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王侯貴族が愛したジビエ 美味と美容効果で女子が支持

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ぜいたくで高価な食事の代名詞でもあったジビエだが、田畑を荒らす野生鳥獣対策として捕獲され、食品として流通するようになったことで身近になってきた。安定供給と衛生的な取り扱いで安全性にも注意が向けられている。これが、意外にもクールジャパンのコンテンツの一つにもなりそうだ。

昨年1月、ファストフード店の「ロッテリア」が「ジビエ鹿肉バーガー(BBQ&チーズソース)」(720円・税別)を銀座など限定店舗で1~3月の期間限定で売り出したところ、1月末で売り切ってしまったという。もともと、同チェーンは同業他チェーンに比べてブランドの打ち出し方や社会貢献の表現の仕方が弱いと認識し、この商品に賭けたとのことだが、蓋を開けてみれば狙った若い女性客に受けて、あっという間の品切れ状態になったという。

ことほどさように、鹿肉が「ジビエ」として話題になることが多くなってきた。

筆者が鹿肉の料理を初めて食べたのは10年ほど前。正確にはエゾシカで、函館市の友人が経営しているレストランでその日のお薦めメニューに見つけて注文した。ローストしてベリー系のソースを合わせた一皿。脂肪のない赤身肉だが、柔らかく、肉の味はしっかり。しかも特に癖はないことに感心した。思い出すたび、あれがまた食べたいななどと思ってしまう。

四半世紀ほど前のことになるが、筆者はかつて料理書や飲食店の経営に関する書籍や雑誌を発行する出版社に在籍していた。バブルの熱冷めやらぬ1990年代前半のことだが、プロの料理人向けの雑誌の編集をしている同僚の机に「ジビエ」という見慣れない単語が見出しに躍る記事のゲラ(印刷所から来る試し刷り)を見つけた。

それを読んで、フランス料理の用語として、狩猟で得た野生の鳥獣の肉をジビエというのだと知った。記事はヨーロッパから輸入される各種のジビエの写真と説明という構成で、カタログのようになっていた。それに載っていたのは哺乳類は少なく、ハトなど鳥類が多かったが、どれもけっこう高価なものだという印象が強く残っている。

そもそも狩猟で獲得したものを料理とするのだから、ジビエの料理は歴史的には狩猟をする領地を持っている王侯貴族のものであり、ぜいたくな食事の印象が強いようだ。辻調グループ辻静雄料理教育研究所編著の『フランス料理ハンドブック』(柴田書店)で調べてみると、ジビエを使った料理の料理名には「グラン・ヴヌール」(狩猟頭)、「ディアナ」(狩猟の女神)、「サン=テュベール」(狩猟の守護聖人)など、狩にちなんだ名が付けられるとあるが、名前からしてありがたみがみなぎっているようだ。

そのような王侯貴族の食べ物(?)を、あのときは一皿千円台で食べることができて(友人の手心はない。上代のままである)、それはちょっとした驚きだった。

また同じ頃、同市の別な複数のレストランで、エゾシカのラグーが提供されている店、カレーが提供されている店を見つけて、それぞれ食べたことがある。鹿肉料理としては、ほかにテリーヌ(パテドカンパーニュ)なども定番らしい。

それにしても、今、これほどジビエ料理がはやるのはなぜか。調べてみると、いろいろな要因があることが分かった。1つには、とにかくうまいといこと。ただ、ジビエ肉については、食肉関連の学会でもおいしさに関する論文は圧倒的に少なく検証は難しいのだが、日本獣医生命科学大学で、シカやイノシシの骨からとったスープにイノシン酸やグルタミン酸が豊富に含まれているとの実験論文が報告されていた。そのスープには苦みや辛みは一切含まれておらず、「うまい」と太鼓判を押せる内容である。

また、8月に出席した日本フードサービス協会(JF)主催の「全国ジビエフェア説明会」で、長野県のオーベルジュ・エスポワールの藤木徳彦オーナーシェフ(日本ジビエ振興協会の代表理事)に「ジビエはくさい。だから強い赤ワインを使ったソースで流すーーというのは昔の話。今は、適切に衛生処理すれば無味無臭」と教えてもらった。加えて「鹿肉のしゃぶしゃぶは、沸騰した湯に入れないこと。鹿肉は脂身が少ないので、ぎゅっと縮んで硬くなる。水からゆでるのがおいしさのポイント。真空低温調理法で90℃以下で肉を加熱すると、しっとりジューシーな仕上がりになります」とも。

