ポルシェ911カレラ4S いつもの「顔」で最先端追求

2019/10/20
先代モデル991型の正常進化ともいえるエクステリアデザインだが、収納式のドアハンドルを採用するなど、空力面でもブラッシュアップ。空気抵抗係数は0.29と発表されている

エンジンフード上のルーバーは従来の991型同様の縦型モチーフを踏襲しながらも、センター部分に短いハイマウントストップランプを新たにビルトイン。さらに、LEDストリップバーを経由しての左右の一体感とスリムさがより強調されたリアコンビネーションランプも、992型ならではの走り去る姿を印象づける見どころになっていると思う。

サイドビューでは“新旧識別”のハードルはより高くなるが、そうした中での992型の最も特徴的なポイントは、ドアハンドルがリトラクタブル式になったこと。ただし、端的に言ってその操作性は、オーソドックスなグリップバー方式だった991型に対して見劣りする感が否めない。特に、格納状態のハンドルを引き上げようとした場合、爪の長い女性から大きな不満の声が上がることは避けられそうにないという仕上がりだ。

立体的なエンブレムが取り付けられた新型「911」のリアビュー。左右テールライトをスプリットライトで結ぶというデザインは、「カイエン」や「パナメーラ」でも用いられている手法。可動式リアスポイラーは、これらテールランプユニットの上部に位置している
前20インチ、後ろ21インチのホイールを収めるため、前後フェンダ―とも開口部は先代モデルよりも大きい。サイドから見ると、フェンダー上部が極端に薄くデザインされていることが分かる

大きく変わったインテリア

かくして、「いずれにしても想定内」というエクステリアデザインの変わりように比べれば、より端的に“フルモデルチェンジ”を実感させられるのがインテリアのデザイン。従来の991型で採用されていたセンターコンソールの延長線上に置かれたセンターパネルが姿を消した992型のダッシュボードは、上下に薄くなり、水平基調がより強められた造形だ。空冷時代のモデルを知る人には、大きな時間を隔てた両者のデザインに、一脈通じる雰囲気を実感できそうな仕上がりでもある。

一方、そんなデザイン変更の影響で機能性が低下してしまったのが空調。これまで、ダッシュボード最上段の“特等席”に位置していたセンターの吹き出し口が、992型ではセンターコンソール最前部の低いポジションへと移動された。結果、吹き出し口の向きが限られ乗員の顔面まわりにフレッシュエアが大量に送られなくなってしまったのは、個人的には大いに残念と感じられたポイントでもある。

最新のインフォテインメントシステムを組み込んだインストゥルメントパネル。ダッシュボードは往年の930型をイメージさせる水平基調デザインを採用したという
センターのエンジン回転計のみ機械式で、左右には7インチの液晶ディスプレイを配置。伝統の5連メーター風のデザインはもちろんのこと、ステアリングに備わるスイッチで写真のようにナビ画面にも切り替えられる

インターネットへの接続も含めたマルチメディアシステムが一気に進化したのは、このタイミングでのフルモデルチェンジとあれば当然ではあるし、いわゆるADAS関係の機能に関してもそれはもちろん同様。ただし、その多彩な機能の中には「これは本当に911というモデルに必要なのか?」と思えるものも少なからず存在することになったし、それらを使いこなそうとすればあらかじめ操作方法の習熟や、これまで以上に煩雑なスイッチ操作が必要となってしまうというのは看過できないポイントだ。

率直なところ、世界屈指のスポーツカーであり当然生粋のドライバーズカーでもある911というモデルには、その取捨選択も含めてさらなる機能の吟味が必要であるようにも思う。例えば、明らかに使い勝手が低下し、かつ重量的にもプラスαが避けられないであろう前出リトラクタブル式のドアハンドルなどは、数あるポルシェの作品の中にあっても少なくとも911というモデルには、あまりお似合いとは思えなかった。もっとも、こうしたギミックを採用するに至っていることは、すなわち911がピュアな走りのモデルから「スーパースポーツカー的な方向」へと向かうスピードを加速させている証しといえるのかもしれない。

やはり6気筒のサウンドは格別

日本初上陸となり、今回テストドライブを行うことができた992型の911は、「カレラ4S」のグレードにアクティブスタビライザー「ポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)」やリアアクスルステアリングといった走りのアイテムや、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストといった先進運転支援システムなどをオプション装着したモデル。

ちなみに、日本導入モデルは右ハンドル仕様のみの設定だが、実際そのドライバーズシートへと収まってみればポジションの違和感は皆無で、もはや左側通行国であるこの国で、あえて「不便で危ない左ハンドル仕様」を選択するメリットはゼロというのが現実。一方、トランスミッションは現状8段DCT(PDK)仕様のみの生産とされているが、こちらはこの先MT仕様の登場が否定されているわけではない。

そんなテスト車で走り始め「やっぱり911は良いナ」とまず感心させられたのは、何とも印象的な出来栄えの動力性能。単にエンジンが低回転域からパワフルであるとか、高回転域までストレスなく回るといった内容にはとどまらない。アクセルのわずかな操作に即応してスッとためらいなく前に押し出される“ツキ”の良い感覚や、良い意味でターボ付きエンジンらしさを意識させないリニアリティーの高さなどが、何ともいえない心地よさを演出してくれているのだ。

高速域での直進安定性の良さは、4WDの「カレラ4S」ならではといった印象。キックダウンによって加速態勢に入ると、フラット6は魅力的なサウンドを奏でる。参考までに後輪駆動の「カレラS」との重量差は50kgとなる
リアに搭載される3リッター水平対向6気筒ターボエンジンは、先代比30PSアップの最高出力450PS、最大トルク530N・mを発生。8段DCT(PDK)と組み合わされる

その上で、こうした好印象に拍車を掛けていたのが、今回もしっかり健在なサウンドであったことも間違いない。ターボ化とともに4気筒化も図られた「ボクスター/ケイマン」からは無残にも失われてしまった“フラット6サウンド”だが、911の場合はターボ化が図られても魅力的な音色がキープされていることは、すでに991型で確認済み。そんな魅惑のサウンドは、従来ユニットをベースにしながらピエゾ式インジェクターの新採用やターボチャージャー本体を含む吸排気系の変更などのリファインが伝えられる新エンジンになっても、変わらず楽しむことができるのだ。

ちなみにその音色は、スペインで行われた国際試乗会に用意されていたテスト車のものよりも、心なしか明瞭度が高まっていたようにも感じられた。あるいは、欧州仕様のみで日本仕様には装着されないというガソリンエンジン用の微粒子フィルターの有無による“好影響”もあったのかもしれない。

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