
シャンパンより価格が手ごろなスパークリングワインにも評価が高いものは多いが、あえてシャンパンと合わせたのにもワケが。「台湾人はコストパフォーマンスを重視する傾向があります。でも、僕は食事をする空間も含め『いいものにはお金がかかりますよ』という提案をしたかった。実家が食材輸入をしていたことから、小さい頃から同じ食材でもいいものと悪いものは値段が大きく違うことを学びました。だから、よく知らない人でも『高級だ』というしっかりしたイメージがあるシャンパンと合わせようと思ったんです」
「あんな店は、すぐ潰れるよ」
実は「フージンツリー」のオープン当初は、メディアも含め台湾の人々の反応は冷ややかだったという。台湾料理に値段の高いシャンパンを合わせるなんて、コストのバランスが悪すぎるというわけだ。

しかし、そんな声とは裏腹に、海外での仕事や留学経験がある人から人気に火が付き、駅から遠い立地であるにも関わらず目的客が訪れるようになった。「料理やお酒だけでなく、緑の多い店舗空間、ライティングや音楽とトータルで楽しめる店としたので海外のお客様にも喜んでいただけた。今年からは、『フージンツリー』のような新スタイルの台湾料理店が増えてきました」(ウーさん)
ウーさん自身は食の都と言われる南部・台南の出身だが、料理は台湾全土から「これぞ台湾料理」というものを選んだ。伝統料理をベースとした創作料理も置く。人気メニューの一つは、「水蓮菜と木の実の炒め」。シャキシャキとした食感の野菜と、梅干しに似た味の果肉を持つ木の実を合わせたもの。また、コシがある極細ビーフンを、シイタケや干しエビ、豚肉、キャベツなどと炒めた台南スタイルの「台湾ビーフン」も看板料理だ。

もともとは寒い季節限定の料理だった「北海道産干し貝柱とキヌガサダケ入り丸鶏のスープ」は、それ以外の季節にも食べたいというリクエストが多く、最近通年のメニューになった。北海道の干しホタテ貝柱をふんだんに使用した、濃厚な味わいのスープだ。