2つには、良質なたんぱく質、脂身の少ない赤身肉という栄養面のメリット。これはある程度知られていて、美容を気にする若い女性に圧倒的な支持を得ている。

3つ目は法律だ。鳥獣被害防止特措法という法律が2007年に成立し、野生鳥獣対策が予算や人材面などで支援されるようになった。以降、イノシシやシカなどの捕獲頭数が全国的に増えている。たとえばシカ(エゾシカを含む)の捕獲頭数は2000年には14万頭だったが、同法成立の07年には20万頭を超えた。それから10年の17年には61万頭と、2000年と比べると4倍増となっている。

安全・衛生についての管理も進んだ。まず、駆除だけでなく食品としての利用も目的となった段階で、異物混入の元となる散弾銃による猟から罠猟にシフトする動きが起こった。加えて、と畜と食肉の処理を行う環境や方法も変わってきている。もともと、と畜場法という法律では、牛、馬、豚、めん羊及びヤギは、この法律で定めると畜場でと畜・解体しなければならないということになっていて、安全と衛生を確保するようになっていたが、それ以外の動物は対象外だったため、伝統的には狩猟で捕獲した動物を野外で処理するといったことは行われていた。

しかし、14年に厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を示し、都道府県に対してもガイドラインを策定するか、厚労省ガイドラインを採用するように促しており、それぞれの現場もこれに従うようになっている。これも、レストランでの利用を広げることにつながっているだろう。

さらに昨年3月、捕獲から搬送・処理加工、販売がしっかりとつながった「ジビエ利用モデル地区」を全国から17地区を選定するに至った。同時に、「国産ジビエ認証制度」がスタートし、今年10月現在8施設が認証を受けており、2施設が審査中である。認証は、ガイドライン以上に厳しい内容という。例えば金属探知機を通すことはガイドラインでは指示されていない。

2年前、茨城で素人が捕獲したクマを持ち込んだレストランで集団食中毒が発生した。自然でも危ないのである。いや、自然だから危ない。自然界にいるクマ、シカ、イノシシなどは寄生虫、E型肝炎による健康被害をもたらす。なので、処理施設を通すのが必須である。入手の際には、処理の場所と手順なども確認したい。

では次なる課題は何か。友人の一人は鹿肉料理を扱おうとしたところ、話がスムーズに運ばないという。全体としては捕獲量は増えているものの、ピンポイントでは物がそろうかどうかがおぼつかない。そこはさすがに計画的に営まれている畜産業とは違う、いわばジビエのジビエたる面でもあるのだろうなと思っていた。

ところが、安定供給を売りにしている会社の話を聞くことができた。「ぎふジビエ」の名称で鹿肉をはじめとする野生鳥獣の肉を扱うキサラエフアールカンパニーズ(岐阜県揖斐川町、所千加社長)は、本拠地の揖斐川町に限らず、広く岐阜県全域に捕獲者のネットワークを持ち、レストランなどから注文があったときにいつも対応できるように努めているという。

商品として扱う以上、取り組みの初期の段階から専用の処理場を整備し、現在はぎふジビエ衛生ガイドラインに沿って管理するなど、安全と衛生にも気を配っている。衛生と味などの品質を追求するには、設備だけでなく、捕獲から運搬、処理までをスムーズに行うための迅速な情報の連携も大切だという。

国内外の食品の見本市にも積極的に出展しており、筆者が初めて同社を知ったのも展示会場でだった。そのときの展示はソーセージ、レトルトのラグーやカレーがメインだったので加工品主体かと尋ねたが、そうではないという。

「レストラン向けの正肉の扱いを主力に考えている。ただ、レストランの食材に向かない部位もあるため、加工品もそろえて全体を無駄なく完全に使い切るようにしている」(所社長)ということだった。

レストランでシェフたちが腕を振るうのにベストな正肉部分を確保する。また、シェフが作りたい料理に合わせて、どの部位がよいかのアドバイスもする。一方、肉として硬い部位がある。また、罠が当たった部位は色が悪くなるのでそのままでは使えない。どのような部位をどのように活用できるか、試行錯誤を重ねながら、利用の形を広げてきた。加工品はワインショップでも人気の商材になった。どうしても食品にならない骨などはペットフードとして商品化した。

同社は香港で毎年8月に開催される食品の見本市「フード・エキスポ」に今年も出展したが、今回は来場者から意外な情報がもたらされたという。「カナダからのお客さんが珍しいと教えてくれた。カナダではハンティングで獲れた動物の肉を商業的に販売するのは禁止で、現在、世界的にはそういう国が多いという。100%天然の肉ということと、日本産であるということは、もっとアピールするといいとアドバイスしてくれました」(同)。

ジビエという言葉があるため、本場はフランスなど海外と感じていたが、意外にもこれは「クールジャパン」のコンテンツの一つになりそうではないか。その魅力を育み、推進するためにも、安定供給、高品質、安全、衛生のための仕組みがさらに進んでいってほしい。

(香雪社 斎藤訓之)

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