人物記事は男性8割 ウィキペディアの男女格差なくせ

2019/10/15
記事を執筆、編集する参加者(9月29日、東京都港区のスウェーデン大使館)
記事を執筆、編集する参加者(9月29日、東京都港区のスウェーデン大使館)

オンライン百科事典「ウィキペディア」で女性に関する記事を増やすことを目指す日本初のイベント「Wikigap(ウィキギャップ)」が9月29日、都内のスウェーデン大使館で開かれた。参加者は1日がかりで女性の著名人に光を当てた記事を執筆・編集し公開した。インターネット上に存在するジェンダーギャップ(男女格差)をなくそうとする試みを追った。

ウィキペディアは世界で5番目にアクセスが多いインターネットサイトといわれる。無料で閲覧でき、アカウントを作れば誰でもページの作成・編集ができる点が特徴だ。

運営するウィキメディア財団によると、全世界のウィキペディアの人物記事は男性が8割を占め、女性は2割にとどまるという。日本版のウィキペディアで女性の記事が占める割合は全体の22.3%だ。執筆者も90%が男性と推定されている。

記事を編集する「ウィキペディアン」には、中立的な観点で書くことや資料による検証可能性などが求められる。一方で記事を書く人のアカウントは匿名性を持たせることが可能だ。どのような人が書いた記事なのか、記事の内容や男女別の記事数に偏りがあるかどうかは普段、読者から意識されにくい。

ウィキギャップは「インターネットの男女格差を埋めよう」とのスローガンで、ウィキメディア・スウェーデンとスウェーデン外務省などが始めた活動だ。様々な分野で活躍する女性やジェンダーに関する記事を充実させる目的で、すでに世界約60カ国で開催され、30カ国語で3万2千本の記事が編集された。

「ウィキペディアが本や百科事典に代わる時代に、誰が社会の中で目に見えやすくなっているかに注意を払うべきだ」。ヘーグベリ駐日スウェーデン大使はオンライン上で女性に関する情報を充実させる必要性を訴えた。国連事務次長で軍縮担当上級代表を務める中満泉氏は「世界における変革に光を当てる運動であり、多くの女性を勇気づけることになる」と応援のビデオメッセージを寄せた。

スウェーデン大使館には当日、20~60代の女性を中心に約40人の参加者が集まった。紫色の生地に白字で「WIKIGAP」と書かれたおそろいのTシャツを身につけ、執筆したい人物に関する資料を読みながらパソコンで記事を作成する。一から記事を書くだけでなく、英語など他言語で書かれた記事を日本語に翻訳したり、既にある項目を編集したりする。

取り上げるのはそれぞれの専門分野や職業、関心に基づき、女性の芸術家や社会活動家、エンジニアなど幅広い人物だ。ウィキペディアンらの指導を受けながら、1日がかりで記事を仕上げた。