IT先進国エストニア 政府の指導力に学ぶ(加藤出)東短リサーチ社長チーフエコノミスト

エストニアはEUにおけるIT人材資本の厚さのランキングでは17年8位、18年7位、19年4位と上昇傾向にある。国家としてIT人材教育に力を入れている成果だ。例えば14年に「生涯学習戦略2020」を策定し、子供から中高年にわたってITスキルを高めるプログラムを導入した。85%の学校、44%の幼稚園でコンピュータープログラムやロボティクスが教えられている。大学卒業者におけるIT系の学位取得者の比率は16年で6.4%と高い(EU平均は3%台半ば)。これらの結果、全労働者におけるIT専門家の比率(17年)はEU平均が3.7%なのに対して5.6%とトップクラス(3位)にいる。経済協力開発機構(OECD)が15年に実施した学習到達度調査(PISA)の「科学」でエストニアは日本の2位に次ぐ3位の座をとっている。

ITテコに生活水準向上

下のグラフは購買力平価ベースでみた1人当たり国内総生産(GDP)の推移である。1993年のエストニアと日本の比率は1対2.97と圧倒的な開きがあった。ソ連からの独立宣言(91年)直後のエストニアは貧しかったが、その後に急成長を遂げ、2018年には1対1.3に縮まっている。国際通貨基金(IMF)によると24年には1対1.16に接近する見通しで、先行き逆転される可能性もある。実際、タリンの街を歩いているとメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ポルシェ、レンジローバーといった高級車が多数走っていることに驚かされる。首都に住むIT専門家たちは所得水準が高いようだ。

今後の計画として、タリンとバルト海対岸のフィンランド・ヘルシンキを海底トンネル(約80キロメートル)で結べば、両IT都市が一体化して「タリシンキ」として相乗効果を生むのではないかといった期待も現地では出ていた。

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