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マゼラン出帆から500年 世界一周はしていなかった

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ナショナルジオグラフィック日本版

今から500年前の1519年9月20日、フェルディナンド・マゼランが地球を一周する歴史的な旅に乗り出した。単純な探検の物語と思うかもしれない。だが、探検家マゼランとその航海には矛盾が多い。例えば、マゼランはポルトガル人なのに、スペインを代表して航海に出た。非常に優れた船長だったが、乗組員からは嫌われていた。彼の遠征隊は初めて船で世界を一周したものの、マゼラン自身は一周を成し遂げていない。そして、そもそも彼の名前はマゼランではなかった。

1519年に始まったフェルディナンド・マゼランの遠征を境に、世界がすっかり変わったのは間違いない。その旅は「史上最も偉大にして、最も重要な航海でした」と語るのは、歴史家で『Over the Edge of the World: Magellan's Terrifying Circumnavigation of the Globe(世界の果ての先へ:マゼランの恐ろしい世界一周、未邦訳)』の著書があるローレンス・バーグリーン氏だ。「誇張ではありません」

好戦的で容赦なく、恐れ知らずのマゼランによって、商業航海は、世界規模で繰り広げられるおぞましい対決の場へと様変わりした。当時、そんなことを想像できた欧州人はほとんどいなかった。一行が旅立ったころ、地球一周の航海など不可能ではないかと思われ、そんなことを試みる無謀な者には、海の怪物から命取りの霧まで、あらゆる危険が立ちはだかるだろうと恐れられた。「自殺行為だと思われたのです」とバーグリーン氏は語る。

マゼランは通称、ポルトガルへ捨てスペインへ

マゼランことフェルナン・デ・マガリャンイスは1480年ごろ、ポルトガルの貴族として生まれた。王妃レオノールと、国王マヌエル1世の小姓として、リスボンで宮廷生活を経験する。しかし、青年は冒険心を抱き、数度にわたるポルトガルの航海に参加した。有利な香辛料貿易のルートを新たに発見し、確保することが目的の事業だった。

当時、ヨーロッパの貴族は香辛料を欲しがっていた。それを入手できる新しい領土を誰が見つけ、権利を主張できるかをめぐり、ポルトガルとスペインは激しい競争関係にあった。1505年、マゼランはこの戦いに加わり、インド、マレーシア、インドネシアと旅をした。だが、ポルトガルのために働く日々は長く続かなかった。マゼランは違法取引で訴えられ、新しい香辛料貿易のルートを見つけるという提案もマヌエル1世に却下されて、国王と不和になった。

マゼランは、東ではなく西へ船を進め、南米にあると噂される海峡を通り抜ければ、インドネシアとインドへの新航路を開拓できると信じていた。そこでポルトガルへの忠誠を捨ててスペインに赴き、市民権を取得。5隻の船で西を目指す旅に対し、国王カルロス1世の祝福も得た。

部下の反乱、壊血病、難題続出

船長となったマゼランは、この旅で大きな富と地位を得られることになっていた。カルロス1世は、どんな航路であれ、発見すれば10年にわたる独占と利益の一部に加え、貴族の称号も与える約束だった。しかし、スペイン人の乗組員が多数を占めるなかで、王からの使命を受けたポルトガル人であるマゼランは、厄介な立場にあった。歴史家リンカーン・ペイン氏は、「カスティリャ人たちはポルトガル人の指揮下で航海するのが気に入らず、ポルトガル人たちはマゼランを裏切り者と見なした」と書いている。

冬の天候に阻まれ、現在のアルゼンチンで船団が数カ月待たざるを得なくなると、乗組員たちは反乱を起こした。1隻が難破し、別の1隻は遠征隊を完全に見捨ててスペインに帰った。船長のマゼランは部下を統制し直すのに苦心したが、いったん指揮権を取り戻すと、迅速かつ厳しく対処した。マゼランは、反逆者の数人を斬首して遺体を切り刻むよう命令。それ以外の者たちは陸地に置き去りにしたり、重労働を強いたりした。

反乱を鎮め、マゼランは難所の海峡を何とか航行することができた。後に彼にちなんで命名される、マゼラン海峡だ。しかし、難題は終わらなかった。太平洋をゆっくりと進むうち、食料が傷み、壊血病と飢えが一行を襲った。艦隊は、現在のグアムと思われるところに一時上陸したが、小舟を盗まれた報復に現地住民を殺し、家々を焼いた。

