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テレビ局で出世する人材とは。画像はイメージ=PIXTA

テレビ局で出世する人材とは。画像はイメージ=PIXTA

出世はそもそも「社内で偉くなる」という意味ではない。人気番組をいくつも手掛けた元TBSの腕利きプロデューサーで、『出世のススメ』(日本実業出版社)を書いた角田陽一郎氏は「令和の時代にふさわしい出世を考えてみたかった」という。もっと主体的でしなやかな働き方を提案する角田流の出世考を聞いた。

「出世」の語源には「悟り」の意味も

当たり前の言葉になってはいるものの、もとをただせば出世は仏教に由来する言葉だ。本来は「出世間」と書く。ここでいう世間とは、煩悩に満ちた俗世間を指す。そこから出る(=超越する)のが出世であり、悟りを得ることを意味する。さらに、仏教の世界に入ることも出世と呼ぶ。つまり「勤め先でポジションを上げるという意味はなかった」(角田氏)。

では、なぜ今のような「高い地位や役職に就く」という意味が生まれたのか。はっきりしたいわれは不明だが、公家の子弟が出家した後、仏教界で割と早く昇進したケースが多かったことが俗用の背景になったという説がある。「フレーム(=枠組み)から抜け出すというもともとの意味に立ち返ると、現代に応用が利く」と、角田氏はみる。

終身雇用や年功序列などの枠組みが崩れつつある。同じ会社で勤めあげるというフレームから抜け出すのは、転職や起業・独立につながる。角田氏自身もこの意味での「出世」の経験者だ。22年間にわたって勤めたTBSを2016年12月に退社した。在局中は「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」など多くのバラエティー番組を手掛けた敏腕プロデューサーだ。

副題は「『中の人』から『外の人』へ」という。「外の人になって約1000日の節目として書いた」(角田氏)。約3年間で見えてきた会社との関係性や働き方の選択肢などについての思いをまとめた。「会社の中だけで偉くなっても、勤め先自体がへたってしまえば出世(=昇進)の意味が失われる。令和の出世は会社の中での昇進だけを意味しない」と、フレームから抜け出す出世の意義を説く。

ただ、むやみに転職・起業に誘っているわけではない。むしろ「会社の中で面白いことができる環境であれば、辞めないほうがいい」と、自らの経験を踏まえて、熟考を促す。もっとも、「倒れかけているビルの内部で階段を上っても、先が見えている。自分の能力にとって最適な居場所を選ばないと、結果的に機会損失が起きやすくなる」と、自分が属するフレームの再検討を勧める。

「失敗しても面白い」という気持ち

現在はフリーの立場だ。しかし、「必ずしもフリーはフリーじゃない」という。一緒にプロジェクトを組む相手先が慎重派の企業であれば、「前例がない」「社内の反対」などの理由でブレーキがかかることが珍しくない。自前の資金ですべてまかなうのでもなければ、非フリーの取引先と折り合いを付けながら進めるしかなくなる。「辞める前には知り得なかったフリーの現実」だが、それすら面白がるかのようにいくつものプロジェクトを動かしている。

TBS時代は「失敗しても面白い」という気持ちで、あえてチャレンジを繰り返した。「思い切って取り組めば、失敗しても企画を1本成り立たせることができる。でも、生半可はだめ。『Life is 実験』ぐらいの覚悟で臨めば失敗からも成果を得られる」というのが、角田氏の得た方法論だ。ヒット企画になった「ご長寿早押しクイズ」のように、チームから集まった、振り切れたアイデアから生まれた成功例は多いという。

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