いま、優秀な学生の中でもトップ層は、学生時代に起業することが珍しくなくなった。ベンチャー企業で長期インターンをして、そのまま就職したり、そこでやりたいことが明確になって起業を目指すケースも多い。
「一方で、非常に優秀だけれどもそこまで具体的な目標が見つかっていないとか、まだ業界や仕事を絞りたくないというモラトリアム型の学生にとって、コンサルは魅力的に映っています」(中山さん)
幅広い業界を見ることができるのがコンサル。そこで得られる知見が、いざやりたいことが見つかって起業や転職をする際に役立つ――そう期待するからだ。
「とりあえずコンサル」に採用担当者は複雑な思い
ある戦略コンサルの採用担当者は、学生の間に広がる「とりあえずコンサル」的な考え方に、複雑な思いを抱く。「早くスキルをつけたい」というのも結局は安定志向の裏返しだと見るからだ。
「面接でもよく見られるのは『御社ではどう成長できますか? 何が学べますか?』という姿勢。コンサルという仕事そのものに興味があるわけではなく、手っ取り早くわかりやすいスキルを身につけて、安心・安定したいのでしょう。コンサル企業の中には、そういう学生におもねるかのように『当社に来れば、こんなスキルがついて、将来の道も開けます』とアピールするところもありますが、結局それを続けていくと、人材はどんどん辞めていく。辞めるのを見越して大量採用しているのだとしたら、違和感を覚えます」
この担当者によると、本来、コンサルの仕事の魅力は、圧倒的な成長を続けなければいけないところにある。事業環境が激しく変わり、新しいテクノロジーへの対応を常に迫られる中で、クライアント企業の経営陣を納得させるためには、常に彼ら以上に勉強し、高い視座を持ち続けなくてはならない。
「永遠に山登りをしているようなもの。いわば安定がないのが魅力であるはずなのに、安定を求め『スキルをつけて逃げ切る』といった発想でコンサルに来るのは、矛盾している気がします」
自身も新卒で野村総合研究所に入り、戦略コンサルと採用を担当。現在は、クライス&カンパニーでコンサルタントの転職・キャリアサポートをしている山本航さんは最近、入社2~4年目のコンサルタントで「特にやりたいことがないので、コンサルに就職し、働き始めてからもやりたいことが見つからないと悩む人が増えている」と話す。
「やりたいことがないので、とりあえず偏差値の高い大学に行く、というのと似た発想でコンサルを選ぶと後々困ります。いつかやりたいことが見つかるというのは幻想であり、どこかで自分と向き合って決めるしかない。そこは学生さんにも覚悟して進路を選んでほしいですね」
(石臥薫子)