発見、古代サメの全身化石 異形の深海魚と重なる姿

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/10/21
新たに発見された化石から、フェボダスという古代のサメは現代のサメであるラブカと同様、ウナギのような体を持っていたことがわかった。写真はポルトガル沖で撮影されたラブカ(PHOTOGRAPH BY PAULO OLIVERIA, ALAMY STOCK PHOTO)
ナショナルジオグラフィック日本版

サメの歯は世界中で最もよく見つかる化石の一つだ。しかし、軟骨魚類であるサメの骨格は、めったに出てこない。かつて栄華を極めたにもかかわらず、初期のサメの多くは外見すらわかっていないのだ。

そんな古代サメの複数の頭骨とほぼ完全な骨格が、モロッコ東部の山地で発見された。2019年10月2日付けで学術誌「英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された論文によると、今回見つかった古代サメ化石は、フェボダス(Phoebodus)属の2種のものという。

フェボダス属については3本の歯が知られている程度で、これまでほとんどわかっていなかった。今回の化石から、このサメがウナギのような体と長い鼻先を持っていたことがわかった。現在も深海を泳いでいるラブカとそっくりだった可能性が高い。

フェボダス属とラブカ属は遠い仲間にすぎないが、両者は歯もよく似ており、摂食の方法も似ていた可能性がある。

研究に参加したスイス、チューリッヒ大学のクリスチャン・クルッグ氏は「現代のサメの多くはのこぎり状の歯を持ち、獲物を細かく刻んでからのみ込みます」と話す。一方、フェボダスとラブカの歯は円すい形で、内側を向いているため、獲物を捕らえて丸のみすることしかできない。

獲物が横からやって来ても

フェボダスの化石が発見されたのは、3億7000万~3億6000万年前のデボン紀後期とされる地層。当時、一帯は浅い海盆だった。水があまり循環せず、酸素濃度も低かったため、死んだサメは腐食せず、長期にわたって保存されたのだろう。

モロッコで発見された古代のサメ、フェボダス属の化石(IMAGE BY LINDA FREY AND CHRISTIAN KLUG, PALÄONTOLOGISCHES INSTITUT UND MUSEUM, UNIVERSITY OF ZURICH)

クルッグ氏らはCTスキャンを用いることで、デボン紀後期の原始的なサメがどのような外見だったかを解明しようと試みた。

CTスキャンによる調査の結果、ラブカとの顕著な類似点がいくつか見つかった。体形だけでなく歯もよく似ており、古代の捕食者たちの狩りについて手掛かりを与えてくれている。

現代のサメに詳しいデイビッド・エバート氏は「ラブカは特殊化した捕食者で、瞬時に突進する能力に長けています」と説明する。エバート氏は太平洋サメ研究センターに所属し、数十年前からラブカを研究している。「内側に向いた歯も、捕まえた獲物を一方向、つまり、のどの奥に導く助けになっています」

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