N
マネー研究所
野尻さんの定年1年生

2019/10/18

野尻さんの定年1年生

この3つのウエートを組み合わせて考えないことには、人生100年時代を生き抜くことは難しいと思います。3つの対策のポートフォリオこそ、大切にしたい定年後のお金との向き合い方です。

3つの対策の中で異色なのは地方都市移住でしょう。米国では55歳以上しか住めないリタイアメント・コミュニティーと呼ばれる街が全米に数千カ所もあります。日本でも高齢者が住みやすい街があって、退職後にそこに移住するのが一般的になってもいいはずです。

出所:金融庁金融審議会市場ワーキング・グループ(第14回)、事務局資料

実際、既に多くの人がそうした定年後の移住を検討しているようです。表は2018年の金融庁金融審議会市場ワーキング・グループの議論で出された事務局説明資料の一つです。14年から17年の間に65歳以上の高齢者の転入者と転出者の差を見たものです。

東京都区内からの純転出が非常に多く、純転入は地方都市に偏っているのは一目瞭然です。定年後に東京から地方都市へ移住する人が増加しつつある証拠と言えます。

ところで地方自治体ではこうした退職者の受け入れをどう考えているのでしょうか。これから実際に転入者の多い自治体に行って、現地取材を敢行しようと考えています。まだ自治体側の生の声は聴けていませんが、間違いなくプラスになるはずです。

長らく地方自治体は現役世代の取り込みを目指して企業の誘致を進めてきましたが、現役層が大幅に減少する時代にあって、それは至難の業です。むしろ定年退職者を誘致する方が柔軟で効果が大きいと思います。定年退職者は退職金を持っています。老々相続の時代には相続人にもなり得るわけで、資産を持った新しい住民が増えることを意味します。このことを行政はしっかりと考える時期です。

野尻哲史
 フィデリティ退職・投資教育研究所所長、フィンウェル研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信に入社。07年からフィデリティ退職・投資教育研究所所長。19年にフィンウェル研究所を立ち上げ「複業」をスタート。アンケート調査を基にしたお金に関する著書・講演多数

[日経マネー2019年11月号の記事を再構成]

日経マネー 2019年 11 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP
価格 : 763円 (税込み)


近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし
近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし