英国屋がオークラ東京店 老舗の技で海外富裕層を魅了

2019/10/10
約500種類の生地を用意。ネクタイなどの小物も本店と同程度に種類をそろえた

オークラ店では約500種類の生地を用意し、約1カ月で仕上げる。完成品の海外発送も行うが、着心地を確かめてもらいたいため、、年に何度も東京を訪れるビジネスパーソンやリピーターの個人観光客が主力に想定している。アジア地域では香港などの滞在中にスーツを誂(あつら)えるサービスが人気を呼ぶ。しかし英国屋では採用せず「職人が時間をかけ手作りで仕立てた品質の良さをアピールしていく」と小谷副社長。日本の老舗テーラーが持つ縫製などの技術力は、アジアで高い評価を受けており、かつては元首クラスがお忍びで誂えさせていたというエピソードが残っているほどだという。その信用を売り上げ増に結びつけたい考えだ。

ネクタイやベルト、サスペンダーなどの小物は案外宿泊客からのニーズが高い。本店と同程度に種類をそろえた。既製のジャケットも約30種類用意し、ホテルの宿泊客が不意に必要になった場合にも対応できるようにしたという。

■最高級モーニングコートのレンタルも

インバウンド需要取り込みのポイントは、月間100万人以上が訪日する中国人旅行客になりそうだ。滞日中に買い物にあてた国別の消費額では、1位の中国は2位のベトナムの倍近くを購入し断トツになっている。しかも、けん引役となっているのは「一人っ子政策」で、自由に使えるおカネが多い20~30代の若者層だという。英国屋は海外富裕層向けの旅行代理業者、「雅縁」(東京・中央)と提携した。同社が東京で手掛ける個人旅行客向けの観光ツアーに英国屋を組み入れてもらうことにしている。

フォーマルウエアのレンタルは、「生地も仕立ても最高のものを着たい」という声に応えた

同社がオークラ店の主力のひとつとして期待するのが、モーニングコートのレンタル。結婚式や叙勲、皇室関係の行事への参加といった需要に応える狙いだ。厳選した高級羊毛「メリノウール」を使い、織物産地として知られる愛知県西部のメーカーの協力で高い伸縮性、肌触りの良さ、漆黒に近いブラック色を実現した。ネクタイやサスペンダー、ポケットチーフなどもセットで10万円。

試金石となるのが、10月下旬の「即位礼正殿の儀」だろう。すでにホテル宿泊客からの予約が続いているという。それを秋の叙勲から年末のパーティーシーズンにつながられるかどうか。同社は「セットで購入すると約40万円かかるモーニングを所有するまでもないが、生地も仕立ても最高のものを着たいという声は根強い」としている。

高級志向の消費者が世代を超えてジワリ増える一方で、高級衣料品の輸入販売を手がけるサンモトヤマ(東京・中央)の自己破産申請、オンワードホールディングス(HD)の大量閉店など、アパレル各社のかじ取りはますます難しくなっている。その中で英国屋は来春、銀座に3店目の拠点となる新支店を開設する。「銀座での高額消費志向も一律ではない。一人ひとりの顧客により決め細かく対応する」(同社)の戦略は、先行き不透明なアパレル業界にとって、ひとつのヒントになるかもしれない。

(松本治人)

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