基礎年金のみが1500万人 将来の目減りどう備える

過度に悲観して未納にしたりすると老後がより不安定に。「正しく心配する」ことが大事
過度に悲観して未納にしたりすると老後がより不安定に。「正しく心配する」ことが大事

8月末に公表された年金財政検証では、20歳以上が加入する基礎(国民)年金の将来の目減りの大きさが鮮明になった。基礎年金だけしかない第1号被保険者は約1500万人。そのうち老後も継続収入が見込める自営業者は2割弱にすぎず、大半が短時間労働者や無職なのが現状だ。

どれくらい減るのかを、財政検証の6つの経済前提のうち標準的な例として報道されることが多いケース3(実質経済成長率年0.4%)で見てみよう。

給付水準のモノサシとしてよく使われるのが所得代替率だ。厚生労働省のモデル世帯(会社員の夫と専業主婦)の年金月額(2019年度は22万円)を現役男性の平均手取り額(同35.7万円)で割って算出する。今年度の65歳は62%だ。

この比率は将来低下していく。年金財政健全化のために賃金・物価の伸びより給付を抑える「マクロ経済スライド」の結果だ。例えば現在45歳のモデル世帯の場合、受給開始の65歳時点の所得代替率は54%、85歳時点では42%に下がる。現在の62%と比べると32%も低下する。

所得代替率の減少率、厚年より影響大

この減少率は基礎年金だけでみるとより大きい。過去に賃金・物価が低迷した影響が年金財政の仕組み上、会社員の厚生年金より大きく響く。基礎年金だけの夫婦の所得代替率は現在は36%だが、今の45歳が85歳になると22%に低下する。低下率は39%に達する。

ただし、現在の物価に換算した夫婦の基礎年金の金額(実質額)が39%下がるわけではない。39%減なら夫婦の基礎年金は今の13万円から7.9万円強に激減する計算だ。

実際は現在の物価に換算した実質額は夫婦で11.7万円と1割減。代替率の急落は、計算式の分母の現役男性の手取り収入が長期で増えることが主な要因であり、実質額が示す「購買力=モノを買う力」は、代替率ほどには激減しない。

「基礎年金があてにならないほど減る」と過度に悲観して未納にしたり、リスクの大きな金融商品に手を出したりすると老後がより不安定になる。「正しく心配する」ことが大事だ。

もちろんただでさえ少額の基礎年金が実質額でも大きく減る影響は深刻だ。経済状況が前提を下回れば額はさらに減る。早めの対策が重要だ。

掛け金が所得控除になり税金が減る個人型確定拠出年金(イデコ)の第1号被保険者の掛け金上限額は、会社員よりはるかに大きい。自営業者はイデコと別に月7万円の所得控除枠があり、定率で増やせる小規模企業共済も選択肢になる。

短時間労働者は勤務時間を延ばして厚生年金へ加入することで、年金を上積みすることも重要だ。現在501人以上の会社では週20時間以上などの条件で厚生年金加入になる。今後対象企業が拡大する見通しだ。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2019年10月5日付]

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