないような演技に、とても引き込まれました。

――撮影の合間の楽しみは?

長野の撮影で早く終わった時は、必ずおそばを食べに行くことが本当に楽しみでした。おそばを食べている時だけは、「ああ、長野楽しいなあ」って(笑)。すごくおいしいおそば屋さんを見つけて、そのお店ばかり通っていましたね。

――おいしいものを食べることがストレス解消に?

そうですね。それと、パーっと発散したい時は、なんとなく買い物に出かけるとかでしょうか。周りの女の子とあまり変わらないと思います(笑)。

――20代が始まったばかりですが、20代のうちにやっておきたいことはありますか?

スペイン旅行に行きたいです。まだ行ったことがなくて。白ワインを飲みながら、現地の生ハムやパエリアなどを食べたいです(笑)。

――お仕事で大切にされていることがあれば、教えてください。

自分を信じることです。演じるために必ず悩むし、迷います。でも、先ほどもお話ししましたが、分からないことは決してダメなことではない。分からない中で挑むには、やっぱり自分を信じる強い気持ちが大事だと思います。

『楽園』
監督・脚本:瀬々敬久
原作:吉田修一「犯罪小説集」(角川文庫刊)
出演:綾野 剛 杉咲 花 佐藤浩市
柄本 明 村上虹郎 片岡礼子 黒沢あすか 石橋静河 根岸季衣
主題歌:上白石萌音「一縷(いちる)」(ユニバーサルJ)
作詞・作曲・プロデュース:野田洋次郎
配給:KADOKAWA
10月18日(金)全国ロードショー

【ストーリー】
青田に囲まれたY字路――。ある夏の日、少女失踪事件が起こった。未解決のまま、住民の胸には罪悪感だけがしこりのように残り、事件直前まで被害者と一緒にいた紡(杉咲 花)は心に深い傷を負った。それから12年後――、再びそこで2つの悲劇が起こる。少女が行方不明となり、町営住宅で暮らす豪士(綾野 剛)が容疑者として疑われた。追い詰められ、街へと逃れるが、そこで豪士は驚愕(きょうがく)の行動に出るのだった。一方、Y字路に続く集落で、愛犬と暮らす養蜂家の善次郎(佐藤浩市)は、村おこしの事業を進めていたが、話のこじれから村中の非難を受け、村八分状態に。善次郎は狂気に陥り、恐るべき事件へと発展する。被害者の親友だった少女、容疑者の青年、そして限界集落で暮らす男。なぜ人は罪を犯すのか? なぜ自分だけ生き残ってしまったのか? それぞれの人生が交錯するとき、物語は衝撃のラストへと導かれる。

(取材・文 高島三幸、写真 厚地健太郎)

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