転職成功へ企業の本音見抜け 採用者納得の3ステップ経営者JP社長 井上和幸

「STAR」を盛り込んでショートストーリーをつづる

例えば今回のCFO案件であれば、「私は経理財務部長を務めていました」だけでは不十分です。「経理業務においてはAを実現、財務業務についてはBを達成、経営企画ではCのような役割を負い、それぞれについての成果を出したことがあるのか」についてまでが、例えば職務経歴書に記載されているでしょうか。その際、「中期経営計画策定3年、月次決算取りまとめ10年、財務リポート5年、マネジメント7年」というように、担当したことのある役割ミッションの項目(と経験年数)だけを書き連ねる人が多いのですが、ミドルシニアクラスに限っていえば、これでは失格です。

主立ったプロジェクトワークについて、ショートストーリーを記載すべきなのですが、ポイントとしては「そもそもどのような状況で(Situation)、それに対してあなたはどのような取り組みテーマを立て(Theme)、実際に実行し(Action)、どのような成果が定量・定性で出たのか(Results)」を記載するとよいでしょう。頭文字を並べて「STAR」と覚えてください。

例えば、「月次決算について、それまで翌月明けから各部の前月締め情報を提出開始し順次取りまとめをスタッフの手作業で行っていたので、試算表提出に40日程を要していたが、クラウド会計ソフトの導入と各部の業務フローの見直し(事前の売り上げや購買予定情報の入力。受注や発注が確定次第、即時の会計ソフトへの反映など)を行ったことで、10日内での確定・提出を実現した」というようなかたちです。

必須要件で相応以上の接点があることが当然必須ですが、さらに歓迎要件について、より多くの接点があれば、なおよしです。例えば今回のケースでは、歓迎要件に「管理本部長として人事総務、法務、情報システムも包括してマネジメントしたご経験をお持ちの方、歓迎」とあります。もしあなたが現在、管理本部長として経理財務のみならず、人事総務や法務、情報システムも管轄しているなら、本件において他の候補者から一歩抜きんでるチャンスでしょう。

ただし、あなたがもともと人事総務畑の人でこちらが主の専門であり、プロモーションの中で現在は経理財務チームも管轄しているという出自であったら、今回のCFOポジションにおいては有力候補者とはいえないでしょう。なぜならば、必須要件のほうに「経理財務、経営企画」が書かれているということは、「主の専門は経理財務・経営企画のマネジメント人材で、かつ、人事総務や情シスなどは課長以下が回しているものを管理監督できる人」を望んでいるということだからです。この辺の必須=Must、歓迎=Betterの主従関係もしっかり把握、認識することが大事です。

入社後の再現可能性を採用側に期待、納得させる

さて、必須要件と歓迎要件で採用企業とあなたとの接合点を確認してきました。この経験・スキル・専門性部分での接合度合いが当然、非常に大事なのですが、それと同じくらい大事なのは、求める人物像における人物タイプでのマッチ度合いです。いくら経験豊富でスキルや能力が高くても、人物のフィット感がない人を採用するということは、特にミドルシニアクラスの採用においてはまずありません。

一緒に働きたいと思わせる人物タイプのマッチ度は非常に重要です。それまで順調に選考が進んでいても、ここが最終的な可否の決め手となることも多いのです。今回のケースでは「論理思考力にたけた方」「メンバーエンゲージメント向上力にたけた方」「現場に入り込みコミュニケートするスタイルのリーダー人材」とあり、想定されることとして、特に対・投資ファンドと先に送り込まれている社長との相性面で論理思考力の高さが、またファンド投資先企業としての事業・組織テコ入れに当たっての現場力、組織活性化力が必須とされています。この2点を満たせるタイプでなければ、いくら経理財務部長としてご経験やご実績をお持ちであったとしてもご縁はないでしょう。

最終的に採用企業が「よし、ぜひ来ていただこう」と、採用を決定するか否かは、あなたが実際に参画してくれたとして、入社後にこれまで同様に(あるいはそれ以上に)持てるものを十二分に発揮して成果をあげてくれるだろうかという「再現可能性」の部分です。やってみなければ分からないことではありますが、再現を期待・信頼するには、「勤め先企業から与えられて、言われてやったことではなく、あなた自身が具体的にどのような考え方と行動を取れる人なのか」「出した成果について、自分自身がどう考え、行動し、出した成果かを具体的に表現できる(ロジックがある)」という2点を満たしていることが条件となります。

実績について、社内評価を記述する人がいます。社内評価とは「売上達成率150%で、当該期間中のMVPを受賞しました」「~を提言し、その年の社長賞を獲得しました」というようなものです。実績は素晴らしいのですが、これらを応募先企業の社長や経営陣、人事部長が見て、「おお、すごいですね。ぜひ採用したい」とは思ってもらえないのは確実です。

相手先企業が評価するのは、「なぜ、売上150%を達成できたのか」「なぜ~を提言できたのか」といった、それら実績の背景にあるあなたの考え方や行動の仕方などのプロセス部分です。この部分に関するあなたの資質や考え方、行動の質と再現性に対してです。だから、先に挙げたSTARでプロジェクト実績を記述し、プレゼンテーションすることが大事なのです。

あえて蛇足的に加えておくならば、「批判的・独善的・他責的な人」は要職で採用されるということはありません。面接対策としてということ以前に、日常の勤務姿勢として気をつけておきましょう。

そもそも企業は「自社をもうけさせてくれる人」「自社の組織を活性化させてくれる人」「本音本気で自社をよくして、添い遂げようと思ってくれる人」を求め、採用し、自社で活躍してくれるよう生かします。この3つを満たすミドルシニアが理想の転職を果たし、その会社でリーダーとしてのハッピーな仕事人生を送ることになるのです。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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