AIはトヨタウェイを学べない ハーバード大の視線ハーバードビジネススクール教授 ウィリー・シー氏(上)

佐藤 AIはトヨタの従業員の代替になりうるでしょうか。

AIは「従業員の能力を強めるための新しいツール」

シー それは「AIはトヨタウェイを学べるか」という質問と同じですね。そういう極端な議論でAIを考えるべきではないと思います。トヨタはAIを「従業員の能力を強めるための新しいツール」として、活用しているのです。その主な目的は、品質検査の精度の向上や欠陥率の改善などです。

家電業界でもAIの導入が進んでいるのは、品質検査の分野です。今、家電製品の中の部品と部品の間のピッチは、どんどん狭くなっています。特に半導体の部品と部品の間のピッチは狭く、はんだボールの配列やコネクションの品質などを通常の目視で完璧に検査することなど不可能です。こうした極小の部分の検査には自動光学検査装置が使われていますが、ここにAIが活用されているのです。機械学習ができる環境において、AIは人間以上の能力を発揮します。

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。日本ユニシス社外取締役。

佐藤 アメリカでは特にどのような分野でAIの導入が進んでいるのでしょうか。

シー アメリカでAI革命が起こっているのは、機械学習とディープラーニングの分野、つまり、データが関わる分野です。AIの導入には主に2つの目的があります。1つは、製品の品質を検査するため、そしてもう1つは、複雑なシステムの動作を理解し、パフォーマンスをモニターするためです。

これは私独自の見方ですが、「データを収集して分析する」という発想は、1960年代~70年代のIBMやDECの製品に由来すると思います。これが現在のAIへとつながっているのです。

当時、IBMとDECのコンピューターシステムは複雑になっていくばかりで、人間の力では十分な動作確認ができなくなっていました。そこでコンピューターシステムの各部分が、どのように動いているかを正確に理解するために、パフォーマンスデータを収集するための装置をコンピューターの内部に実装することにしました。これを「内部計装(Internal Instrumentation)」といいます。

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日本人はAIを恐れすぎ?
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