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カリスマの直言

IT先進国エストニア 政府の指導力に学ぶ(加藤出) 東短リサーチ社長チーフエコノミスト

2019/10/7

エストニアは人口130万人の小国ながらIT立国として脚光を浴びている(首都タリンで旧市街を望む)

9月後半に中曽宏・大和総研理事長(前日銀副総裁)を団長とする「北欧フィンテック・キャッシュレスおよび金融事情調査団」(企画・金融財政事情研究会)に参加させてもらい、スウェーデン、フィンランド、エストニアを訪れた。

それぞれの国の金融機関、フィンテック企業、中央銀行、政府関係者から日本経済にとって示唆に富む刺激的な話を多く聞くことができた。調査団の報告書が完成したらぜひお読みいただきたいが、ここではエストニアでの筆者の雑感を少し紹介してみようと思う。

バルト海に面するエストニアは、人口約130万人の小国である。日本の九州本島の2割増しの国土に、九州の10分の1程度の人口なので国全体の人口密度は日本よりかなり低い。首都タリン(人口44万人)の旧市街地は13世紀以降の建築物を多く保存しており、世界遺産に認定されている。

旧市街地の丘に立つロシア正教会大聖堂の壁には、日露戦争の際のバルチック艦隊の兵士を慰霊する記述がある。当時のエストニアはロシアの占領下にあった。同艦隊はここのタリン港から出港し、アフリカの喜望峰を回ってはるばる日本海に到達した。その多くは東郷平八郎率いる連合艦隊に撃沈されたわけだが、その中には徴兵されたエストニア人も多数いたという。

■政府の電子化、EUトップクラス

このように日本と浅からぬ縁があるエストニアだが、近年はIT(情報技術)先進国「e-Estonia」として世界的に高い注目を浴びるようになっている。政府の電子化は大胆に進められ、スタートアップ企業が数多く集積し、人口1人当たりのユニコーン企業(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)の数は世界一となっている。

欧州委員会が作成している「欧州連合(EU)デジタル経済社会インデックス」における公的サービスの電子化の度合いはEU28カ国のうち2017年1位、18年1位、19年2位である。役所の書類へのサインなどがデジタル化されたことで、エストニアの住民が節約できた時間は年間5日分にも及ぶという。「e-Estonia」プロジェクトの関係者は「電子化により公務員を削減できることは良いことだ。国民は公務員の給料を払いたくはない」と語っていた。公務員を辞めても働き口は増えているので問題はないとのことだった。

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