コマツのダントツ経営に死角あり ハーバードの視点ハーバードビジネススクール教授 ウィリー・シー氏(下)

90年代から2000年代前半にかけて、世界の半導体市場をリードしていたのは、東芝、NEC、日立製作所、三菱電機、沖電気などの日本企業でした。ところが現在、生き残っているのはルネサスエレクトロニクスのみ。三菱電機、日立、NECの半導体事業を統合した企業です。ルネサスエレクトロニクスは、マイコン(MCU)の分野に注力していますが、各社の半導体部門の生存のために統合したという印象がぬぐえません。新しいアイデアを生み出し、成長するための統合であるといえる合理的な理由が見つからないのです。

佐藤 今後、コマツが直面する課題は何ですか。

中国メーカーの価格戦略が脅威に

シー コマツはデータ収集の価値に目をつけたのが早かったため、データ活用に関する知識や技術が蓄積され、この分野で他社を大きくリードしています。ところが現在、建設機械メーカーに限らず、どの企業も製品にIoTやセンサーをつけて、ビッグデータを集めることに注力しています。他分野の企業との競争も激しくなる中、その優位性が保てるかどうか、今後は課題となってくるでしょう。

特にコマツにとって脅威となるのは、中国のメーカーがIT関連の付属品を無料で提供していることです。たとえば今、ジーリー(吉利汽車)で自動車を買うと、WiFi機能が無料でついてきます。中国の消費者は「IT機能をつけるので追加料金を支払ってください」といわれても「なぜ?」となってしまうのです。

遅かれ早かれ、中国の建設機械メーカーもIT機能を無料でつけた製品を提供してくるでしょう。これはコマツに大きな問題をもたらすと思います。

佐藤 コマツが競合優位性を保っていくにはどうしたらよいのでしょうか。

シー 競合優位性は永遠に保てるものではありません。優れた製品を開発し、それがヒットしても、すぐに他のメーカーが似たような製品を製造し、価格競争になります。特許が切れたり、競合が類似技術を開発したりすると、製品のコモディティー化が進むのが自然の流れです。

これはコマツだけではなく、すべての企業にあてはまることですが、競合優位性を保つには、イノベーションを起こし続けるしかありません。それはコマツのダントツ経営の真髄でもあります。長期的な視野でイノベーションに投資し、ダントツ商品を開発し続けることこそが、コマツのさらなる成長につながると思います。

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ウィリー・シー Willy Shih
ハーバードビジネススクール教授。専門はマネジメント。特に製造業と製品開発について研究。同校にて人気講座「成功する企業の設立と持続」を教える。IBM、イーストマン・コダックなどを経て、現職。トヨタ自動車、コマツなど、日本企業に関する教材を多数執筆。2009年にハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表した論文「競争力の処方箋」は、マッキンゼー賞を受賞した。主な著書に「Producing Prosperity - Why America Needs a Manufacturing Renaissance」(共著、Harvard Business Review Press)

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