キリスト教への改宗を求め殺される

一カ月後、遠征隊はフィリピンにたどり着いた。すると出航前にマゼランが買った奴隷の男性、エンリケが現地の言葉を理解し、話すことができ、乗組員たちを驚かせた。この人物は、奴隷にされる前はこの地で育ったらしいと考えられ、その場合、最初に地球を一周したのはマゼランではなくエンリケの可能性がある。

マゼランはスペインに代わり、ただちにフィリピンの領有を主張。だが、バーグリーン氏が「不必要な戦争」と呼ぶ出来事に関わったことが、破滅のもとになった。「マゼランは自然の力に屈したわけではないのです」と、バーグリーン氏は言う。

マゼランはマクタン島の人々にキリスト教への改宗を求め、現地の族長だったフマボンとラプ・ラプの争いに巻き込まれた。1521年4月27日、マゼランはラプ・ラプと住民たちを攻撃した際、毒矢で殺された。

住民たちは「鉄製や竹製の槍で、一斉にマゼランに突進した」。遠征隊に同行したイタリア人の学者、アントニオ・ピガフェッタがこう書き残している。「我々の鏡、光、安らぎ、そして真の導き手を惨殺した」。船員たちはマゼランのなきがらを島に置いて行った。容赦ないリーダーを、彼らが実際どう感じていたのかを示す行動なのかもしれない。

「英雄」か、ただの「征服者」か

マゼランの死後、乗組員たちはただ1隻残った船で航海を続けた。バスク人のフアン・セバスティアン・エルカーノが船長を務めた。1522年9月、船はスペインに帰還。その途上、一行は未知の海に出会い、ヨーロッパが交易をおこなう新たなルートを拓き、現代のグローバリズムの土台を作った。6万マイルの船旅と、参加者の8割の死を経て、遠征隊は地球一周が可能だと証明し、商業の名のもとにヨーロッパが新世界を植民地化する時代の扉を開いた。

この旅は伝説と化し、1989年には、その名は金星にまで到達している。NASAが打ち上げた探査機「マゼラン」は、金星の画像を撮りながら、使命を終えて燃え尽きるまで5年にわたり旅を続けた。

マゼランの名を発見と関連付ける人もいる一方、その言葉を避ける人もいる。「私が教科書を書くなら、マゼランは1521年にフィリピンに到来したと記します」。フィリピン共和国国家歴史委員会の元委員長で、歴史家のアンベス・オカンポ氏はこう話す。「マゼランはフィリピン史の始まりと見なされるべきではありません。今も新しい世代のために書き直されるべき歴史上の出来事の1つです」

マゼラン一行が遭遇した住民たちにとって、探検家の到着は、征服、キリスト教化、植民地化による新時代を告げる前触れだった。マクタン島の支配者ラプ・ラプは軍勢を指揮してマゼランを殺した。探検家を倒したのは彼の功績だとされることが多い。その結果、彼はフィリピンの国民的英雄になったとオカンポ氏は指摘する。

ラプ・ラプ自身の偉業ではないのかもしれないが、彼はフィリピン人の抵抗と誇りの象徴として、広くたたえられている。歴史家たちは現在、マゼランのフィリピン到着から500周年を迎えるのを前に、より正確に実態を明らかにしようとしている。現在セブ島のその名もラプ・ラプ市には高さ3メートルのラプ・ラプ像が立っている。これに代わり、2021年に政府が挙行する500周年記念行事では、戦闘そのものと、人々が力を合わせて歴史的な探検家を倒した様子を伝えるモニュメントが建つ予定だ。

マゼランは英雄とされるべきか、それともオカンポ氏が呼ぶように、フィリピンにやってきた「最初の旅人」なのか――グアム、フィリピン、スペイン、ポルトガルがマゼランの世界一周への出帆五百周年を祝っても、マゼランの評価は依然として二分されている。

次ページでも、マゼランの航海と関係が深い図版を紹介しよう。彼が目指したものと、その時代の欧州の人々が見知らぬ世界にもったイメージの断片がわかるだろう。

(文 ERIN BLAKEMORE、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年9月29日付記事を再構成]

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