家電・化粧品… 新発売の「新」いつまで表示できる?

「新発売」の札が顧客の目をひくコンビニのスイーツ棚(東京都港区)
「新発売」の札が顧客の目をひくコンビニのスイーツ棚(東京都港区)

新商品、新発売、新型――。買い物に出掛けると、引き寄せられてしまう魔法のフレーズだ。買うつもりはなかったのに、ついついカゴの中に。そんな経験はないだろうか。でも、「新」と表示できるのはいつまでなのだろう。何かルールがあるのだろうか?

コンビニは火曜に新商品が登場

スイーツ好きにとって、毎週火曜日は特別だ。大手コンビニエンスストアがチョコレートやプリンなどの新商品を入荷する日だからだ。店舗規模にもよるが、スイーツ以外も含め、コンビニの棚に並ぶ新商品は1週間で60~100ほど。常連客が占めるコンビニにとって、顧客を飽きさせない新商品は欠かせない。

コンビニでは通常、「新商品」と表示するのは1週間程度。ファミリーマート経営企画本部の大月新介さんは「2週間を超えることはまれ」と話す。コンビニは新商品を次々投入する実験場だからだ。これに対して売り場に余裕があるスーパーでは「新」の期間が長くなる傾向がある。店にもよるが、おおむね3カ月が目安という。

新商品はいつまで「新」なのか。実は、法的な規制はない。業界ごとにルールを決めている。

業界の自主ルールがあるのは家電や化粧品、医薬品、不動産や自動車など。消費者が商品を公正に選べる環境をつくることを目的に各業界が自主的に規制する「公正競争規約」で規定している。菓子やスイーツ、飲料では規定はない。

家電は1年、二輪車は半年

例えば冷蔵庫やテレビなど家電の場合、「発売から1年間」もしくは「次の新製品が発売されるまで」のうち、期間の短い方を採用する。二輪車は半年だ。パソコンは家電だが、スマートフォンは規定はない。

ライフサイクルが短いパソコンは次の製品が登場すれば「型落ち」となってしまう。そこで生まれたのが「秋モデル」などの表示方法だ。発売日や新機能をアピールでき、古いイメージを持たれにくい。前モデルへのマイナス影響を避ける狙いもある。

「新」の表示期間を変えたところもある。化粧品やOTC医薬品はかつて6カ月だったが、2018年に1年に変更。ニッセイ基礎研究所の井上智紀主任研究員は「新商品であることも重要だが、長期にわたって使う信頼性が医薬品には求められている」と指摘する。「新」の効力はそれほど強くないかもしれない。

ともすると曖昧なルール。買い手とのトラブルは起きていないのか。消費者庁に聞くと「この1年間で寄せられた消費者からのクレームは1万件以上だが、新製品の表示期間を巡る問題はなかった」という。

旧モデルで満足も

たしかに「新」は消費者の目をひきつけ、購買意欲を高める。ただ、最近では必ずしも「新」が受けるわけではない。

そのひとつがマンションだ。首都圏のマンション取引は中古の成約件数が新築の供給戸数を18年まで3年連続で上回った。買い手の大半を占める若い世代は中古への抵抗感が薄れている。「高価な新築で背伸びをするのではなく、リノベーションなどで新しい住まいに作り替えることに魅力を見いだしている」(井上さん)

スマホも新モデルが売り出されると、割安になった旧モデルの人気が高まる傾向にある。機能やデザインで大きな変化がなければ、価格が下がる旧モデルで満足する人が多い。

メーカー、小売りなど売り手の思惑が大きく絡む「新商品」の表示期間。「新」に心躍るかどうかは、その商品の価値次第ということのようだ。

■「驚きや価値で需要喚起」 マーケティングコンサルタントの原尻淳一氏
「新発売」や「新商品」の影響が薄れているのではないか。マーケティングコンサルタントの原尻淳一さんに聞いた。
「生活を変えるような新しい工業製品が生まれることは少なくなっている。スマホや自動車の技術革新は著しいが、初代iPhoneのような衝撃はない。技術や機能面で必要なものがすでに出そろっているからだ。それでも“新”の魅力は衰えてはいない。むしろこれからのマーケティングには、どうやって“新”を打ち出すかが不可欠だ」
「新しいものをイチから生み出すだけが“新”ではない。既存商品を基に、これまでなかった商品を開発するのも“新”だ。例えば菓子メーカーはチョコやポテトチップスなどの定番商品で、季節ごとの味を出している。新規の顧客開拓にもつながっている」
「買い手にとっての“新”は、驚きや価値を与えてくれるかどうか。その意味では新しい仕組みも“新”といえる。二輪車大手のハーレーダビッドソンジャパンは、同じ地域の顧客をネットでつなぎ、イベントを開催している。メンバーが情報交換する場をつくり、パーツやメンテナンス需要を喚起した。これも新しい売り方といえる」

(佐々木 聖)

〔日本経済新聞夕刊2019年10月4日付〕