女優・朝夏まなとさん 「こんなのあるよ」扉開いた母
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は女優の朝夏まなとさんだ。
――宝塚のトップスターを務め、その後も女優の道を歩んでいます。ご家族のすすめがあったのですか。
「母は音楽や美術に関心が高く、知識も豊富です。私が小さいころから舞台、コンサート、展覧会などによく連れていってくれました。宝塚はもちろんです。意図的だったかは分かりませんが、私も芸術、とりわけ音楽やミュージカルに興味を持つようになりました。ただ、将来についてあれこれ言われたことはなく、宝塚入団は自分の意思で決めました」
――宝塚に入るため、特別な準備はしたのですか。
「習い事はバレエ、ピアノから習字、英会話まで、いろいろ経験しました。母は『こんなものがあるよ』と扉を開いてくれる感じだったので、決して嫌とは思いませんでした。むしろ新しいことに出合い、できるようになることが楽しくてたまらなかったですね。バレエとピアノは(宝塚)入団直前まで続けていました。強制されていたら興味は持てなかったと思います」
――お父さまはどんな方ですか。
「父は九州の生まれ育ちですが、いわゆる『九州男児』のたくましい雰囲気はなく、ほんわかしたチャーミングな人です。冗談や駄洒落(だじゃれ)を交え、ことあるごとに話しかけてきますが、不思議と心地いいんです。母も同じですが、近すぎず、遠すぎずの距離感がほんとっ絶妙だと思います」
――仲の良さが伝わってきますね。
「自分の家しか知らないので比べようがないですが、両親、弟とけんかをしたことはありません。父、母ともに仕事をしていましたし、中学時代の私は学校の勉強と部活(吹奏楽部)、そして習い事に忙しかったので、親を困らせるような問題を起こす間がなかったのかもしれません。いい意味で、手のかからない娘だったんでしょうね」
――女優としての活動を、ご両親はどのようにご覧になっていますか。
「出演する舞台やミュージカルがあると佐賀から上京して見にきてくれます。父は表情や体全体を使って喜びを表現します。母は最初のころ手厳しくて駄目出しばかりでしたが、最近は『楽しかったよぉ』と言ってくれます。この道に進んで本当によかったと実感できるひとときです。ありきたりかもしれませんが、両親は私の誇りで尊敬する人です。舞台を見てもらうことも親孝行のひとつかな」
「歌とセリフ、身ぶり、そして表情で役を演じ、物語を伝えることが楽しいんです。つらいことがないと言えば嘘になりますが、自分の好きなことを仕事にできているのは本当に幸運です。やりたいことに没頭できる環境を与えてくれた両親には感謝しています」
[日本経済新聞夕刊2019年10月15日付]
これまでの記事はこちらからご覧ください。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。